暁ゲーム工房

「暁ゲーム工房」です.
様々な一次創作者様の作品をアートワークに,ボードゲームを製作する個人サークルです.

当日販売するボードゲームは「Creative Tavern」というタイルプレイスメントゲームです。
不朽の名作「プエルトリコ」のシステムをシンプルに再構築しました。

「ヴァリアブル・フェイズ・オーダー(フェイズ選択システム)」と呼ばれるクッソ複雑なメカニクスの入門編として製作しました。

拡張版【Chef's Special】の設計思想
2019/2/7 19:03
ブログ

拡張版のコンセプト
本体「Creative Tavern」は“タイトな”アナログゲームでした.

本体と対照的に拡張版「Chef's Special」は“ルーズな”展開を与えます.

「Creative Tavern」,時に乱数の差を乗り越えられずにゲームが終わってしまうことがありました(どんなゲームでも避けられない宿命ですが).これは“1手の誤りで勝敗が決する抜き身の真剣勝負”として設計された本作では特段の注意を払って遠ざけるべき問題です.従って,拡張版では初期乱数の差をちょうど埋めるだけの逆転要素が求められました.

しかし,乱数的な逆転要素は思考の底まで沈む面白さを否定します.ジャンケンでどの手を出すか悩みますか? 根拠を持って相手の手を予測できますか? それは貴方が信じたいと自分を説得しているだけではありませんか? 結論の出ない堂々巡りを心理戦だと“錯覚”させるゲームを,我々は好みません.思考の底は真実の光で満たされてあるべきです.我々はゲーム制作において「貴方の予測は誤りです.なぜならば……」といった説明可能性を何よりも重く見ています.故に,逆転要素は公開情報もしくは推論可能な状態でプレイヤーへ提供されなければなりません.

こうした点を注意深く守りながら,拡張版「Chef's Special」は制作されました.それでも我々が拡張版を“ルーズ”と呼ぶのは,プレイヤーの自己都合の多様化に成功したからです.

プレイヤーの自己都合とは,見えている情報だけでは決して辿り着けない合理的行動です.貴方だけの得点条件,と言い換えても良いでしょう.「Creative Tavern」では見えている情報が多すぎたため,合理的行動が全てのプレイヤーで同じになっていました.拡張版の導入によって,プレイヤーは互いに異なる戦略に基づいて行動するようになるでしょう.(あいつは客も見ずに「肉」を集めているぞ,こいつは移動ばかりだ,何故だろう?)

ただしこれだけは忘れないでください.

「Creative Tavern」は“タイト”かつ“ルーズ”なプレイヤーが勝つゲームだと.

付録:“タイトな”と“ルーズな”の意味と単語の表す概念

英和辞典・和英辞典 - Weblio辞書 によればそれぞれ以下の概念を指す言葉です.

タイト(形:tight):きつい、空気の漏れない,(概念)詰まってすき間のない

ルーズ(形:loose):自由な、ばらの、ゆるんだ,(概念)束縛されていない
f:id:Akatsuki-No-9:20190205131312j:plain出典:https://ejje.weblio.jp/content/tight