カラメルカラム

神保町にあるゲーム会社です。アナログ・デジタル問わず、ゲームを作っています。

非実在音楽家はサージェント・ペパーズの夢を見るか
2019/11/19 12:12
ブログ



『ミューレンソウ』に関するブログ、第五回です。「音楽」+「連想」=「ミューレンソウ」なのでそろそろ覚えてください。第一回〜第四回で絶対書いておきたかったことはあらかた書いたので後は告知というより私の自己満足です。お付き合いください。

さて、これはあくまで私の体感ではありますが、レコードジャケット(CDジャケット)に「そのアーティスト自身の姿」が描かれているパターンは、大体6-7割といったところでしょうか。古いレコード(50-60年代)ですとさらに確率が上がると思います。これまた私の個人的見解ではありますが、ピンク・フロイドのアルバム『狂気(原題:The Dark Side of the Moon)』ジャケットアートで有名なデザイングループ「ヒプノシス」や、イエスのジャケットアートワークで有名なロジャー・ディーンなどをきっかけに、アルバムジャケットを一つの「アート作品」として扱う傾向が強くなったのかな、と感じています。もちろん音楽ジャンルによってもその傾向は違ってきます。ヒッピホップですとやはりMCやDJがガッツリ顔を出しまくる傾向が強いですし、テクノやエレクトロニカですと前述のプログレッシブロック的な傾向が強く、抽象的なジャケットアートが多い気もします。まぁとにかく、「非実在のジャケットアート」を大量生産するにあたって、その全てがイラストや抽象的なデザイン、風景写真というわけにはいかないわけですよ。どうしてもその(架空の)アーティストの姿というのはジャケットにある程度の比率で混ぜ込まないとリアリティが出ない。だがしかし、世の中には肖像権というものがござんして、どこかで盗撮してきた人を好き勝手アーティストに仕立てあげるなんていう外道な行為はお天道様が許さねぇ(そりゃそうだ)。ということで、まずは自撮りでなんとかしようとしました。自分の顔だったら切ろうが貼ろうが破こうが文句はあるめぇ。

画像8

これは全部自分の顔を使ったジャケットデザインです。(結果ボツデザインにしたのでゲームには採用されてません)。しかしながら、自分の顔をphotoshopで唸りながら加工するのは非常に気持ちの悪い行為で、その気持ち悪さにさっさと限界が来ました。しかも自分の顔だとどうやってもアジア人限定になってしまうではないか。ダメだ、誰かの顔が必要だ。色んな国の顔が必要なのだだ。私は悩みました。悩みすぎて赤ワインのボトルを一晩で空けたりもしました。吐きました。しかし紫のゲロをトイレにぶちまけているときに私の頭脳がとある記憶をはじき出したのです。

「たしか〜?人工知能が〜?ディープラーニング?とかいうので〜?存在しない人の顔を〜うんぬんかんぬん〜???」

そう、これが天啓だったのです。覚えてますでしょうか。2019年初頭にSNSでも話題になった「人工知能が実在しない人の顔を生成し続けるサイト」というやつを。その名も「thispersondoesnotexist.com」。このサイトにアクセスすると一枚の顔写真が表示されます。しかしこの人は存在しません。自動生成された顔なのです。ページをリロードすると別の顔写真が表示されます。そしてこの人も存在しません。もちろんその顔は、コーカソイド系、ネグロイド系、モンゴロイド系と人種の垣根を超えて生成されていきます。これだ、これを使えばいいのだ。私は口元のゲロを拭きました。

続いては権利関係の問題です。人工知能が自動生成した写真は誰かの創作物なのでしょうか?これについては法律関係を結構調べました。とりあえず私が当たってみたところ、人工知能による生成物が創作物か否か、著作権が発生するのか否かはまだ決定的な見解が無いというのが現状らしく、AIの「行為」が著作物の要件である「人の思想や感情を創作的に表現していること」を満たしているのかというとそうじゃないやろ、というのが今のところの落とし所なのかな、と。まぁこれについては今後どんどんと議論が活発になっていくと思います。既に俳句ひねるAIとか居ますからね。怖いわ。ということで私は「完全にホワイトではない」と認識しつつも、今回この非実在人物達に音楽家になってもらうことにしました。「thispersondoesnotexist.com」から怒られたら、反省した後に『ミューレンソウ』を贈ってみようと思ってます。

腹が決まったら続いてはアーティストっぽい写真が生成されるまで延々とリロードを繰り返す作業に入ります。「thispersondoesnotexist.com」のサイトで延々Command+Rを押し続けます。子供も大人も老人も出てきます。1枚0.5秒くらいのスピードでリロードを繰り返していくと、たまに「お、こいつミュージシャン面!」という人(人??)が出てきます。保存です。こうして写真をストックしていきました。いい感じの写真は手持ちの写真と組み合わせたり、加工したりしてジャケットアートとして完成させ、彼らは立派に「非実在音楽家」になっていきました。いくつか例をお見せします。

image-17のコピー

これをこうして〜どこかで撮ったステッカーベタベタの壁の写真と組み合わせて〜こうじゃ!!

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はたまた

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これをこうして〜アフロにして〜数年前に撮った螺旋階段の写真をねじまげて〜

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こうじゃ!!
これは写真に写っている非実在人物を、そのアルバムを発表したミュージシャンに見立てたパターンです。どうですかね?いそうじゃないですか?いるよねこれデトロイト辺りに。

続いてこんなパターンも。

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これをこうして〜ルーブル美術館で撮った像の写真と組み合わせて〜こうじゃ!!

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80年代のハードロックなんかでよくあるジャケットの傾向、「誰だか知らない女」パターン。で、よく見るとこの女性、頬にヒゲが生えているんですよ。AIによる自動生成なのでこういうものが生み出されることもあるわけですね。面白い。

こんな感じで、次々と非実在音楽家を生み出していき、そのいくつかは『ミューレンソウ』のカードになりました。彼らはどんな音楽から影響を受け、どんな音楽を奏でているでしょうか。彼らはサージェント・ペパーズの夢を見るでしょうか。そう、その想像こそが「ミューレンソウ」の源泉なのです。『ミューレンソウ』で遊ぶ際はぜひそんな音楽トークも交えつつお楽しみくださいな。

ゲームアイキャッチゲムマ2019秋

■『ミューレンソウ』ゲーム情報
・プレイ人数:3〜6人
・プレイ時間:約30分
・対象年齢:13歳以上

・ゲームマーケット2019秋(11月23日-24日)【F01-02】スペースにて発売。
※カラメルカラムは両日出展します。
・イベント会場特別価格:2,000円(税込)
※イベント後、Amazon等で順次販売を開始します。その際は2,591円(税込)になる予定です。
・取り置き予約受付フォームはこちら

その他、私のTwitterアカウント及びカラメルカラムの公式アカウントから随時情報を告知します。 #ミューレンソウ