Laro Games
- 『Koi Breeders』デザイナーズダイアリー
- 2026/9/9 1:48
『Koi Breeders』デザイナーズダイアリー
こんにちは!
**『Koi Breeders』**のデザイナー、Justin Aguinaldo(ジャスティン・アギナルド)です。
ゲームマーケットが近づいてきたので、今回は『Koi Breeders』がどのように生まれ、最初のアイデアやプロトタイプから現在の形になっていったのか、その制作過程を少しご紹介したいと思います。
このデザイナーズダイアリーでは、ゲームのアイデアがどこから始まったのか、テストプレイを通してどのように変化していったのか、そして開発中にどんなことを考え、どんな課題に直面したのかについてお話しします。
『Koi Breeders』の舞台裏を、少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
すべての始まり
最初に考えたのは、私の好きなメカニクスであるトリックテイキング、バッグビルディング、そしてオークションをひとつのゲームに組み合わせることでした。
同時に、普段からボードゲームを遊ぶ人だけでなく、あまり遊ばない人にも楽しんでもらえるゲームにしたいと思っていました。軽くて、わかりやすく、誰でも気軽に遊べるゲームです。
私は昔から錦鯉が好きでした。さまざまな品種や模様があること、そしてたくさんの鯉が池を泳いでいる姿の美しさに、とても惹かれていました。
また、錦鯉の繁殖や、その周りにあるビジネスの世界にも以前から興味がありました。
そしてある時、「これはゲームのテーマにできるのでは?」と思ったのです。
開発を進めていく中で嬉しい驚きだったのは、テーマとメカニクスがとても自然につながっていったことでした。
トリックテイキング、バッグから鯉を獲得すること、そして獲得した鯉を使って報酬を競うこと。
それぞれが別々のメカニクスとして存在するのではなく、すべてが「鯉のブリーダーになる」というひとつの体験の中に収まっていきました。
開発
開発中に特に気にしていたのは、複数のメカニクスをどうすればひとつのゲームとして自然につなげられるか、そして同時にテーマ性を保てるか、ということでした。
何度も自分に問いかけました。
3つのメカニクスをどうやってつなげる?
トリックに勝ったプレイヤーには、どんなメリットを与える?
どうすればゲーム全体のバランスを取れる?
プレイヤーがひとつだけに集中せず、3つのカテゴリーすべてに参加したくなるようにするには?
『Koi Breeders』の開発の多くは、ゲームを必要以上に複雑にすることなく、これらの問いに答えていく作業だったと思います。
トリックに勝つことが目的ではない
『Koi Breeders』のトリックテイキング部分は、意図的にとてもシンプルにしています。
基本はマストフォローで、最も高いランクのカードがトリックに勝ちます。
トリックテイキングそのものには、特別に革新的な仕組みがあるわけではありません。
でも、それは意図したものです。
トリックテイキングをほとんど遊んだことがない人でも、『Koi Breeders』を気軽に遊べるようにしたかったからです。
このゲームではトリックテイキングだけでなく、いくつかのメカニクスが組み合わさっています。そのため、カードプレイの部分はできるだけシンプルにすることにしました。
言ってみれば、トリックテイキングはゲームを構成するひとつのピースにすぎません。
もちろんトリックに勝つことで有利にはなります。
しかし、最も多くのトリックを取ったプレイヤーが必ずしもゲームに勝つわけではありません。
大切なのは、途中で獲得した鯉をどう使うかなのです。
「Harvest Season」のデザイン
トリックに勝つこと自体が最終目的ではないとしても、勝ったプレイヤーにはきちんと意味のあるメリットが必要です。
そこから生まれたのが「Harvest Season(収穫シーズン)」です。
各トリックの勝者は、池を表すバッグから鯉ミープルを2匹引きます。そして、もう1人のプレイヤーも1匹引くことができます。
2人目にも鯉を獲得する機会を与えたのには理由があります。
トリックに何度も勝ったプレイヤーだけが鯉を大量に獲得するゲームにはしたくありませんでした。
毎トリック合計3匹の鯉が池から出てくることで、各プレイヤーがある程度のコレクションを作ることができ、その後、獲得した鯉を3つのカテゴリーにどう振り分けるかという面白い選択が生まれます。
せっかくそこまでゲームを進めたのに、手元に鯉が2~3匹しかいなかったら、ちょっと寂しいですからね!
ただし、Harvest Seasonは最初から現在の形だったわけではありません。
初期バージョンでは、トリックの勝者が池から鯉を2匹引き、さらにリードされたスートの中で最も低いランクのカードを出したプレイヤーが1匹引く、というルールでした。
そして、そのトリック全体で最も低いランクのカードを出したプレイヤーが、次のトリックをリードしました。
アイデアとしては気に入っていました。
高いカードはトリックを取るために重要で、低いカードにも別の役割がある。
ところが開発を続けるうちに、別の問題に気づきました。
高いカードと低いカードばかりが強くなり、中間のカードはただ捨てるだけのカードになりがちだったのです。
これは、私がプレイヤーに感じてほしい手札の面白さとは違いました。
そこで、追加の鯉を獲得する仕組みを変更し、中間ランクのカードにも活躍できる機会を増やしました。
これによって、より幅広いカードに意味を持たせることができました。
これは『Koi Breeders』を開発する中で学んだ、初期の大きなポイントのひとつです。
トリックテイキング自体のルールがシンプルでも、トリックの結果にどんな報酬を与えるかによって、プレイヤーが手札のカードに感じる価値は大きく変わるのです。
Koi Show、Collector、Koi Dealerのデザイン
個人的には、ここが『Koi Breeders』の一番の核だと思っています。
ここからプレイヤーは本格的に戦略を考え、相手が何を持っているかを推測し、ときにはちょっとしたブラフも使うようになります。
私にとって、間違いなくゲームの中で最も面白い部分です。
例えば、こんなことを考えるかもしれません。
「一番価値の高い鯉をKoi Showに出すべきかな? でも、誰かがもっと価値の高い鯉を持っていたら……?」
あるいは、
「たぶん誰かが一番価値の高い鯉を持っている。でも、それをShowに出すのはあまりにも分かりやすいから、逆に出してこないかも?」
それとも、Showを諦めて、
「いっそのこと、全部Koi Dealerに回そうかな?」
最初は自分のコレクションが一番だと自信を持っていても、他のプレイヤーを見ているうちに、だんだん不安になってくることがあります。
私は、この「本当にこれでいいのかな?」という感覚がとても好きです。
報酬システムのデザイン
もうひとつ、このゲームの報酬システムで面白いと思っているのが、カテゴリー内で同点になったときの処理です。
2人以上のプレイヤーが同じ価値になった場合、そのプレイヤーたちはその賞の対象から外れ、次に高いプレイヤーへ賞が移ります。
これはゲームバランスのためでもあります。
「自分は一番価値の高い鯉を持っていないから、このカテゴリーには参加しない」と簡単に諦めてほしくありませんでした。
例えば、Koi Showで1人のプレイヤーが1点の鯉を出し、他の3人が全員3点の鯉を出したとします。
3点の鯉を出した3人は同点なので互いに打ち消し合い、なんと1点の小さな鯉がShowの勝者になります。
つまり、弱い立場だからといって、必ずしも不利とは限りません。
最も強い鯉を持っているからといって、必ず勝てるわけではない。
他のプレイヤーが何をするのかをうまく読めば、思いがけない勝利をつかむこともできます。
やっぱり、アンダードッグが勝つ瞬間って楽しいですよね!
Koi Show
Koi Showは、ブリーダーたちが自慢の錦鯉を持ち寄って競う品評会を表しています。
考え方はとてもシンプルです。
自分の最高の鯉をShowへ。
ただし、出品できる鯉は1匹だけ。
どの鯉を出すのか、そして他のプレイヤーが何を出してくるのかを予想するところに、このカテゴリーの面白さがあります。
Collector & Koi Dealer
CollectorとKoi Dealerは、実際の錦鯉ビジネスについて調べている中で興味を持ったことから生まれました。
世界中から多くの人が日本を訪れ、錦鯉を購入します。
自分の池に迎える特別な鯉を探す個人のコレクターもいれば、ビジネスとして多くの鯉を仕入れるプロのディーラーもいます。
この違いをゲームの中でも表現したいと思いました。
Collectorは、少数の鯉を厳選して集める存在なので、このカテゴリーに必要なのは2匹だけです。
一方、Koi Dealerは、より多くの鯉を仕入れて販売するビジネスを行っているため、3匹以上の鯉が必要です。
こうして、テーマ的にもメカニクス的にも異なる3つのカテゴリーが生まれました。
Koi Show — 1匹
自慢の1匹を出品する。
Collector — 2匹
少数の価値あるコレクションを作る。
Koi Dealer — 3匹以上
ビジネスのために、より大きな鯉のグループを作る。
そして何より重要なのは、プレイヤーが苦労して獲得した鯉を、この3つのカテゴリーに振り分けなければならないことです。
同じ鯉を複数のカテゴリーに使うことはできません。
つまり、ひとつを選ぶということは、別の可能性を諦めるということでもあります。
なぜ3シーズンなのか?
『Koi Breeders』は3シーズン、つまり3ラウンドでプレイします。
3シーズンにすることで、ひとつのシーズンでうまくいかなかったとしても、十分に挽回するチャンスがあります。
それでいて、ゲーム全体は軽く、比較的短い時間で遊べます。
そしてもうひとつ、3シーズンにした理由があります。
他のプレイヤーのことを知る時間が生まれるからです。
最初のシーズンが終わると、他のプレイヤーが3つのカテゴリーにどうアプローチするのか、少しずつ見えてきます。
いつも一番強い鯉をShowに出す人がいるかもしれません。
逆に、分かりやすい競争を避けて、Dealerを狙う人もいるかもしれません。
2シーズン目、3シーズン目になると、目の前の鯉だけを見ているわけにはいきません。
テーブルを囲む他のブリーダーたちと、それまでに見えてきた彼らの「クセ」も考えるようになります。
『Koi Breeders』をどんなゲームにしたかったのか
何よりも、『Koi Breeders』を誰でも楽しめるゲームにしたいと思っていました。
家族みんなで遊べるゲーム。
普段からたくさんボードゲームを遊ぶ友人とも、あまりボードゲームを遊ばない人とも、一緒にテーブルを囲めるゲーム。
難しそう、怖そう、と思われるゲームにはしたくありませんでした。
トリックテイキングは意図的にシンプルにしています。
色とりどりの鯉は、実際に手に取って楽しめます。
ルールもできるだけ分かりやすくしています。
でも、そのシンプルさの中に、戦略を考えたり、相手の考えを読んだり、リスクを取ったり、ときには誰も予想しなかった勝ち方をしたりできる余地を残したかったのです。
軽い。でも、考えどころはしっかりある。
それが、私が『Koi Breeders』で目指したゲームです。
ゲームマーケットでお会いしましょう!
日本のゲームマーケットに『Koi Breeders』を持っていけることは、私にとって特別な意味があります。
錦鯉は日本の文化と深いつながりを持っています。その錦鯉をテーマにしたゲームを、日本の皆さんに遊んでいただけることを、とても楽しみにしています。そして正直なところ、少し緊張もしています!
もしゲームマーケットで『Koi Breeders』を遊ぶ機会がありましたら、ぜひ鯉を育て、他のブリーダーたちと競い合い、そしてもしかすると、小さな1点の鯉がまさかのKoi Showチャンピオンになる瞬間も楽しんでいただけたら嬉しいです。
『Koi Breeders』が生まれるまでの話を、最後まで読んでいただきありがとうございました。
ゲームマーケットで皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!
