EVOQ! @StudioEVOQ
ファンタジーの世界観をモチーフにした対戦型ボードゲーム、EVOQ!(イボーク)の販売・試遊を行います。
運の要素を一切含まない、チェスや将棋のようなゲームです。
モンスター召喚や魔法といったファンタジー要素をベースに、転送装置でモンスターが合体するなどSF映画風のギミックを加味した独特のゲームシステムが特徴です。
実際にプレイしていただかないと魅力が伝わり辛いゲームかと思いますので、一度手に取って遊んでいただければ幸いです。
- 【EVOQ!】対戦ゲームEVOQ!開発のあゆみ(アイデア元ネタ編)
- 2025/8/16 0:22
以前、対戦ボードゲームEVOQ!の開発経緯についてこちらの記事で概要を説明させていただきました。しかし時系列などを多少曖昧に簡略化した概要説明だけでしたので、改めてもう少し詳細な開発プロセスについて記したいと思います。
開発の発端
EVOQ!は元々、将棋を現代風に再発明するという発想から創出したボードゲームです。
その割にはルールもコンポーネントの見た目もまったく将棋の原型を留めていませんが、発想のスタートラインは間違いなくあの誰もが知る古典ゲームの代表格たる「将棋」です。
ただし単なるアレンジを目指したわけではなく、そのコンセプトを現代の視点で再解釈・再構築すればなんとなく良い感じのゲームになるのではないかというぼんやりしたイメージに沿って開発に着手しました。開発というより、元は単なる思考実験に近いものでした。
その際、将棋の元の仕様に似せることは一切考えず、これから作るゲームがアブストラクトゲームである必要もないしアナログですらなくデジタルゲームでも構わないという、完全に自由な方針であらゆる制約を取り払って検討を行いました。
結果的にアブストラクトのアナログボードゲームに落ち着いたのはオマージュ元の将棋というゲームがそうだったからではなく、アブストラクトのアナログボードゲームというジャンルそのものの性質がたまたま最適解だったからに過ぎません。
基本メカニクス
まず手始めに着目したのは、将棋というゲームのテーマ、モチーフについてです。将棋やチェス、シャンチーなどのチャトランガ由来のゲームは元々、国同士の戦を盤上遊戯として再現したものであり、兵士の血を流すことなく王族や軍人たちが盤上で戦いを交わし、親睦を深めるための先人の知恵ともいえます。
これをメカニクスの面から現代風に翻訳し直すとすれば、ストラテジー・ウォーゲームに置き換えるのが最も自然だと考えました。四角い将棋盤やチェス盤よりも全方位への距離がより正確に表現できる六角形マス(ヘックス)の採用、移動力と攻撃力の違いで個々のスペックが表現されたユニット(駒)の基本構成はこの時点で既に決定付けられました。
モチーフの再検討
将棋というゲームの成り立ちはともかく、現代における将棋は長い年月の中で当初の軍事や戦争といったテーマ性が薄れ、今では子供からお年寄りまで幅広く親しまれている平和的な競技ゲームとなっています。そう考えると、もはや過去の遺物でしかない軍事というモチーフからは潔く脱却し、現代のプレイシーンにふさわしい新たなモチーフへと一新する方が将棋の再定義という目的からは正道であるように思えました。
そしてその答えについては既に「どうぶつしょうぎ」という極めて優れた先例があったわけですが、そのままだと完全なパクリになってしまうので、違う角度から新たなモチーフを検討することにしました。そして神話のモンスターという現在のEVOQ!のモチーフが誕生しました。
「竜王はドラゴンで、桂馬もしくは角はユニコーンかな?」といった単純な連想からの安直な発想でしたが、その中で「ユニコーンがペガサスに成るとしたら鳥キャラと合体するのが分かりやすいかも」といった具合に合体で駒がパワーアップするというアイデアの創出にもつながりました。
単に動物の種類が架空の生物になっただけで根本的な発想が「どうぶつしょうぎ」のパクリとも言えなくもないですが、そこは目をつむってください。
さらに言うとグリフォンやハーピー(※)といったキャラはスーパーファミコンソフト「伝説のオウガバトル」の影響も大きいと思いますが、そこも目をつむってください
※当初は鳥キャラがハーピーで、訳あって後にセイレーンに変更となりました(詳細はこちらの過去記事参照)。
ゲームシステムの進化
EVOQ!の重要なシステム要素である瞬間移動のアイデアは、ゲーム盤のビジュアルデザインを試行錯誤する中で生まれました。
当時イメージしていたゲーム盤は9x9マス(交互に8マス)の四角形で、その四隅と中央のマスを色違いにするかもしくは模様を描くというボードの意匠を考案しました。その際、それらの模様の描かれたマスに何か特別な意味を持たせられないかと思い立ち、転送ゲートによる瞬間移動というギミックが生まれました。
メカニクスの元になったストラテジーゲームの駒の移動システムだと飛車や角のような長距離移動が無いため、盤全域に戦域が広がらないという課題がこれで解決に至りました。
そしてこの瞬間移動のルール細部や設定上の解釈などを思案する過程で、転送ゲート内で2体が融合するという合体システムのアイデアが生まれました。以前にもこちらの記事で紹介した通り、転送装置で生物が合体する元ネタはSF映画(原作は小説)の「ザ・フライ」です。
アブストラクトゲームになる
ここまでの過程で既に現在のEVOQ!に通じる多くの要素が実現していましたが、大きな課題も抱えていました。この時点のゲームシステムではまだ戦闘フェイズにストラテジーウォーゲームのような戦闘処理、つまりダイスやカードによる運要素の勝敗判定を用いていたため、コンポーネントの操作が煩雑でテンポが悪いように感じられました。もちろん、ボード上の駒とカードやダイスを同時に使用するアナログゲームは珍しくありませんが、将棋の再発明という目的に立ち返ると、よりシンプルな操作でテンポよくゲームを進められる方が望ましいと考えました。
そして考案したのが現在のEVOQ!の攻撃ルールです。一見シンプルに思える攻撃判定ルールですが、その発案に至ったのはゲームの開発に着手してから数年後のことです。
そしてゲームメカニクスの最後のピースである補助魔法のシステムができあがったのも同じ頃です。
当初、補助魔法は手持ちのカードを出して発動する形を想定していましたが、攻撃システムがカードを使用しないことになったため、他のアクションもカードを一切使わずに実現する形に改めることにしたのです。
同じ頃、攻撃で奪った敵駒の扱いについても思案していました。このゲームを開発するにあたって、倒された駒が退場せずに何度でも再登場できるシステムとすることは譲れない大前提でした。先述の通り、旧来的な軍事モチーフから脱却したゲームとして再構築すると決めた以上、時代錯誤な封建的君主制度や身分制度に殉じて部下が犠牲となるようなルール設計では甚だ片手落ちになってしまいます。幸い、全ての駒が永久循環するメカニクスに関しては将棋という偉大な先例が存在するので、有限ゲームとして十分に成立可能であることは確信を持っていました。
それらの課題をまとめて解決するアイデアとして、捕虜の敵駒が魔法の発動アイテムとなる(そして発動後に味方の駒台へと戻る)現在の補助魔法のシステムが誕生しました。
開発の最終段階
それ以降は駒のデザイン作業と並行しながらテストプレイを通じてゲームバランスの調整作業を行い、持ち駒の構成や初期配置、補助魔法の効果内容などを改良する作業を経て、現在の形のEVOQ!が完成するに至りました。
ちなみに、こちらのブログで以前書かせていただいた各キャラクターの説明は実際に開発当時に作成していた設定資料を踏襲しています。元々は公表を予定せず、あくまで制作側資料として作成していたもので、召喚や合体、補助魔法といったゲーム中のすべてのシステム要素についても逐一公表はしませんがフィクション上の原理設定が一応存在します。
ケルベロスの頭を一つだけのデザインにした判断材料や鳥キャラがハーピーからセイレーンに変更された経緯などももちろん事実です。ただし、エルフのキャラ説明記事の内容だけは過去のアイデアストックが存在せず、投稿時に書き下ろした新規の文章になります。まったくキャラクターの説明になっていないのはそのためです。
実は、主人公キャラクターがエルフになったのは開発の終盤に至ってからなのです。元々は魔法使いを主人公にするつもりでしたが、英語表記が女性(witch)と男性(wizard)で異なり扱いがややこしいのと、エルフの方がトールキン的なファンタジーの世界観をイメージしやすいことから、エルフを採用となりました。
ちなみに、主人公が魔法使いだった当時のキャラ設定の内容はワヤなお約束ラノベ展開で、世に出してはいけない内容だったので、主人公を変更して本当に良かったです。
