カラメルカラム @Caramel_Column
神保町にあるゲーム会社です。アナログ・デジタル問わず、ゲームを作っています。
- 『THE 修学旅行の夜』のルールができるまで
- 2017/5/4 23:46
はじめてゲムマに出展した、2016年12月時点で「次のゲムマまでに新作を作ろう」とは考えていた。
最初に頭に思い浮かんだのは「大喜利系」だ。その名もズバリ『THE 大喜利』。一周まわって大喜利をテーマにした大喜利ゲームって新しいと感じていた。しばらくは「もうこれで決まりだな」と思っていたものの、一週間くらいして「やっぱりあんまり面白くないかも」と我に返り却下した。
次に考えたのはケイドロだ。『スコットランドヤード』よろしく、ボードを使ったゲームも考えてみたかったからだ。それに加え、前作は残業をテーマにした作品だったこともあり、プレイヤー層を広めるためにも学生にターゲットを絞るのはアリかも、と感じていたのだ。もちろん名前は『THE ケイドロ』。ドロケイにするか、ケイドロにするか、それが問題だ。という以前に、あまりゲーム的に面白い要素を詰めにくいと判断して、早々に却下した。ここまでで、12月終了。ぼんやり考えるだけじゃ埒が明かない、ということに気づくには充分な時間だった。
大喜利とケイドロがあまり面白くなりそうにないなと思ったのは、選んだテーマ自体にゲーム性が強かったからだと反省した。大喜利やケイドロは、自主的なスポーツマンシップ精神がある程度求められるかもしれないけど、元よりゲーム的な遊びの部分がある。『THE 残業』の個人的に気に入ってる点は、残業というあまりゲーム性のないテーマを軸に、そのフレーバーを感じつつゲームとして成立させたことだった。そうだ、テーマ自体にゲーム性はそれほど必要ない。テーマに沿って、それに納得できるゲーム性を付与してあげる方が作る側としては面白いはずだ。
ということを考えて、思い至ったのが修学旅行の夜だった。明確なゲーム性はないものの、修学旅行の夜から連想されるキーワードは多い。「枕投げ」「布団の中で盛り上がる恋バナ」「先生の見回り」「女子の部屋に潜入する」などなど。どこを切り取っても、ゲームとして味付けできるコンセプトを持っていそうだった。それに、前作の残業と比較して学生ターゲットで作りやすい。これは良さげだ、と思い『THE 修学旅行の夜』を作るに至った。
テーマが決まってから大枠のルールを固めるまでは、比較的安産だった。元々人狼系のゲームを作りたかったこともあり、正体隠匿系が面白そうだとまず考えた。修学旅行の夜で隠匿といえば、誰が誰を好きなのかと盛り上がる恋バナがメインになるだろう。それに、やっぱり枕投げだ。トークのみで展開する人狼系よりも、『レジスタンス』や『ブラッドバウンド』のようになんらかのアクションを強制した方がテーマを活かせそうだと思った。人狼系で勝敗を決するためには、なんらかの形でプレイヤーを各陣営に分ける必要がある。その部分は、男子カードと女子カードの組み合わせで決めるのがややユニークになりそうだと感じた。1枚のカードで陣営が規定されるより、半分ロジカルで半分ファジィな状況を作れると思ったからだ。
と、つらつらと考え大枠は1日で固まった。正月休暇中だったので、わりと集中して時間をつくれたのが良かった。それなりに遊べる形になっただろう、ということで知り合いを呼んで何度か試遊してみた。そこそこ、面白かった。だが、そこそこだった。何かが足りない、ともう一度ルールを見直すことにした。
ゲームを面白くするためには何が必要か改めて自問してみる。それはきっと、ゲームのルールを壊すルールの存在だと考えた。大富豪だって、革命や8切り、イレブンバックなど通常のルールと逆行するルールの存在がゲームを面白くする。基本的なルールが固まったら、それをいかに壊すかを考えると面白くなるはずだ。
そこで考えたのが「二股」だった。『THE 修学旅行の夜』は、男子カードと女子カードを1枚ずつ配り、その組み合わせによって陣営が決まる。だが、二股できる「プリンス」というイケメンの場合、女子カードを例外的に2枚受け取ることができるとしたのだ。二股をかけている「プリンス」は、相手を欺くことができる。好きな子のヒントを公開するときに、どちらのヒントを公開しても良いからだ。嘘は言ってない。誠意がないだけだ。他のプレイヤーより女子カードを1枚多く持つことになるが、それはどこかに隠せば良いということにした。二股は多少バレるリスクがある方が面白いだろう。
と、このルールを追加して組み合わせのパタンを精査し直したことで、だいぶゲームとして面白みのあるものになった気がしている。何より単純に、枕投げをしながらお前の好きな子誰だよとワイワイするのは、それだけでなかなか楽しい体験だった。どういった体験をさせたいか、というコアな部分は初期からブレなかったので、ルールの追加も比較的スムーズだった。
以上、所々省きながらも『THE 修学旅行の夜』の作り方。
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