モグワイ @mogwai_spiele
モグワイ /トマソン玩具です。
モグワイは主催の長谷川登鯉がアートや製造を担当して絶版創作ゲームのリメイクを行うサークルです。トマソン玩具はトリックテイキングゲーム専門のモグワイの別ブランドです。よろしくお願いします。
- アートワークについて セブンスナイト
- 2019/5/10 17:46
今回は全アートワークを担当した『セブンスナイト』のデザイン作業について書きます。
人気作『シャドウレイダース(旧シャドウハンターズ)』などを制作された池田康隆さんが、2012年のゲームマーケット大阪で発表した『セブンスナイト』初版は、自分のボードゲームアートワーク担当作2作目です。これを書いているのは2019年。あれから7年経ったという事で三版(2019vr)を刷る事にしたのですが、その時に変更した部分を簡単にまとめてみます。いまだ手探りで作業しているので、このまとめが『正解』だとは考えていません。まだまだ遊びやすく魅力的なデザインを模索していきます。
まず『セブンスナイト』について
男の子の妖精と女の子の妖精になって、フェアリーサークルをどちらがたくさん作れるかを競います。妖精の移動力と、場に置かれたフェアリーサークルへの影響力を表す0から5までの数字が書かれたカードをそれぞれ3枚持って、お互いのカードの山が無くなるまで、せっせと自分のサークル作りに励む、簡単なハンドマネージメントとエリアマジョリティの二人専用カードゲームです。
【内容物】
・フェアリーカード34枚(2色各17枚)
・妖精駒1つ
・フラワータイル7枚
・ルール(カード3枚)
・カードの表面 について
このゲームのカードは『場に並べて合計値を比べあうもの』なので、プレイヤー全員が確認しやすいように移動力&影響力数値(このカードでは4)を大きめに描くべきです。
2012vrで既に大きめに描いていたので、2019vrでもそこは変更せず『この数値のカードはカード全体のうちの何枚なのか』を表すアイコンを追加しました。手札に持っても隠れない位置の①にカードのシルエットを配置する事にしました。右利きの人が複数枚カードを持つ場合、左上の角が見えるように重ねて手に持つ事が多いと思います。枚数を数字ではなくアイコン数で表しているのは、移動力&影響力数値と混同しないように。移動力&影響力数値ほど重要な情報ではないので『数える』アイコンとしました。初プレイではカード枚数を気にせずに遊んでほしいので、控えめなデザインにしています。
変更は枚数アイコンの追加だけではなく、左利きの人でも遊びやすいよう右側上の角の②の位置に移動力&影響力数値を追加しました。
これも控えめなデザインなのですが『イラストを通じて世界感を楽しむタイプの人が遊ぶ事が多いゲーム』と考えたからです。手に持つカードの枚数が多いゲームであれば左右同じように表記したと思います。
トランプのようにカードの下部分にも数字やアイコンを配置していないのは『絵が正位置になるように場に並べてほしい』からです。四隅に数字が描いてあれば手札の上下を整える必要が無く遊びやすくんですが、描いた絵を見てほしいという欲を優先しました。
・カードの表面 について
2012vrのコンポーネントにはカードリストカードが存在しました。当時「便利かな?」と思って作ったものでしたが、リストがあると自然と『カウンティング』しながら遊ぶ人が多い印象でした。
それは、ゲームシステムをデザインされた池田さんのコンセプトと比べると、少し堅苦しい遊びを初プレイ時から意識させてしまっているのかもしれない、と感じたので2019vrではカードリストカードは廃止しました。代わりにカード裏にそれとないデザインの①をあしらってみました。自費出版だからできるチャレンジです。
カードシルエットは表面同様、カードの枚数を表しています。
カードシルエットの上に重なっている十字星は移動力&影響力数値を表しています。
移動力&影響力数値2のカード(十字星が2つ)は5枚(カードシルエットが5つ)です。
②の位置に各妖精のシルエットに配置しています。
創作ゲームの印刷は「カードは透けることはない!」と言い切れないので、雰囲気作りも兼ねて妖精のシルエットをカード端に配置してみました。カード裏に複雑な模様が描かれていると万が一カードが透けてしまっても『ゴチャゴチャしてて表面の数字が読みにくくなる』という経験を、とあるゲームのカードデザインをしたときに学びました。ちなみに、昔のカードゲームは出版社ロゴが斜めにズラーッと配置してあるデザイン多いですね。透け対策はどうかは知りませんがあのデザイン、好きです。
・タイル表について
2019vrはフェアリーサークルカードを、カードからタイルに変更しました。
これは7年の経験で印刷の知識(印刷所の選択肢)と、自分の発想が広がった結果です。カジュアルなゲームなので場所をとらないよう小ぶりにするべき…けれどモノとしての満足感も欲しい…と悩んで、サイズを微妙に変えた試作品を何点も用意して、ちょうどよいサイズを確認しました。
このゲームは『タイルの枚数を多く獲得したプレイヤーが勝ち』なのですが『獲得した枚数が同じだった場合には描かれた数値の大きいプレイヤーが勝ち』というルールです。
ですが、『獲得したタイルに書かれた数値の合計値が大きいプレイヤーが勝ち』と間違われる事が多いです。インストでも充分注意して伝えるようにしているのですが、デザインからも間違いを減らせないかと考え、数字が大きいと重要なものとして意識してしまいがちなのでは?と思い、2019vrでは①のように数値を小さくしてみました。
数字が大きいほど花が多くなり『豪華』に見えるのも間違える要因の一つかもしれないのですが、かといって全てのタイルの花の量が同じなのも味気ないので、数字の変更のみとしました。
・ルールカードについて
2012vrではカードと同じサイズになるように、説明書を蛇腹状に折っていました。折る前には、両面プリントする作業と上下左右の余白部分をカッターで切り落とす作業もあります。そうしないと箱に入らなかったので仕方がなかったのですが、この作業をゲームの数だけ繰り返すのはなかなか大変だったので、2019vrではカードにルールを書く事にしました。
カードタイプの説明書があまり好まれていない(小さくて読みずらい)のは知っていたので、内容物とプレイ方法と終了条件が同一のカードに配置されないようになど、読みやすいレイアウトにしたつもりです。
・変更しなかった部分
変わらなかったのは、ちょっと珍しい丸い箱とオリジナル造形の妖精駒です。
妖精駒は3Dプリンターで出力する事も検討しましたが、現状ではゴム型を作って抜く前回同様の製造方法のほうが「綺麗なコマが作れる!」と原型と製造担当の井上磨が言うので、今回も駒の手作りをお願いしました。ゴム型は一定数使用すると破損してしまうので、予定数の駒を作り終えるまでに3つのゴム型が必要になりそうです。
2012vrの初期版では赤い駒もありましたが、塗料を混ぜると色ムラ品も少し出来てしまうので、今回も混ぜ物無しの白い駒。つかみやすい形状はそのままです。
丸箱も業者に印刷をお願いするつもりでしたが、あてにしていた業者が廃業していた為、2012vrと同様に黒い箱を購入しています。ステッカー印刷で刷った各面のシールを上面、側面、下面に貼れば完成です。
いつもお願いしている印刷所さんに「丸箱は従来の四角箱に比べると重みに弱い。」と教えていただいたので、輸送や保管に気を使っています。
今回のまとめは以上です。
何か役に立つ部分があれば幸いです。
今作は個人サークルモグワイでのアートワーク作業ですが、長谷川登鯉(@bodogedama)としてサークルさん、企業さんからご依頼いただいてボードゲームのアートワークを担当しています。
ご依頼はモグワイアカウント(@mogwai_spiele)のDMや、個人サークルのメールフォームからご連絡下さい。
また、ボォFCというポッドキャスト(ウェブラジオのようなもの)もやっています。普段はボードゲームと総合格闘技の話をしていますが、on Mixシリーズでは、ボードゲーム制作者さんと、ボードゲームとの出会いやゲーム制作の経緯などについてお話ししています。
どちらもよろしくお願いします。