モグワイ @mogwai_spiele
モグワイ /トマソン玩具です。
モグワイは主催の長谷川登鯉がアートや製造を担当して絶版創作ゲームのリメイクを行うサークルです。トマソン玩具はトリックテイキングゲーム専門のモグワイの別ブランドです。よろしくお願いします。
- 朧ニンジャスタートリックのレビュー
- 2017/12/5 18:25
モグワイの長谷川登鯉です。
自分は文章も説明も苦手なので、信頼している創作仲間で、友人で、ゲームマーケット大賞優秀作にも選ばれた『イアルへの道』の作者、梟老堂の副夕郎さんに『朧ニンジャスタートリック』のレビューをお願いしました。
渋さ溢れる!いぶし銀トリックテイキング 文:梟老堂/福夕郎
※はじめに※
このレビューはトリックテイキング用語が分かること前提で記載しています、あらかじめご了承ください。
【総評】
とてもいい意味で渋い! 運と戦略の配分が絶妙なトリックテイキング に仕上がっています。少しクセがあるのである程度トリックテイキングに慣れているプレイヤー向け のゲームかなと感じましたが、色々な種類のトリックテイキング的楽しさを味わえるので、「代表的なトリックテイキングは遊んでみたけど、毛色の違うゲームも遊んでみたい!」 という方にも是非遊んで欲しい ゲームです。
その分、「ゲーム後半、大量得点で大逆転!」 … といった派手さはないので、そういうものを求める人には合わないかもしれません。トリックテイキングに慣れたプレイヤー3人で遊ぶと、じりじりした読み合いとダイナミックなゲーム展開を楽しめる良作だと感じました。
【ルール概要】
少し変わった得点計算方法のトリックテイキングゲームです。
基本的には 「ラウンドごとの忍者力」 を競い、より数値が高いほうから順位を決め、上位が高得点となっています。ただし!あらかじめ設定したバースト値(ゲーム中では 「任務値」 とされています)を超えると得点を得ることが出来ません。これにより、「どこまで攻めるか」 の戦略性と、「こんな高い忍者力にするつもりは無かったのにー、くっそー!」 というハプニングとの両方を楽しめるようになっています。
バーストの数値はルールのバリエーションがいくつかあります。
当然、バースト値が低いほうがより難しいので慣れないうちは推奨の 「11」 で遊ぶのが良いでしょう。
慣れている人達と遊ぶ場合は、条件をより厳しく(バースト条件を低く)設定したほうが楽しいですね。(私は、初回:「9」、2回目以降:「8」+ 後述の 「豪華版追加ルール」 で遊びました)
◆基本ルール
【カードの内訳】
3スート(赤・緑・青)
8ランク(各スート1~8)
特殊カードに若干違いがあるものの、スートによる差はほとんどありません。初期のカード配布は配りきり、各プレイヤー8枚です。
【トリックの勝敗】
・トランプ(切り札)無し
・マストフォロー
・リードスートに関係無くランク勝負、同ランクは後出し勝ち
【ラウンドの定義と終了条件】
手札から、毎トリック1枚ずつカードをプレイし、各プレイヤーが手札を1枚残した状態でラウンドは終了します。(合計7トリック)
言い換えると、未使用のカードが1枚残るということです。
◆点数獲得方法
2つの点数獲得方法があります。
1.ラウンドごとの忍者力勝負
忍者力(ニンジャリョク)とはっ!赤緑青3属性の合計値で決まる数値です。(ドトン・カトン・フウトンってカッコイイですよねぇ)
トリック獲得時にスートごとに一番低いランクのカードが、そのスートの忍者力になります。
既に獲得しているスートのカードを新しく獲得したら上書きされます。
言い換えると、トリックを取ったらランクが一番小さいカードが上にくるようにスートごとに山札を作って既存の忍者力を示す山札に重ねる。ということです。
ラウンド終了時に3スートの忍者力を合計し、バースト上限を超えていたら0点。上限内のプレイヤーで順位を決め、1位:3点 2位:2点 3位:1点 をそれぞれ獲得します。(バーストした場合は順位争いに参加できず0点であることに注意してください)
2.手裏剣コマ
各スートの 「ランク6」 のカードには手裏剣のマークが書いてあり、このカードが出たトリックを獲得したプレイヤーがトリックでプレイされたランク6のカード枚数と同じだけの手裏剣コマを獲得します。
5個ある手裏剣コマがなくなったら、ラウンドの途中でも一度ゲームを中断し、手裏剣コマによる得点計算を行います。(このあとラウンドはまた続きます)
手裏剣コマの個数が多い順に、1位:3点 2位:2点 3位:1点 を獲得します。
細かい条件はルールブックを参照ください。
◆終了条件
前述の手裏剣コマが2回なくなったら、その得点計算を行いゲーム終了です。ラウンドの最中で起こった場合、そのラウンドが終了するまでゲームを続け 「1. 忍者力勝負」 の点数を加算してから最終的に最も点数が高い忍者が勝利します。
◆細かいルール
・特殊なカード:特殊カードは2種類だけです。(Simple is Best!)
ランク4 : リード獲得 (青と緑のみ2枚)
⇒ カードを出したプレイヤーが次トリックのリードプレイヤーに
ランク6 : 手裏剣アイコン(全スートにあり3枚)
⇒ カードを獲得したプレイヤーが該当数の手裏剣コマを獲得(ストックに足りない場合はあるだけ)
【一般的なトリックテイキングとの違い、本作のウリ】
・勝負どころの多様さ
本作の一番好きなところは、「似たような状況、予定調和が起こり辛い」 というところです。
一般的なトリックテイキングでは、トランプ(切り札)などの不確定要素はあるものの、手札の具合によっては手なりに近いことが起こります。このゲームは忍者力として獲得するカードを、「リードプレイヤーががコントロールし辛い」ので、上記のような状況が起こり辛く、常にプレイヤーが主体的にプレイする必要があります。
これを面白いと思うか、計画が立たないと思うかは人それぞれだと思います。
本作が人を選ぶと感じる一番の理由です。(私は好きだけどね!)
・カウンティングのポイントが異なる
ランクが1~8と少なめでスートも3種類なので、カウンティングが比較的容易に出来ると一瞬思うのですが、本気でプレイすると逆にカウンティングし辛いような、少し変わった感覚を味わいました。
というのも、よくあるトリックテイキングはカウンティングといっても、高ランク・低ランクなどポイントだけ覚えていればいいのですが、欲しい忍者力が中間の数字であることもあるため、3や4といった数字も覚えたくなることもしばしば。
普段とは違うカウンティングをすることは新鮮さがありますし、考えることが多くて私は楽しいと感じました。(結局頭がバーストして覚えられなくなりましたがw)
・トリックの勝敗条件と点数構造のマッチングが素晴らしい
「ノートランプ」 「リードスートに関係無くランク勝負」 「後出し勝ち」 というルールとカード獲得の条件が絶妙にマッチしており、各プレイヤーの手札にスート種類が少なくなってきた際の駆け引きをより濃密なものにしています。
上記条件により確定条件が少ないため、常に相手の思惑と残りカードを考えながらプレイする必要があるシビアさと、後半の手札スートが偏ってきた段階でのゲーム内での大きな動き。これらを全て内包しており、ちょうど良い塩梅で本作にゲームらしさを演出していると感じました。
【ゲームシステム以外】
・フレーバー
任務値と忍者というフレーバーがとても分かりやすいな、と感じました。任務を達成しなくてはならないが(出来る限り高い忍者力が必要)、忍ばないと忍者じゃない!(任務以上の能力は不要っ!)って、分かりやすいです。
【結論】
特殊カードも少ないし、ルール自体はいたってシンプル。その中でゲームとしての完成された面白さがあります。少し地味だけど、考えるのが好きでトリックテイキングゲームを楽しみたい!という人には自信を持ってオススメします!
また、コンポーネントも豪華なので、その点に惹かれた人も是非遊んでみてください。渋めなトリックテイキングの楽しさを味わっていただけると思います!
(これを機にトリックテイキングが好きになってくれるといいなぁ、好きになって『ボトルインプ』を一緒に遊んでください)
【ちょっと気になるところ】
・終了条件
「手裏剣コマが2回なくなる」 のみなので、場合によっては間延びしてしまうことがあります。個人的には、ラウンド数での終了条件もあってよかったんじゃないかなーって感じました。
ラウンドをカウントするのが面倒っていうのもあるので、痛し痒しではあるんですけどね。
【豪華版の追加ルール】
・任務値(バースト)関連のルール
豪華版に追加されているカードで、隠密カードが変化するルールがあります。
ラウンドの最後に誰もバーストしなかったらより低い数値のほうに裏返す、誰かがバーストしたら元に戻す。というものです。実際に採用して遊んで見たらプレイ感が変わってとても楽しかったので、通常版の 「9」 「11」 でも同じルールがヴァリアントとしてあってもいいんじゃないかなーって感じました。
※基本システムに慣れないうちに条件が変わるとプレイの感覚がつかめなくなるので、あくまで慣れてきたらですね。
いかがでしたか?
前作『8ビットトリック』は、あまりトリックテイキングゲームを遊んだ事が無い人に楽しんでもらう事を目標に制作しました。
今作『朧ニンジャスタートリック』は、少しトリックテイキングに慣れた方に遊んでもらう事を目標に、全てのカードに使う場面があるように制作した…んですが、トリックテイキングのセオリーから外れてしまったのか、想定よりも難しいゲームに仕上がったようです。また、三人の理解度が近いほうが楽しめるようで、ハードルの高いゲームなりました。次回作を作る事があれば、そこが課題だな、と感じています。
そんな変わったゲームのクセをしっかり把握して遊んで下さった上で、ゲームの悩みどころを作者の私より分かり易く伝えて下さって「梟老堂さん、流石だなぁ。」と感心しきりでした。
そんな梟老堂さんの初期作品『オツカイフクロウの苦労話』は、なんと『朧ニンジャスタートリック』と同じ三人専用トリックテイキングゲームです!しかも協力ゲームという事で、更にニッチ(失礼;)なゲームですがゲームとしてしっかり面白い作品です。機会があれば是非、遊んでみて下さい。
『朧ニンジャスタートリック』は現在、コチラで通販可能です。