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お初にお目にかかります。うおおんと申します。 今回はボドゲをやらない友達とも居酒屋等で楽しめるコミュニケーション促進なゲームを作りました。といっても、なんかただ和気あいあい陽キャ。みたいなのも好きじゃないのでデスゲーム要素を足していたりします。 詳しくはTwitter、ブログ等で発信しますのでそちらをご覧ください。こだわりすぎて現在も鋭意製作中です。完成するのかな。(2023.11.01)

Story #02「朝食に目玉焼きを出すと醤油差しを投げつけるお嬢様」
2023/10/19 0:09
ブログ

<前回までのあらすじ>
 “俺”は裏社会で名を轟かせる大組織の構成員。決して恵まれたとは言えない生活を送ってきた俺は一発逆転を夢見て裏社会の頂点を目指す。
 その近道は、オヤジが溺愛する超絶我儘な一人娘に気に入られること。

 兄貴のツテでお嬢の世話役の一人として生きることとなったが、その初日に見た光景はお嬢の朝食である目玉焼きに醤油をかけてブチ切れられる男の姿だった。

<#01はコチラ>

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 走り去っていく男に向けて、お嬢は思いきり醤油差しを投げた。定食屋などで見かける赤いキャップのついた醤油差し。それが地面に横たわり、カーペットにとくとくと醤油を注いでいた。
 現実感のない光景を目の前に冷静な自分がいた。本当に目玉焼きに塩をかける人っているんだ、という驚き。さらに目玉焼きに何をかけるか、という議論において「毎日変化をつける」というユニークな発想もまた、目から鱗であった。そして目玉焼きに醤油をかけるよう提言したら一人の大人が組織から追放されたのである。
 思い返せば笑い話だが、その朝の緊張感、呼吸一つもタイミングを間違えれば命を落とすような殺気立った空気は今でも忘れられなかった。

「新しい人?」

 お嬢が俺の方にちらと目を向ける。震え出しそうな全身を何とか抑えて平静を装う。お嬢の隣で静かに目を瞑り佇む白髪の老人、片眼鏡に燕尾服。いかにも良いところのお家の執事といったいでたち。その老人が口を開く。

「左様でございます。木村の弟分のーー」
「だから名前はいいって。どうせすぐいなくなるんだから」

 俺についてお嬢が話したことと言えば、この先一週間、この二言のみであった。初対面だからこそ当然と言えるかもしれないが、それにしても全くもって相手にされていない。そもそも人間としてすら見られていないのだと感じた。
 その日の俺の仕事といえば、醤油に塗れたカーペットの洗濯。「部屋住み」としてオヤジの事務所で雑用をしていた頃を思い出す。オヤジも激昂した時、身近なものを投げつける癖があったため、醤油さしなど身近な調味料入れには気を使い、倒れても中身が飛び出ないものをわざわざ用意した記憶がある。
「それくらいはしとけよ」
 どこかへ消えた俺の先輩に、少し呆れながらどうすればお嬢に近づけるかを考えた。


 そしてその機は突然訪れる。

「お嬢の夜食、今日はお前が作れ」

 お嬢の夜食はラーメンと決まっている。女子高生くらいの年齢だと思うが、夜中にカロリーを摂取することに全くもって抵抗がないらしい。問題は、その味。
 先の目玉焼きの一件があったようにお嬢は味被りを極端に嫌う。しかしただ味を変えればいいわけではない。塩は良くて、醤油はダメだった。偶然にも、前回のお嬢の夜食は塩ラーメンであった。醤油ラーメンは恐らくNG…。


 本当にそうなのだろうか。情報が明らかに1つ足りていない。お嬢はなぜ、あの時醤油を嫌ったのか。味が好みではないのか。

「うーん……」

 台所で一人悩んでいると、隅に置いてある高級そうな小瓶が目に入った。西洋のアンティークを思わせる模様が真っ白な陶磁器にあしらわれている。どこからどう見ても高そうでオシャレな一品。中に入っていたのは、塩だった。
 正解の見えない焦り、失敗したら人生が終わる緊張感の中、突然見えた光明。正解はこれしかない、そう思った。分かった、分かってしまった。お嬢も所詮は子どもなのだ。


<続く>