ぜったい倍にしてかえすから @BlueguildV
強く生きる、がモットー。自作ボードゲームを企画〜デザイン・製作〜販売しています。 <出品ゲーム> 『どうぶつカードバトル』:どうぶつのカードを出し合って、場のりんご・さかなを取り合う白熱読み合いゲーム!(←化粧箱new!!) 『ゆうしゃBがあらわれた ゆうしゃCがあらわれた ゆうしゃDがあらわれた』:魔王を倒すのは誰だ!勇者同士のバトロワ! 『ラップかるた3』:誰でも簡単にラッパーになれる!オリジナルビートであなたもラッパーに! 『Re:Memoria』:小説×ボドゲの協力ゲー!プレイヤーが変わればストーリーも変わるマルチエンディングをご用意。 『From the Golden Records』:宇宙に遭難した宇宙飛行士が、自分の居場所を信号で伝える推理×パーティゲーム!
- 5人が集い、賭ける理由/「ぜったい倍にしてかえすから」
- 2023/12/7 23:44
BLUE GUILD 2023年秋出品
「ぜったい倍にしてかえすから」
登場する5人のキャラクターが奇しくも集い、ギャンブルをすることになった経緯について
公開します。
※前回の「知りすぎたフリーライター」から見ていただくとよりおもしろいです
↓↓
サラリーマンは、初めて降り立つ駅にいた。
タクシー運転手は、初めての道路を走っていた。
バンドマンは、スマホで地図を見ながら歩いていた。
お笑い芸人は、地面を見ながら立ち止まっていた。
フリーライターは、疲れ切った顔で呆けていた。
各々が、伝えられた場所を目指す。ある物はカードを片手に、ある物は地図の書かれたメッセージを頼りに。
最初に着いたのは、お笑い芸人だった。昨晩から眠ることができなかった彼は、クマを作って笑うこともなく、しばらく立ちすくんでから入口のドアに手をかけた。
次に着いたのは、タクシー運転手だった。仕事を抜け出し、近くの、路駐しても問題無さそうな場所にタクシーを停め、入口のドアをしばらく眺めて、入口のドアを開けた。
その次に着いたのはバンドマンだった。遠くから眺めていた建物に目標を定め、すぐさまドアに手をかけ、一目散に中に入った。
最後に着いたのはサラリーマンだった。変わらずの虚ろな表情で、足取りも不確かなまま建物の前に着いた。ため息をつきながら、抗うようにドアノブを握った。
フリーライターは始めから中に居た。
ギィ、という音を立てて、タクシー運転手が部屋に入る。中には同世代のお笑い芸人らしき男がいた。絶妙な空気感を感じて、お辞儀だけが繰り広げられる。
しばらく経ち、バンドマンが部屋に入る。同世代の、おそらく服装からしてタクシー運転手の男を見て、そういえば路駐してあるタクシーあったな、と思った。
次に、フリーライターが部屋に入る。他の部屋から移動してきたこの男は、全員の顔を知っていた。しかし他の3人は、この男のことを知らない。
最後に、サラリーマンが部屋に入った。全員の視線が自分に注がれるのを感じて、サラリーマン一瞬たじろいだ。
「あれ? お前……なんで……?」とタクシー運転手が言葉を漏らした瞬間に、「え……運転手さん、こいつと知り合いなんすか?」とお笑い芸人が言い、「え、なんで……?」とバンドマンが目を丸くした。
「ようこそ、お集まりいただきマシタ」
天井から、声が聞こえる。サラリーマンとフリーライターとバンドマンが反応する。
「これから、あなたたちニハ、借金を返すためのゲームをしていただきマス。そちらのドアからお進みくだサイ」
部屋の奥にあるドアが開いた。その先には、カジノでもあり、ともすれば賭場とも呼べる空間が広がっていた。
「複数のギャンブルをしなガラ、皆さんに課せられた700万円という借金を、返してもらいマス」
「賭け金の最少額は50万円カラ」
「最少額に足りない場合は、お互いで貸し借りをしてくだサイ」
「友達、ですもんネ」
その言葉と併せて、大きな一人の男が賭場に入ってきた。
その男を見て、タクシー運転手とお笑い芸人が反応した。
バンドマンがサラリーマンに声をかけた。
「お前、なんでこんなとこにいんだよ」
「……こっちのセリフだよ……全員、知ってる奴だ……」
「は?」
「お前は塾時代からの付き合い、タクシー運転手が大学の友達、お笑い芸人が大学のゼミ友達、フリーライターは高校の同級生だ……」
「……それって」
「……狙われた?」
お笑い芸人がサラリーマンに歩み寄る。
「なんだよ、それ……」
「すまん……分からん」
「お前のせいなのか?」
「それも……分からん」
「おい、おっさん」とタクシー運転手が声を上げる。
「なんだい」
「これ、返せなかったらどうなんだ」
「はぁ? ガキじゃねぇんだ。そこの“お笑い芸人”にでも聞けよ」
お笑い芸人がビクっとするのを、全員が見ていた。
そして瞬間、全員が察した。
「それでは、ゲーム開始デス」
プツンと、いう音を立てて天井のスピーカーが切れた。
「さぁ、お前ら全員、座れや」
目の前には束になった現金。
ギャンブルのルールが書かれたシート。
6面サイコロと20面サイコロ。
借用書。
サラリーマンが、お笑い芸人を見る。手元が震えていて、顔が真っ青だった。
「大丈夫か……?」
「…け金が…ねぇ」
「あ?」
「賭け金が……足りねぇ……」
お笑い芸人が一瞬、サラリーマンの目の前に置いてある現金を見る。
「……くれよ」
「は? やれねぇよ、さすがに」
「ちげぇよ……貸してくれよ……」
「貸すって……」
「見りゃ分かんだろ! 賭け金が足りねぇんだよ! 貸してくれよ! 借りた分、絶対倍にして返すから!」
定点カメラの奥で、チンピラがにやりと笑った。