符亀

ゲームマーケット2017秋より参加させていただいております、符亀と申します。
拙作「マジカルカナグル」「愛羅武粋逸」「ロングロングマホウ」「超超長城」「ツミカブリ」「リーサルチェックメイト」「インヴァージョン」「アマロン」「バックハンダー」「皇継の書状」「サイクリアン」「シリアリアン」「バーグリアン」「レイリアン」「フォッシリアン」「エンジェリアン」については、ゲーム一覧ページをご覧ください。

12枚のトリテ「シリアリアン」【過去作広報キャンペーン2】
2025/6/28 19:19
ブログ

皆様こんばんは、符亀です。

新作の通販がむっちゃ調子いいのに旧作が動いてないから広報しようキャンペーン」、略して「旧作広報キャンペーン」の第二弾です。第一弾はこちらからどうぞ。

第二弾は、シンプルながら頭を使う「ミニマリアン」シリーズの2作目、12枚のトリテ「シリアリアン」をご紹介します。

すごろくやさんからもリメイクされた、弊サークルの代表作です。次回以降は消化試合…ってコト!?

  

 【ゲーム概要】

3種類のスート (マーク)、1ー12のランク (数字) が登場する、トリックテイキングです。

トリックごとに、そのトリックで出されたカードを1枚ずつ、場札として獲得します。

そして2トリック目以降は、フォローできる (1人目が出したカードと同じスート) なら場札からも出せます。なお、フォローできるなら誰の場札からでも出せます。

こうして場札をコントロールし、誰かの場札が3枚になった瞬間にゲーム終了。場札に応じた得点がもらえます。

場札が3枚の人は0点です。なので、最後のトリックは負けましょう。

と思いきや、3枚が連番のときは、逆に特殊勝利します。なので、連番が作れそうなら勝ちましょう。

たった12枚のカードで宇宙が見えると評判 (?) の、新感覚トリックテイキングです。3年前のゲームが新感覚を名乗るな。

【コンポーネント】

カード16枚、うち4枚が得点記録用のカードです。

ランクは1ー12で、つまり同じ数字のカードは存在しません。

スートはランクを3で割った余りに対応しており、1余るものは小麦 (赤)、2余るものはトウモロコシ (緑)、割り切れるものはオーツ麦 (青) が割り振られています。

 なお、連番になると図柄がつながります。オシャレだね。

【ゲームの流れ】

カードを配りきり、全て手札として持ちます。3ー4人用のゲームなので、手札は3枚か4枚です。

1トリック目は、普通にマストフォローのトリテを行います。つまり、「1人目は手札から1枚出し、」「次の人は、同じスートのカードが手札にあればそれしか出せず、ないなら好きなカードが出せ、」「これを順番に全員が1枚出すまで繰り返」します。

そして、カードの強さ順、つまり「フォローしていて数字が大きい人→フォローしていて数字が小さい人→フォローしていない数字が大きい人→フォローしていない数字が小さい人」の順で、このトリックで出されたカードから1枚を選びます。

選んだカードは、自分の場札として置いておきます。

その後、2トリック目を行います。2トリック目も基本的にはマストフォローのトリックテイキングですが、フォローできるなら誰か (自分含む) の場札からも出せます。

説明書より抜粋

 

こうして「カードを出す→場札をもらう」を繰り返し、誰かの場札が3枚になったらそのディール (ラウンド) を終了します。

そのタイミングで、

・場札が2枚じゃない人:0点です。

・場札が2枚の人:2枚のランクの差が大きいほど、得点がもらえます。(1ー3点)

これを繰り返し、誰かが7点以上を取ったらゲーム終了。一番得点の高い人が勝ちです。

 

説明書より抜粋

 

ただし、

 ・場札が3枚、かつ連番の人:7点をもらいます。→ 勝ちます。

 

なので、このゲームは「いい場札を2枚そろえて3枚目を取らないゲーム」ではなく、「他人の連番を是が非でも止めるゲーム」です。

ときには連番リーチな人から場札を奪い、ときには手札の連番になるカードを出さないように場札から出し、ときには自分が3トリック目に勝って自爆してでも連番リーチの人に3枚目を与えない等々。

まあ、あれです。がんばってください。

 

【振り返り】

ここからは、旧作の広報がゆえの振り返りタイムです。

まず本作の評価ですが、「悪手を避けるゲームすぎる」「兼ねるの良し悪しが詰まった1作」という感じです。代表作なんだからもっと良い感じに書けよ。

  

前回書いた通り、この「ミニマリアン」シリーズでは、松井優征氏の「兼ねる」をゲームの面白さ作りに活用することを裏テーマとしています。

しかし、シリーズ1作目である「サイクリアン」では、想定通りの「兼ねる」を実現することはできませんでした。

そのリベンジとして制作されたのが、この「シリアリアン」というわけです。

 

では、何と何を兼ねさせるのか。そこで目を付けたのが、トリックテイキングでした。

トリックテイキングでは、基本的にはトリックごとに、1人1枚ずつカードが出されます。出されたカードは、勝ち数を数えるため、勝者が1山に重ねて取るパターンが多いです。

 

この「取られて消えるカード」に、何か役割を持たせられないだろうか。

例えば、どれを取るかで点数が変わるようにしてはどうか。スートのセットコレクションもできるが、ランクに「トリックの勝敗決めのための強さ」以外の意味を与える形で、得点の要素を「兼ね」させられないか。

取ったカードのランクで、なんらかの計算させるのはどうだろうか。足し算や掛け算では、ただ大きい数字を取るだけのゲームになる。割り算は計算が難しい。となると、引き算で差を出すのはどうか。

引き算をさせるなら、取るカードの枚数は2枚にさせたい。では、3枚目を取った人は脱落させればいい。

しかし、これだけでは、大きい数字と小さい数字の2枚を集めればよくなってしまう。逆に、差が小さいものを集めた時の特殊処理がほしい。

いっそのこと、連番に意味を作るのはどうだろうか。連番を狙うと差が最小になって極端に不利になるので、そのリターンは大きくしたい。なら、「3枚を集める=連番じゃないと脱落」という極大のリスクと、「連番なら即勝利」の最強リターンをセットにしよう。

 

いや、「取られて消えるカード」と「得点計算用のカード」以外に、もう1つ役割を兼ねさせたいな。

じゃあ、その場札のカードも出せるようにしちゃおう。

ただ、なんでも出せるようだと自由度が高すぎるし場札の調整が簡単すぎるから、制限を設けよう。トリックテイキングらしく、制限はマストフォロー (同じスートしか出せない) でいいんじゃないかな。

あ、でもそれじゃあ場札を出せる状況が少なすぎるな。ええい、じゃあもう誰の場札からでも出せるようにしちゃおう。

説明書より使い回し

 

このように、「シリアリアン」のルールは過去一カンタンに決まりました。

テストプレイも何度かしてもらいましたが、変更したのは

・カードを裏で取る (裏で取ったカードはゲームから消え、他の人から取られなくなる) 選択肢の廃止 (テストプレイをお願いし始める前の1人回し中にイラネーとなり削除)

・「2枚のランクの差=得点」だったのを、順位に応じた得点に変更 (少しでも順位を上げた方が得になる仕様の方がいいのでは、という意見を受け)

・連番は100億万点あつかいだったのを、勝利に必要な7点ちょうどにして一応負け筋を残す (得点を積み重ねる戦略にテコ入れ)

ぐらいです。要するに、得点周り以外はイジっていません。最初からほぼ完全体でした。

 

理論と思い切りとが見事にハマったルールだったので、個人的に気に入っている作品の1つです。

評価もいただけており、すごろくやさんからもリメイクしていただけました。すごろくや!?なんでお前が!?

     

ですがまあ、今見ると思うところもあり。

まず第一に、ゲーム性が「良手を打っても詰め切れないが、悪手を打つと即死する」なので、勝ちに行くなら安全択を取るべきなんですよね。

なので、体験が「負けなかったから勝った」になりかねない。

もちろん、そういう丸い手を打ち合うジリジリとした捌き合いを楽しむ人もいると思いますし、そういう人にはシンプルにオススメではありますが。

なお、とある試遊会では、遊ばれた方から「これはシューティングゲームだよ」という評価をいただきました。なるほど、上手いこと言いますね。

箱裏のProject code nameは「危機管理」です。プレイヤーに爆弾処理をさすな。

 

そしてそれに絡む話として、「とりあえずこれをしとけ」な手がない、というのも良くないですね。

しいて言えば「デカいのと小さいのを押さえて3点取る」が鉄板ムーブですが、それすら他人の連番を防ぐためには投げ捨てないといけなかったり。

全部の要素がキレイに絡まり合い、どの行動にもリスクとリターンが絡むため、逆にどの選択肢も検討すべき「選択肢」でしかない。

「とりあえずお金生めるようにした方がいいよ」的な指針がないので、何をやったら何が起こるかを全部の選択肢に対して見積もる必要がある。

なので、シンプルに難易度が高いうえ、自分の手が正しかったのかが得点という結果が出るまでわからない。言ってしまえば不親切です。

     

これ、私やゲームの弱点でもありながら、「兼ねる」自体の弱みでもあったのではと思っています。

つまり、複数の評価軸が1つの選択肢に「兼ね」られているので、じゃあどうすりゃええねんとなりやすい。

本来は、それぞれの評価軸に対し、プレイヤーが簡単に優先度を付けられる必要があったのでしょう。片方の評価軸で評価すれば基本的にいいが、たまに致命的なことが起こりうるのでもう片方も気にしておく、みたいなイメージです。

         

総括として、本作は「兼ねる」を裏テーマとしたシリーズの2作目であり、かなりキレイに「兼ねる」を体現したゲームであると言えます。

その結果、たった12枚で出来ているとは思えない難易度とカチリとハマったルールから、高い評価をいただけました。

ただし、「プレイ方針が立ちにくい」「悪手を避けるゲーム性」という、爽快感を生じさせにくい点に欠点もありました。

これは「兼ねる」自体に内包されたリスクでもあり、つまりは「ミニマリアン」シリーズ全てがこの欠陥を抱えている可能性があります。

他の「ミニマリアン」シリーズがこのリスクを克服したのかを楽しみにしながら、本連載の次回以降をお待ちください。それか今すぐ全作買って自分の目で確かめてください。

         

【宣伝】

最後に宣伝タイムです。

「シリアリアン」は、ボドゲーマさんで委託通販中です。

トップ画像、ミスって印刷見本用の補助線が入ってるやつ挙げちゃったんですけど、これ修正できませんかね。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。