薩摩和菓子with米菓子

ゲームマーケット2025春が初出展。薩摩和菓子と米菓子の合同サークルです。ゲームマーケット2025春に、海の食物連鎖と弱肉強食のトリテ『シーフード・チェイン』、米国各地を同時に仁義なく競り落とすオークション『ゴートファーザー』、満員電車で固有能力ハンドマネジメント『RUSH HOUR』を出します。

『ゴートファーザー』開発秘話
2025/4/17 7:53
ブログ

『ゴートファーザー』がどのように生まれたかを紹介します。

 

『ゴートファーザー』とは?

『ゴートファーザー』は、アメリカの裏社会を題材にした、制限付き封印入札マルチロットオークションゲームです。

国際的なマフィアたちがアメリカの主要拠点を競り合います。自分のファミリーの構成員を活用しましょう。

各プレイヤーは1~6の数字が書かれた6枚のカードを山札とし、6つの縄張りカードをテーブルに配置します。各縄張りカードには、勝利点、構成員カードを配置できる最大枚数、特定のカードに適用されるボーナスが記載されています。

ターンプレイヤーは、自分の山札の一番上の構成員カードを、まだ獲得されていない縄張りカードに裏向きで配置します。

その縄張りカードに配置された構成員カードの枚数が上限に達したら、構成員カードの配置順を保ったままひっくり返します。1枚目に配置された構成員カードは+1点、2枚目に配置された構成員カードは+2点と配置順に応じたボーナスが入ります。また、「ホワイトハウス」での「6」のように、構成員カードの数字が縄張りカードで指定された数字ならば、+3点のボーナスが入ります。

各プレイヤーは構成員カードの数字とボーナスを合計します。合計値がもっとも高いプレイヤー(同値だった場合は最後に配置したプレイヤー)はその縄張りカードを獲得し、自身の構成員カードをその縄張りカードに残します。ほかのプレイヤーは自身の構成員カードを自身の山札に戻してシャッフルします。

すべての縄張りカードが獲得されるか、誰も構成員カードを配置できなくなったらゲーム終了です。後者の場合、まだ獲得されていない縄張りカードでも「縄張りカードの獲得」を実行しますが、これで獲得した縄張りカードの勝利点は半分(端数切り捨て)となります。

もっとも勝利点を獲得したプレイヤーの勝利です。

製品ページはこちら

 

封印入札マルチロットの元ネタは『ヴィクトリアン・マスターマインド』

「ゲームマーケットチャレンジ2024」に出展するボードゲームを考えるために小野卓也『ゲームメカニクス大全』を読んでいると、「オーダーカウンター」の例として『ヴィクトリアン・マスターマインド』が紹介されていました。

『ヴィクトリアン・マスターマインド』は、19世紀の蒸気世界を舞台に、策謀と超科学マシーンで世界中を混乱に陥れることを目指す、中量級のボードゲームです。

公式サイトからルールを引用しましょう。

選択した色のエージェントタイルを取り、よく混ぜて絵の書かれてない面を上にして重ねます。

 手番になったら、手元にあるエージェントタイルの一番上をとり、いずれかの中央ボードに伏せて置きます。エージェントタイルを置いたら次のプレイヤーに手番が移動します。
 なお、一つの都市にエージェントタイルが3枚重ねられた場合は、手番の移動前にタイルの処理が発生します。エージェントはその都市に記載されている戦利品を獲得し、さらに各エージェントが保有する能力を発動します。この処理が発生することにより、あなたのマシーンの完成に一歩近づき、また攻撃力が強化され、手下が悪事を重ねます。つまり、世界がより混乱を極めていくのです!

『ヴィクトリアン・マスターマインド』ではエージェントタイルを都市ボードに配置しますが、エージェントタイルも都市ボードもカードにすれば、カードのみで面白いゲームが作れるのでは?という発想から、『ゴートファーザー』の開発が始まりました。

 

『ヴィクトリアン・マスターマインド』の複雑さ

『ヴィクトリアン・マスターマインド』は、「エージェントタイルを都市ボードに配置し、一定枚数のエージェントタイルが都市ボードに重ねられたら裏返す」まではとても簡単です。

しかしながら、エージェントタイルはそれぞれ異なった能力を持ち、都市ボードはそれぞれ異なった戦利品をプレイヤー個人のボードに供給します。

つまり、エージェントタイルと都市ボードの効果を表現するために、大量のルールとコンポーネントが必要になっているのです。

これは、勝利点を獲得するまでに「策謀の実行」や「超科学マシーンの作成」という、複雑な工程を挟んでいるからです。

『ヴィクトリアン・マスターマインド』を複雑にしているのが勝利点の獲得方法であるならば、超科学マシーンをなくし、「エージェントタイルは数字のみ」「都市を占領すると勝利点を獲得する」に変えればよいのでは?

しかし、それだけではエージェントを都市に配置する順番や、エージェントと都市の組み合わせに意味がなくなってしまいます。

 

後追いボーナスと縄張りボーナスの追加

エージェントタイルを都市に配置した順番に意味を与えるために、配置した順番が後であればあるほど強くなる「後追いボーナス」を追加しました。エージェントタイルを裏返す処理をできるだけ発生させたいので、ほかのプレイヤーが先行している都市でも逆転しやすくする意味合いもあります。

また、エージェントと都市の組み合わせに意味を与えるために、特定のエージェントは特定の都市で強くなる「縄張りボーナス」を追加しました。強くなったことを表現する増加値の算出方法をいろいろ考えましたが、以下の理由から、「後追いボーナス」の最大値である「7」の半分(端数切り捨て)である「3」で固定になりました。

  • 乗算だと「後追いボーナス」との計算順が問題になってしまう
  • 加算が状況によって異なると、バランス崩壊しない計算式を考える必要があり、プレイヤーが覚えることも増える
  • 加算の固定値があまりに大きすぎると「後追いボーナス」が無意味になってしまう

 

バランス調整の結果、ワーカープレイスメントからオークションに

どのプレイヤーがその都市を占領し、勝利点を獲得するかまでは決まりました。

では、その都市に配置されている構成員カードはどのように処理すべきでしょうか?

すべてのプレイヤーの構成員カードがその都市に留まることにすると、プレイヤー人数×1分程度と、インストの時間を下回る短時間でゲームが終わってしまいます。

よって最初期は、すべてのプレイヤーの構成員カードがそのプレイヤーの山札に戻る、いわゆる「ワーカープレイスメント」のような処理を考えていました。

しかしながら、脳内でテストプレイをしてみると、構成員カードの配置上限が低い都市を占領して構成員カードを再利用する動きが強すぎる(=そのような都市の勝利点を下方修正する必要がある)こと、山札をシャッフルしたときに数字の高い構成員カードが山札の上に来ると不本意な上振れが発生することがわかりました。

ここで、論理学の出番です。

合計値の比較で「勝ったプレイヤー」と「(勝たなかった=)負けたプレイヤー」、そのプレイヤーの構成員カードがそのプレイヤーの山札に「戻る」と「戻らない」で場合分けすると、2×2=4パターンになります。

個別に見ていきましょう。

・勝ったプレイヤーも負けたプレイヤーも、そのプレイヤーの構成員カードがそのプレイヤーの山札に戻る

先ほどの脳内テストプレイで、デメリットだらけだとわかりました。

・勝ったプレイヤーも負けたプレイヤーも、そのプレイヤーの構成員カードがそのプレイヤーの山札に戻らない

プレイヤー人数が少ないと、構成員カードが6枚では一瞬でゲームが終わります。論外です。

・勝ったプレイヤーの構成員カードはそのプレイヤーの山札に戻るが、負けたプレイヤーは戻らない

最初の都市での勝敗が、ゲームの勝敗を決定してしまいます。論外です。

・勝ったプレイヤーの構成員カードはそのプレイヤーの山札に戻らないが、負けたプレイヤーは戻る。

負けたプレイヤーは山札が多く残ることになるので、逆転しやすくなります。

また、派遣された構成員が残って、勝ち取った縄張りを守る、というフレイバーにも合致します。

 

「入札したコストが一番高いプレイヤーだけがコストを消費して勝利点を獲得するメカニクス」といえばオークションです。

ワーカープレイスメントのバランスを調整した結果、オークションを車輪の再発明しました。

 

タイトルの元ネタは『ゴッドファーザー』

裏社会の構成員が縄張りを占領する、というフレーバーは最初期からそのままですが、タイトルが確定したのはキャライラストを描き始めたタイミングでした。

裏社会を題材にして、一般的な知名度が高い作品の時点で『仁義なき戦い』『レザボア・ドッグス』『ゴッドファーザー』の3択になります。

『仁義なき戦い』は「仁義」「なき」「戦い」のいずれも変えることが難しく、やっとひねり出した『仁義にゃき戦い』も同名のsteamゲームが存在しました。

『レザボア・ドッグス』はそもそも組織間の抗争が題材ではなく、知名度も相対的に低く、唯一思いついた『レザボア・キャッツ』も複数の映像作品のエピソード名として用例がありました。

『ゴッドファーザー』は「ファーザー」さえ残っていれば通じる汎用性がある分、被りを避けるのが大変でした。

『ドッグファーザー』はヒップホップアルバム、『コッドファーザー』は魚フライやコールオブデューティ界隈、『キャットファーザー』にいたってはボードゲームとしての用例がありました。

そこで、英語で動物の名前を総当たりした結果、『ゴートファーザー』は元ネタと響きが似ていて、イタリアのワイン以外の用例がなく、キリスト教でヤギが悪魔の象徴にされがち、とピッタリでした。

 

最後に

マフィアのフレーバーでお手軽に楽しめる、制限付き封印入札オークションゲーム『ゴートファーザー』をゲームマーケット2025春の土曜日に頒布します!

価格はイベント限定で1500円!

取り置き予約も受付中!

製品ページはこちら

YouTube