四等星

4人の個性豊かなクリエイターが終結したボードゲーム制作サークル、それが「四等星」です!
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ゆびダイス 応用編
2024/11/27 14:20
ブログ

・ゆびダイス 応用編

無事にゆびダイスのインストールが終わった、ニュービー・ランダマイザーたちへ。そろそろ一回くらい試してくれて、おのおのが「フン!俺は先に違う方法を思い付いてたぜ」とか「ぼくは何も見ずに出来ちゃうもんね」とかなどのロックな気持ちを抱いたり、単に「ほえ〜」「あっそ〜」と思ったりしたことでしょう。次のステップです。ゆびダイスの真価を……印刷された表の意味を学ぶ時が来ました。このステップを履修し、あなたのゲームにより良いゆびダイスを実装してみましょう!

まだなら、先にこちらをご覧ください。

https://gamemarket.jp/game/184200

https://gamemarket.jp/blog/190519

 

ゆびダイスは実体のない思考理論ではなく、視覚的な表と人間の物理的な指を含むプロダクト、およびその構造を万人が再現可能にするプロトコルのセットです。ご存知の通り、基本となるベーシック・ゆびダイスは1から6までの目が出る6面ダイスです。

さて、では表を見てみましょう。

 

この表が示すダイスは、表を見なくても論理的思考と少しの暗記に基づき、暗算することで使用可能です。すなわち、2人の指の数を足して0なら6の目とする。1以上6以下ならそのままその値を出目とする。7以上なら-6した値を出目とする。

ここで少し疑問がありますね。表は必要ないのでは……?とか、古くからTRPGなどで行われていた、2人が同時に好きな1〜Xのダイス目を宣言し、足し合わせてからXを超えていたらXを引くものと同じでは……?とか。

さて、なぜゆびダイスが「考えかた」ではなくそれぞれのゲームに個別に調整され印刷される(スマホに映しだされた画像でも良いけど)べき「プロダクト」なのかと共に、学んできましょう。

まず、声という記憶の中にしか残らない上に同時に何人分も聞き取れない、覚えきれない媒体を使うより、手を引っ込めるまでずっとその場にあり、何人が同時に出しても個別に指の数が判別可能な「ゆび」の方が利便性として優れているのは説明不要でしょう。ゆびダイスはテーブルを囲む10人が同時にダイスを振ることも出来ます。しかしこの時点では、プロダクト化する必要はそんなにありません。もちろん理屈を覚えるよりも答えを見た方が思考負荷が少ないですし、多くの人間は可能なら何も覚えたくないので、すでに表を提示してあげる意味はあるのですが、より大きな……「拡張性」と呼ぶべきものがあるのです。

 

・改造!ゆびダイス

1から6の目が出る6面ダイスは確かに、理屈だけ覚えれば表を見なくても使うことができます。

さて、じゃあこんなふうに6面が構成されているダイスはどうでしょうか?

「900」

「ルート5」

「かきくえばかねがなるなり法隆寺」

「クリティカル!」

「現在の西暦」

「ドラゴン」

 

ゆびダイスにするとこんな表になります。

(指の合計本数:出目)

0:ドラゴン

1:900

2:ルート5

3:かきくえばかねがなるなり法隆寺

4:クリティカル!

5:現在の西暦

6:ドラゴン

7:900

8:ルート5

9:かきくえばかねがなるなり法隆寺

10:クリティカル!

 

さあ、このダイスの理屈を覚え……おっと、理屈が存在しませんね。

このように、数学的な法則性や文化的な物語性を全く持たないダイス目で6面が構成されている場合、ユーザーは6面全ての意味や効果を暗記し、それらと指の数との対応関係も暗記しなくてはなりません。

一部の超人には可能でしょうが、現実的にはこのゆびダイスを表無しで振ることは不可能だと、お分かりになるでしょうか。もちろん声による数値の宣言だけでやることも無理でしょう。

一方、印刷された表があれば、我々は何も覚える必要はありません。ベーシック・ゆびダイスと何も変わらず、2人で指を出し、その合計の下に書かれた目を見ます。6だから……ドラゴンだね。なんでか知らんけど。

そう、表は「道具」に類するものであり、我々がドライヤーの構造や理論を知らなくてもボタンを押せば温風を得られるように、決まったプロトコルに従えば、何がどうなっているのか知ることも覚えることもなしに、すべてのゆびダイスはあなたに出目を伝えます。

ゆびダイスは均等な確率でランダムに結果を出力する機能に目が行きがちですが、図表として印刷することで、法則性を持たない構成の6面を提供できるのです。つまり1D6相当のランダマイザーとは、1から6までの数字を提供するランダマイザーではなく、6種類のあらゆる組み合わせの情報を提供できるランダマイザーだと言うことです。ボードゲームなら数字の代わりにアイコンやイラストが描かれたダイスもたくさんありますが、そういった出目ももちろん可能です。

例えばストーリーテリングゲームなどで、全てのプレイヤーが異なるカスタムゆびダイスを手元のキャラクターシートにその場で書き上げ、同時に振ることも出来ます。遊びながら最初は空白だった6つの目を冒険の結果として埋めていくこともできます。さあ、ワクワクしてきましたか?

ゆびダイスを応用する場合、常に気をつけるべきなのは、これはランダムを純粋に求める心があればダイスの代用品たり得ますが、ダイスの上位互換でも下位互換でも完全な互換でもないランダマイザーであり、ダイスに出来ることの一部ができず、しかしダイスに出来ないこともでき得る拡張性もまたある、ということです。

また、単純にサイコロが必要な場面で、理屈だけ説明して表を使わずに法則の暗器と計算だけでベーシック・ゆびダイスを振ることにしたならば、相手をよく選びましょう。多くの人は、強い興味もないのに例外処理つきの複数の暗算が必要な手順をやりたいと思いません。

そしてさらには、プレイヤー同士が協力関係にないゲームに実装した方がよろしいということです。遊び心が十分に育っている大人同士ではそんな心配はいりませんが、相手の出したい目を出してあげるためにお互いが協力しあうゲームシステムでは面白い運用にならないことがあると、想像がつきます。逆に全員が敵対的なゲームにおいては、かなり正確なランダマイザ―として動作します。

改造する際のルールとして、6つの出目を等確率(すべて1/6)に維持するためには、ベーシック・ゆびダイスで同じ出目だった指の数には同じ内容をセットしないといけない点に注意してください。例えば、先ほどの例ではベーシック・ゆびダイスで「6」の出目が出る指の数である0と6にはどちらも「ドラゴン」がセットしてあります。

ゆいゆいさんの企画で始まった「ボドベントカレンダー」に私もひとつゲームを提供しておりまして、そこで例として1から6の数字ではなく法則性もないカスタムゆびダイスを実装しています。もし機会があれば、私の担当日のゲームを遊んでみてください。コースターボーイよりも先に世に出ちゃったので、なぜか皆さんが最初にふれる公式のゆびダイス搭載ゲームがコースターボーイではなくボドベントカレンダーになりましたが、出来栄えには自信がありますので、楽しんでいただければ幸いです。ぜひ4人でやってみてね。

https://yuiyuitalk.base.shop/items/94532062

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