uoon

お初にお目にかかります。うおおんと申します。 今回はボドゲをやらない友達とも居酒屋等で楽しめるコミュニケーション促進なゲームを作りました。といっても、なんかただ和気あいあい陽キャ。みたいなのも好きじゃないのでデスゲーム要素を足していたりします。 詳しくはTwitter、ブログ等で発信しますのでそちらをご覧ください。こだわりすぎて現在も鋭意製作中です。完成するのかな。(2023.11.01)

Story #01「組長にあり得ないほど大事にされるお嬢様」
2023/10/16 23:42
ブログ

 10月の中旬。観測史上もっとも長く続いたという猛暑の日々は唐突に終わりを告げ、その急な変化に町行く人々の服装は追いついていなかった。半袖短パンの青年が、寒そうに腕を組みながら駅へと向かう。そんな肌寒く、小雨の降る日。

「お前、出世したいんだよな」

「え?……はい、そりゃ勿論」

 時代は変わった。今や反社会的勢力と呼ばれる俺たちも、街の喫煙スペースに押し込まれ肩身を狭くしてタバコを吸う。

「俺は昔からお前にはなんかあると、期待してたんだ。いや、今でも期待してる。でもお前も感じてるだろ。組織は成熟しちまった。悪く言えば腐っちまった。居座り続ける老人連中、その老人たちが安泰に生きながらえるためだけの理不尽なルールーー」

 驚いた。組織への忠誠心は誰よりも厚く、正義感に溢れる兄貴が、いきなり組織をここまで悪く評価し始めたことに。

「変わっちまったんだ。俺が尽くしてた場所が、姿まるまる。俺はな、ずっと思ってたんだよ、お前が組織の頭になったらって」
「俺が頭…?」
「お前は人を見てる。一人一人と向き合える。高橋の一件もお前が不問にしたんだろ?おかしいじゃねえか、規則通りならとっくにエンコ詰めだ。」
「あれは事故ですから」
「それでも今の組織ならそんなことは関係ねえ。こんだけ巨大な組織だ、規則通りにコトを進めておけば、頭つかわなくて一番ラクなんだよ。でもお前はわざわざ上に頭下げて、いろんなところに貸し作って、高橋を守ったんだ」

 高橋は何も悪いことをしていなかった。そう、それこそ大昔に起きた事件の何か圧倒的例外を罰するために、無理やり書き加えられた組織のルール。そのルールを侵すこと自体には何の罪もない。そんなルール違反をたまたま犯してしまっただけのこと。
 高橋はそんなことで罰される人間ではない。これから組織をより大きくするために必要な人間。そう思った。

「上の連中も、お前だから許したんだ。一目置かれてんだよ。お前の人を見る目は」

 規律に厳しい頑固者。そんな兄貴の突然の褒め言葉は、涙が出るほどに嬉しかった。

「だからよ、お前には組織のルールなんかに縛られないで、もっと上を目指してほしいんだ。どうだ?」
「どうだ…と言われましても、今まで通り組織に尽くすまでですよ。それが全うで一番の近道です。そうでしょう?」
「これがあるんだよ、本当の近道が。ハイリスクハイリターン。俺たちは今でも地獄の道を歩む人間、でもそれよりも厳しい修羅の道。一発逆転の魔境が。」

—————————————-

 幼い頃の記憶、俺の素足は常に冷たいアスファルトに接していた。
 父や母の名前は知らない。その親戚と思われる家で育てられたが、基本的に家の中にいることは禁じられていた。家の前で座り込んでいても怒られるから、町に出て時間を潰すしかなかった。
 そんな俺の遊び相手になってくれた人がいた。公園の 2人がけベンチを丸々埋め尽くす巨大な体、額には手のひらより大きい傷跡。そんな見るからに危険な人間に、幼少期の俺は何を思ったか話しかけたのだ。

「おじさん、デカいな」

 今思えば、信じられない愚行。そのまま死んでいてもおかしくない態度。しかし後に親子盃を交わすことになる組長、オヤジは大きな声で笑った。
 当事のオヤジは既に裏社会を牛耳りあらゆる権力を手中に収めていた。それでも彼が渇望し、しかして恵まれなかったのが“子ども“であった。だから、遊ぶ子どもたちを眺め、少しでも心を満たそうと公園に足繁く通っていたという。しかしその見た目では誰も近寄って来ない。そんな中で声をかけてきた俺が相当に可愛く映ったらしい。公園でオヤジと話す時間は俺にとっても幸福な時間であった。オヤジは到底俺には想像のつかない世界の話をしてくれた。聞いたことのない美食、聞いてもピンとこないが恐らく相当贅沢な娯楽、聞いただけで身が震えるほどのスリル、何もかもがある。
 いつからか、それを一度でいいから手にして見たくなった。そうして、中学を卒業したその日に俺はオヤジの下で働くことを志願した。

 そんなオヤジに、待望の娘が生まれたのは今から10数年前のことだったか。

「このお嬢がまた大層ワガママでな。まあオヤジが甘やかしに甘やかして育てたことが一番の原因だが。お嬢の機嫌を損ねて組を追放されたヤツがもう三桁って話だ」
「冗談ですよね?」
「そう思うだろ。そんな下らないことで追放していい組員なんざうちにはいねえ。でもこれが事実だ。だからだ、分かるか?」
「何がですか?」
「そのお嬢に気に入られれば、オヤジの信頼も得られるし、組の最重要課題もクリアできる。一番の出世街道なんだよ。」

 兄貴は真剣な顔つきで、少し声量を下げて続ける。

「お嬢様の世話役のポストは常に人手不足だ。お前の人を見る目は類まれな才能だと思う。絶対に生き残ることができる。やることは簡単だ。お嬢様が求めているものを察知して提供する。シンプルにご機嫌を取ればいい。どうだ、やってみないか?」

 正直な話をすれば、このまま組織で燻っていては何も掴めずどこかで野垂れ死ぬのではないかという不安はあった。だからこそ、兄貴のオファーは俺にとって魅力的だった。
 こうして、俺はオヤジの娘、組のお嬢様のご機嫌取りへと異動することになった。

「目玉焼きに醤油……?お仕置き決定ね」
「そんな…!毎日違う味付けをご所望されましたよね?昨日は塩で、明日は醤油にしましょうって」
「言ったっけ?でも今の気分じゃないし。ねえうるさいから、コイツ早く外に出してよ」
「そんな、そんな!!!!!」

 シンプルに言えば幼稚、低レベル。衝撃的な光景が、目の前に広がっていた。

 

<続く>