ちゅーボド @chu_bodo
名古屋の社内ボードゲーム同好会活動から生まれたゲーム制作サークルが、ゲムマに初出展! 初のオリジナルボードゲーム『新聞王 :THE SCOOP WARS』(名古屋ボードゲーム楽市「フレッシュドラゴン大賞2026」推薦賞受賞)と『名前のないレストラン』を頒布します。両タイトルとも、ゲムマ公式サイトとGoogleフォームで予約受付中。【土曜-H14】でお待ちしています。
- #3「計画を促すメカニクス」 新聞記者が本気で考えた新聞記者のボードゲームができるまで 『新聞王:THE SCOOP WARS』デザイナーズノート
- 2026/5/13 1:40
3.計画を促すメカニクス
『新聞王:THE SCOOP WARS』(以下『新聞王』)のデザイナーズノート第3回です。
これまでと同様に、『新聞王』の核である以下の4点について、1つずつご紹介していきます。
- 軽すぎず重すぎず、単純すぎず複雑すぎない、ちょうどいいプレイ感
- 他プレイヤーを直接攻撃はしないがソリティア感もない、適度なインタラクション
- メインのメカニクスは、バッティングとエリアマジョリティ(サブは、ドラフトとセットコレクション)
- テーマは新聞記者や新聞業界、取材競争
ということで今回は、「3」の「メカニクス」についてです。
メインのバッティングとエリアマジョリティについては前回書いたので、補助的に導入したドラフトとセットコレクションにまつわるあれこれを書いていきます。
きっかけはテストプレイ
これらを導入するきっかけとなったのは、制作も終盤にさしかかっていたある日のテストプレイ。その中で、ある方から「計画を立てる面白みに欠けている」という趣旨の指摘を受けたことでした。
すでに仕上がっていたバッティングとエリアマジョリティで、ゲームの骨格はほぼできていたけれど、いまひとつ深みがない。それは自分でも何となく分かっていました。
物足りなさを感じる中で「計画性」という言語化された示唆をもらい、大いに腑に落ちたというわけです。
前回書いたとおり、ゲーム全体を通したエリアマジョリティ争いにも、それなりの計画性は必要です。しかしその反面、他者とのインタラクションでたやすく揺らいでしまう傾向もあります(それに臨機応変に対応するのが面白さでもありますが)。
なのでエリアマジョリティだけでは、プレイヤーがゲームを通して「自分はこの路線で行く」と徹底できる行動の指針や、次の一手だけでなく次の次の一手、さらにその先まで考えるまでにはなりにくい面がありました。
そういった、うすうす気付きながら見過ごしていた課題を突き付けられたからには、さまざまなアイデアを試してみる以外ありません。
その後の試行錯誤の結果、「プレイヤー個別の目標となるカードを、ゲームのスタート時にドラフトで選択する(カードをプレイヤー間で回して1枚ずつ手元に残していく)」要素を追加したというわけです(なお、この追加要素の検討中も含めたボツ要素の数々は、最終回にまとめる予定です)。
高かったテーマとの親和性
最終的に採用した目標カードは15種類あり、その多くは、特定の場所やジャンルの得点カード(ラウンドごとに競う比較的小さな得点なので「小ネタカード」と名付けました)を集める、スタンダードなセットコレクションとなりました。
セットコレクションの課題によって促される、ある方針に基づいてカードを集めるゲーム中の行動がそのまま、特定のジャンルの話題を新聞紙面に集める「特集づくり」を彷彿とさせ、テーマとも非常に好相性だったからです。
小ネタカードには以前からニュースの見出し風のフレーバーテキストを付けていましたが、どうしてもただの数字として認識されがちでした。
それがセットコレクションの対象となったことで、数字だけではない魅力を持たせられたのも、大きな成果でした。
写真は小ネタカードの一例。場所を示すカード下部のアイコンのほか、右上には特定ジャンルのアイコンがあります
目標カードの名前は、そのまんまですが「紙面計画」としました。プレイヤーが担当する各新聞社が持つ編集方針を表現するものとして、テーマ性をさらに強化できたと思います。
次に検討したのは、各プレイヤーがゲーム開始時に持つ紙面計画の枚数です。
1枚では物足りないうえ、達成が困難になった時に救いがないので即却下。かといって3枚だと記憶する負荷が高く「どんな課題だったっけ」とゲーム中に確認する頻度が増えることになります。
『新聞王』の本来の核であるバッティングとエリアマジョリティへの集中力や、持ち味のテンポの良さを削いでしまい、好ましくないことにすぐ気付きました。
結果、組み合わせ次第で十分にさまざまな戦略がとれる2枚に落ち着くことに。
その2枚はドラフトで選ぶので、ある程度は能動的に自分好みの作戦を立てられますし、両隣とのカードの受け渡しもあるので他プレイヤーの狙いもなんとなく察することができます。
何よりほぼ確実に毎回組み合わせが変わるので(15C2で105通り)、その時次第の作戦を試す楽しみがあり、繰り返し遊んでも飽きにくくなりました。
写真は紙面計画カードの一例。セットコレクション以外にも、条件を満たしたら即時に得点するものなどがあります
最後の最後のひとさじ
こうして導入した紙面計画は、文字通りプレイヤーに計画性を要求するのにつながりましたが、さらにもう1点、細かな最終調整を加えました。
得点カードの山札トップを公開し、次のラウンドへの見通しが立つようにするというルール変更です。
次に何が来るかを開示するのは、デジタルゲームの「テトリス」や「ぷよぷよ」などでもおなじみのオーソドックスな手法。その情報をもとに強いカードを温存しておくなど、計画性を持ったプレイングをさらに促すことができました(これに関しても、次の次のラウンドの得点まで見えてしまうとプレイヤーへの負荷が高くなりすぎるので、次のラウンドまでにとどめました)。
戦略性だけでなくリプレイ性も向上し、ゲームとしての完成度を最後にもう一段階引き上げることができたドラフトとセットコレクション。
意識したのは、バッティング×マジョリティという強い土台があるので、あくまでそれを壊さず、より面白くするためのスパイスとして調整することでした。
いずれも追加したのは制作終盤だったので大変ではありましたが、だからこそパズルの最後のピースをはめるようなゲーム作りの醍醐味を味わえました。
テーマにも合っていたおかげで、最初からあってもおかしくない要素として付け加えることができ「取って付けた感」をあまり感じさせない仕上がりにできたのは、僥倖というほかありません。
それに何より、テストプレイというゲーム制作の基本中の基本の大切さに、改めて気づくことにもなりました。
「計画性」もそうですし、制作過程でいただいたさまざまなアドバイスや示唆、問題点の指摘がなければ、『新聞王』は悪い意味で全く違うゲームになっていたはずです。
地元の「名古屋テストプレイ会」の参加者の皆さんをはじめ、テストプレイに協力していただいた方々には、本当に感謝しかありません。
それでは今回はこの辺で。
次回は、最後の項目。新聞記者や新聞業界、取材競争という『新聞王』の根幹をなすテーマについて。合わせて、『新聞王』独特の世界観を形づくるアートワークとコンポーネントについても書きたいと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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