The NAME https://x.com/HIDENNAME0430
己を縛るルールはたった一つ! カードを使って人物を当てにいく。ただそれだけ………! 東京大学、千葉大学、筑波大学、大阪公立大学大学院に在籍する大学院生らにより考案された新感覚の人物あてカードゲーム、THE NAMEを販売するサークル、The NAMEです!!!!!
- 第1回 THE NAMEはなぜパーティーゲームなのに、物理モチーフなんてトンチキを起こしたのか?(全8回)
- 2025/11/4 6:02
みなさん、初めまして、The NAMEのカワグチです。The NAMEではゲームデザイナーのorigami takumiと二人三脚で運営しています。
さて、今回初出展となるTHE NAME。 試遊で遊んでくださった方も、この記事を読んでTHE NAMEを知ってくださった方もみなさん、THE NAMEに興味・関心を持ってくださり誠にありがとうございます。
ゲームマスターが思い浮かべた人物をプレイヤーがカードを駆使して当てにいく、戦略型パーティーカードゲームと名打っているわけですが、カードのモチーフになっているのが全て物理用語です。
例を挙げれば、「ダークエネルギー」、「ガンマ線バースト」「ビックバン」「生成消滅演算子」etc...
は?物理用語?パーティーゲームなのに?なんでそんな難しい言葉使っているの?
その疑問は非常に、ごもっとも。パーティーゲームというのは基本的には飲み会の余興とかで適当に遊んでもらうものであり、そんなライトなゲームに物理用語、より正確に言えば、宇宙物理に関連した用語をつけるって正気の沙汰ではない。
だが、東大理物、飛び級もしてるし、落語の全国大会に予選通っていつの間にか出場してたり、NHKで折り紙の監修をし、スピーチコンテストがあれば大体1位を取る我らが誇るゲームデザイナーが考えたことだ。きっと意味があるに違いない。
私は酒好きな彼を饒舌にさせるために、仕方なく居酒屋に連れて行き、彼の好きなビールを飲ませ、酒の飲めない私は烏龍茶で誤魔化している中、真意を尋ねた。彼の返事はこうである。
「えっ?考えているわけないじゃん!!だって元々このゲーム、研究室の飲み会の余興のために作ったゲームだよ?まぁ、販売するにあたって宇宙物理の用語を見知らぬ人にもわかるような感じにしたけどね?お前も知ってるだろうけど、最初「ビッグバン」が「初期質量関数」だったしね。宇宙物理やってないとあまりにもわからない言葉にしてたしね〜。ああ、そうだ、これね、ゲームマスターを観測者といってて、プレイヤーを解析者っていってるじゃん。これ、どうしても宇宙物理をフレーバーにしたかった時に、あるテストプレイ会でゲームマスターをGMってカードとかに書いてたんだけど、縦書きでGMって書いてたから、日本語にしたいよねって話題になって、その時に参加者の一人が、宇宙だし『観測者とかよくない?』っていったことから来てるんだよね。いまだにその人には感謝だよ〜。フレーバーとしてはおそらく唯一無二だし!」
かなり適当な男である。だが、案外帳尻を合わせている。
ゲームデザインもそうだが、カードをデザインしているのも同じ男である。このため、カードの名前を決めたのも当然この男だ。このゲーム、カードには2種類あり、スキルカードという、人物の情報を知る上で手助けるカードが全8種類ある。それぞれの名前と効果には密接な関係がある。せっかくなので、ゲムマブログだ。それぞれどんな効果のカードにどんな物理用語を何故つけたのか?8枚あるなら、全8回で連載してもいいかもしれない。
というわけで、今回から全8回にわたってスキルカードの名前の由来となった物理用語の解説という、ゲムマブログで、ボードゲームの説明をするはずのところで、物理用語の説明をするというトンチキをやっていこうと思う。
ただ、擁護するなら、とあるテストプレイ会で、「せっかく物理用語をフレーバーテキストにするなら、その説明をしっかり聞きたい、刺さる人は絶対刺さる」というありがたいお言葉をいただき、それならとやる気になったわけだ。
さて、第1回は「ダークエネルギー」を特集しよう!!
ダークエネルギー(捨札復活)

wikipedia : https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC
天文学辞典:https://astro-dic.jp/dark-energy-2-2/
捨て札の名から好きなカード1枚を復活させられるスキルカード。
ダークエネルギーというのは宇宙全体の70%以上も占める謎のエネルギーである。宇宙を加速膨張させる、重力とは真逆の向き、斥力として働くものだ。
実はこのダークエネルギーの歴史はアインシュタインの一般相対論に遡る。アインシュタイン、史上最大の物理学者の一人だが、彼2は生前、「人生最大の過ち」と自分を戒めた出来事、「宇宙項の導入」というものがある。
彼は一般相対論を1915年に打ち立て、アインシュタイン方程式と呼ばれる方程式を導出した。この方程式をある条件のもとで解くと、フリードマン方程式という別の名前に変わる。この方程式、宇宙が時間とともにどのように進化していくかを表した式になっている。方程式なので、もちろん解が存在する。実はこの解は、宇宙が時間とともに縮んでいき、最終的には宇宙が点になって消滅してしまう、というものだ。
アインシュタインは宇宙が収縮してなくなるなんて、信じたくなかった。そこで、縮まないように、宇宙を膨張させるエネルギーとして「宇宙項」を無理くりに導入した。
当然、恣意的なので、物理的に意味があるか?とか、そんなことしていいのか?とは別の問題である。みなさん、物理って案外みんな適当なことしてるんですよ。
さて、こんなものを導入して、宇宙ってのは膨張も収縮もしないだ、宇宙は変わらず同じ大きさなんだと、信じてやまなかったアインシュタイン。数年後に見事、エドウィン・ハッブルの観測により、ハッブルの法則というのが発見されます。遠くの銀河を観測すると、時間とともに遠ざかっているではないか?宇宙は膨張している!!!とわかったのだ。アインシュタインは恣意的に物理的に意味のない「宇宙項」なんてものを導入したことをひどく後悔し、「人生最大の過ち」と呼んだのだ。こんなことが人生最大の過ちなんて、結構アインシュタインってのはいい人生歩んでたりする。
じゃあ、過ちのまま終了したかというと、実はそんなこともない。
1998年のことである。Ia型超新星爆発という、標準光源を用いて、宇宙がただの膨張ではなく、加速膨張していることをアメリカのチームが観測から明らかにした。実はこれ、かなり衝撃的なことで、宇宙が膨張するというのは、まぁ、フリードマン方程式の解の1つ(さっきは収縮と言ったが、膨張解もある。逆に定常解がないことが一番重要なのだ)にあるので、理論と観測ちゃんと合いましたね、ちゃんちゃんで終わるのだが、加速膨張というのはまた別の話だ。だって、加速するということは、加速させる何かエネルギー源が必要なわけで、それって何?という当然の疑問が湧き起こる。
でも、2011年にノーベル賞までとった画期的な観測から30年ぐらい経っているが、その起源を知るものは誰もいない。未知のエネルギーということで、「ダークエネルギー」と呼んだわけである。じゃあ、これをどうやって数式で描こうかしら?となるわけだが、そもそも起源が未知なので、厳密に書けるわけでもなく、何かしらエネルギー源を恣意的に数式上に組み込んで計算しなきゃいけない。
あれ、恣意的って言葉、さっき散々聞いたような?フリードマン方程式に、収縮しないよう、斥力として加えた項があったような?
そう!宇宙項だ!
宇宙の加速膨張の観測により、存在が確認された未知のエネルギー、ダークエネルギー。
ダークエネルギーの数学的な表式として、宇宙項はぴったりであると、80年越しに「復活」したのだ。
ようやく伏線回収ができた。
結構回りくどいところから、カードの効果を持ってきたりしているので、目を凝らしてみてほしい。
ちなみに、カードイラスト、右下に望遠鏡が描かれているが、アメリカアリゾナ州にある地上望遠鏡 DESI (Dark Energy Spectroscopic Instrument)を描いたものである。この望遠鏡、ダークエネルギーの起源解明を大目標に建設された望遠鏡であり、2021年から観測が開始している。
DESIのwikipedia : https://en.wikipedia.org/wiki/Dark_Energy_Spectroscopic_Instrument
既にHubble tensionを解決するかもしれないだとか、internalにはさまざまなことが囁かれており、最新の情報を物理学者に提供している超重要な望遠鏡となっている。
こんなちっぽけな望遠鏡が宇宙の成り立つ、起源を解明するかもしれない。
ドキドキ、ワクワクをカードを通して感じてもらえると、嬉しい限りだ。
