ABC @Boardgames_ABC
Aesthetics, Boardgames & Circles 略してABCです!
ボードゲームは遊びの魔法円を超えて芸術へ!
ゲームマーケット2025秋両日試遊ありではじめて出展します
『あふはあふかは 』を販売します
テーマは古今和歌集×1等星!3人専用の協力・対決ゲームです!遊ぶほどに「ままならない」が加速する!
- 『あふはあふかは』ができるまで
- 2025/9/5 8:01
おはようございます。白駒です。
テストプレイをした方に、時々、どうしてこんなゲームつくったんだと聞かれます。
システムから作るのか、あるいはテーマからつくるのか、この問いに一言で答えるのが僕には難しい。
今日は、そんな僕のゲーム作りの過程を説明してみたいと思います。
冬の夜のことでした。
道を歩いているとき、ふと目の前の空にオリオンが輝いていました。
オリオンはいつも僕を励ましてくれる星座です。
はじめてオリオンを見ることができたのは大学生の時でしたが、それ以降秋が来るごとに、僕はオリオンを待ちわびます。大学生の時までオリオンを見ることができなかったのは、おおよそ目が悪かったからでしょうが、星を見るのに適した環境に身を置いていなかったのもあるかもしれません。秋から冬にかけて、夜遅い時間に外を歩くときには、オリオンはとてもわかりやすく方角を教えてくれます。
その夜は、オリオンの周りにも星々が見えました。オリオンを囲う六角形。その夜、僕は冬のダイヤモンドを知りました。これまた生活環境も変わっていたので、冬のダイヤモンドが見えるようになった理由はわかりませんが、これまで、冬の夜空をひとりさみしく駆け抜けていると思っていたオリオンにも、仲間がいたというのは僕にとってとても衝撃的なことでした。
当時、僕はとあるゲームの制作に取り組んでいましたが、一向に出口の見えない作業の沼をもう何年もさまよっていました。
そうだ、いったん別のゲームを作ろう。それは星のゲームだ。星々のはるかなる出会いのゲームだ。
突然、そう思いました。
そもそも、僕は作りたいゲームのアイデアをシステムやモチーフではなく、主に主題によってメモにのこすことがあります。とはいえ、もちろんその場合でも、主題とともにシステムやモチーフについて触れていることがほとんどです。
そういった主題の一つが「出会い」でした。人と人との出会いはまるで夢のようなもので云々という、小説や映画であればよくある、あの主題をゲームで表現したいと思っていました。それぞれ異なる人間が、あまりにもたくさんいる。だから、人間は出会うのが難しい。そして、出会った人と関係を続けるのはもっと難しい。これが、この主題に関する僕の見解です。ここには大きな壁がありました。もし、人間をゲームで扱うならば、それぞれ異なる人間たちのほんの一部から属性を抽出していくことになる。それは、見解を適切に表現しているといえるだろうか。この壁ゆえに、この主題はしばらくの間、メモ帳の隅に放置されていたのです。
冬のダイヤモンドを見た夜、僕はメモ帳の隅に追いやられていたアイデアを拾い上げたのです。それは同時に、その時取り組んでいたゲームに対して、「少し休んでもいいんだよ」という自分自身からの声でもありました。
そうはいっても、星はいくらでもあります。当時の仮題は「星の数ほど」でした。「星の数ほどある中で、いったい誰と出会えというのだろう」というような意味合いでしたが、同時に「そもそも僕はどの星をこのゲームに取り入れればよいのだろうか」という悩みそのものでもありました。
一方で、人間の場合にぶつかっていた壁は、自然と解消されるように感じました。確かに、星を扱う場合においても、ほんの一部を、なんらかの属性を抽出して扱うことは明らかでした。けれども、僕自身の感覚として、違和感を感じない。よくよく考えてみると、これは作品の表現の問題ではなく、作品の見え方の問題であるということに気がつきました。どんなルールでも関係性を切り取って抽象化して表現します。必ず捨象される性質があり、扱いきれない大きな集団があります。一方で、見え方の問題として考えたとき、人間を扱う時には「僕たちはいない」と疎外を感じるプレイヤーの存在を想像しました。星であれば、「あの星は私だ!」と星々の動きに共感する人が多数派ということにはならないような気がしました。疎外感が壁の正体であり、ぶつかっていた壁は星を扱うことによって適切に乗り越えられたと感じました。
ここで、星についての調査が始まります。
冬のダイヤモンドは全て1等星であること、1等星は全部で21あることを知ると、今度は21の一等星についての物理的性質と伝承の双方をまとめはじめました。このあたりで、星の名前のかかれたカードを出していってペアを作るゲームというシステムの基本部分(ゲーム中繰り返される経験)は浮かび上がっていて、どの性質を取り入れるかや何枚同時に出すかといった要素の検討が始まりました。星の名前を書いただけのモックをつくり、カードめくりをやってみます。はじめは2枚ずつ10ラウンドも検討しましたが、ほどなくして3枚ずつ7ラウンドのほうが都合がいいことが明らかになりました。使われない札によるランダマイズ機能はとても魅力的でしたが、それ以上に2枚ずつ出すゲームでの、主題に沿った目標設定や3人プレイでの処理方法が難しく感じられました。
ベガとアルタイル(つまり七夕)に改めて注目し始めたのは、その後のことです。星の性質を様々確かめていくと、この2つの星は、相対的には非常によく似た性質を持つ星であることに気がついたのです。これがゲームの肝になると思いました。
もともと、出会いのゲームは3人以上で遊ぶゲームとして作ることを想定していました。これは僕自身の主題理解によるものでした。3人専用というアイデアも想定にありましたが、これを決定したのも七夕との関係においてでした。
「七夕(たなばた)」は中国の七夕と日本のたなばたが習合したものといわれています。中国の七夕には牽牛(彦星)と織女(織姫)を戒める存在として天(天帝)が登場します。天は中国思想において世界そのもの、あるいは世界秩序そのものを表す語です。天は天の川で二人を分かち、あるいは二人の出会いを導きます。天は秩序、言ってみれば2人を取り巻く環境が人格的存在としてあらわれたものであると僕は理解しました。2つの星と1つの秩序。これによって、僕は『あふはあふかは』を3人専用ゲームとすることに決めました。
七夕といえば、日本においても古来から親しまれてきた行事です。古くは和歌にも詠まれてきました。今度は、和歌の探索に進みはじめました。七夕に限っていえば、『万葉集』にも『古今集』にも、それ以降の多くの歌集でも歌が詠まれています。『万葉集』ではなく『古今集』を選んだ理由としては、奈良時代の『万葉集』は、より解釈が難しいものも多くなりがちであり、歌集全体の和歌の数も膨大であるため、このゲームを古典鑑賞の入り口とする場合に適切ではないと考えたからです。せっかく取り入れるモチーフは、興味を持った人に少しでも親しみやすいものでありたいと考えました。これは、同時に僕自身の探索と解釈にもやさしいことも意味しました。
ちなみに、日本の古典世界では、彦星自らが梶を漕ぎ川を渡るようです。地域や時代によって中身に違いがあるのが、こうした伝承の面白いところです。
属性として取り入れる星の性質が決まり、『理科年表』によって可能な限り裏どりをしました。七夕の要素も加わることになりモチーフも固まっていきます。3人×7ラウンドという全体の流れも定まったものの、3枚ずつ同時にカードを表にするだけでは、ただの運試しと変わらないことは明らかでした。カードの効果によって限られた情報伝達を行うというアイデアは、既に用意があったので、具体的にどのような効果をどのカードに持たせるかの検討を始めました。
この時も、最初に僕を助けてくれていたのは冬のダイヤモンドでした。3人が円になって中央に6角形が描かれる。この6角形が回っていくことで情報伝達が進む。これは同時に「方違へ」を思い起させる動きでした。他の星も様々に効果が決まっていきます。星の性質や伝承をもとにすると、1つの星に複数の効果を持たせるというアイデアも有力でした。しかし、このアイデアは、ルールがわかりにくくなるという点と、効果が必要以上に強くなってしまうという点から取り消されました。もっとも、完成版においても、星々の持つ効果はどれも相応に強力なものになっていると僕は考えています。
和歌については、はじめ、各星に1つずつ和歌を選んでいくことを考えていましたが、それは早急に取り消されました。主な理由は、冬のダイヤモンドの6つの星に、それぞれ別の和歌を載せることに違和感があったことにあります。冬のダイヤモンドに掲載した和歌は、僕にとって、この6つの星にピッタリな和歌でした。和歌と効果名と効果アイコンを一致させることで、少しでも和歌とゲームの双方に対する親しみやすさを向上させようと考えました。
ここでやっと身内でのテストプレイ、そして外部でのテストプレイを始めました。
テストプレイを通して、様々なルールが変更されました。凍り札を初期から配置しておく変更や、ミモザとハダルのカード効果、デネブの番号などが変更されています。これらは、ゲームの面白さと、主題との一致の両方を損なわないようにしながら、慎重に行われました。外部でのテストプレイを通じても重要な変更がなされました。同時星合時の番号による優先ルールによってキングメーカー問題を解消したり、0点札の配置変更(裏向きから表横向きへ)やサマリーの導入などによってユーザーインターフェースの向上(中心となる経験以外のところの易化)も試みました。こういった変更は指摘をいただいたものもありますし、プレイを観察する中での発見に基づくものもあります。作者の視点から、他の人が何を悩んでいるかを推測するのは、とても有意義な時間でした。もちろん、カードのアートワークについても重要なコメントをいただき、作っていきました。
このようにして、ゲームは出来上がりました。
その後も、説明書を書いて読んでもらったり、インストの練習をしてコメントをいただいたり、ブースカットについてアイデアとアドバイスをいただいたりと、たくさんの方にご支援、ご協力をいただきました。
あらためて御礼申し上げます。大変ありがとうございました。
ルールの要素ひとつひとつに、コンポーネントやアートワークの工夫の1つ1つに、システムやUIだけでなく、表現された物語としての意味を込めたいというところの、その一つ一つの要素については、この記事ではあまり触れることができませんでした。この点については、Xでの毎日紹介やその他の機会を設けて紹介していけたらと思っております。
最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
なんて文章を書いてしまったんだろう。
試遊会情報
次の試遊会はボドゲのちゃちゃちゃ!!
11/1(土)東京都渋谷区で開催です!無料チケットの申し込み受付中ですので、奮ってご参加ください!
その他の試遊会情報はこちらのブログ記事から!
関連情報
『あふはあふかは』について、もっと知りたいと思った方は以下をご覧ください。
Xでは、毎日作品紹介をポストしています。
ゲームマーケット公式サイトのゲーム紹介ページもご覧ください。
説明書が見たい方はブログ記事をご覧ください。
ゲームマーケット11/22,23両日の取り置き予約も受け付けております。
BOOTHのショップページでは先行販売の通販も行っています。
その他さまざまな情報をブログ記事にも書いておりますので、ぜひご覧ください!
Vtuberのみしぇるさんに配信していただいた様子はこちら!遊び方も丁寧に解説いただいています!
B08『あふはあふかは』プレゼント企画!!
— Aesthetics, Boardgames & Circles (@Boardgames_ABC) November 15, 2025
七夕をテーマにした3人専用バッティングゲームです#ゲームマーケット2025秋 で当日ブースに来てくれる方、抽選で3名に『あふはあふかは』をプレゼントいたします!!
みんなで星に願いを詠もう!
作品情報:https://t.co/3y4DNZoNYo
参加方法… pic.twitter.com/Ln4w6EQtK9
#あふはあふかは 毎日紹介41日目
— Aesthetics, Boardgames & Circles (@Boardgames_ABC) September 4, 2025
カペラってどんな星?
冬の夜空に輝くぎょしゃ座の星です
カペラは、いくつかの恒星が互いの周りをまわる連星系で、その中でも2つの星がひときわ明るく見えます
いずれも黄色巨星です
それぞれが1等星並みの明るさを持つ2星が、冬の星々を導いてくれることでしょう! pic.twitter.com/Ik6BNekbH3
