ユーグ @eugh_boardgame
2019より活動しているボードゲームサークルになります! 気軽で大人から子供までみんな遊びやすいゲームを作っております。ぜひ遊びに来てください!
- N10 ユーグ おにくまん
- 2019/11/20 23:29
いったいここはどこなのだろうか。
俺は角椅子に座ったまま、
前後の記憶を辿ってみるが上手くいかない。
周りを見渡してみると、
目の前には正方形の木製の机に、
テーブルクロスが綺麗に敷き詰められている。
その上には純銀製のフォークとナイフが
四つの辺に対して直角になるように並べてある。
左手を見ると麦わら帽子をかぶった
オーバオールの年配者が席に着いている。
おそらく農業を生業としているのであろうことは
テーブルに立て掛けてあるクワや、
その精悍な体つきから想像がついた。
口を一文字に結んだまま、
何もない宙の一点を見続けている様は
どこか遠い大陸の部族の長老のようにも見えた。
対面の席にちょこんと座っているのは
年端もいかない幼女だった。
つぶらな瞳に、あどけない表情。
地面に足が届いておらず、
所在なく靴をブラブラと揺らしている。
いったい保護者はどうしたのだろうか。
彼女はキョロキョロと
視線を彷徨わせてはいるが、
物怖じした様子は全く見受けられない。
俺にとっては未知の状況だが、
彼女にとってはそうではないのだろう。
まるで何度も練習を重ねたお遊戯会のように。
右手に座っているのは獣人だ。
灰色と白の艶やかな毛並みを生やし、
下半身には下着程度の布地を纏っている。
獣人に明るくはないが、きっとオスなのだろう。
ナイフとフォークを物珍しげに手に取り、
それを振り回して遊んでいる。
彼らには食器を使って食べる文化がないのだ。
などと、俯瞰しているあいだに、
給仕が料理を運んで持ってきた。
肉の焦げた匂い、
スイーツの甘ったるい香り、
野菜や果物の瑞々しい様が、
食欲に対して暴力的に訴えかける。
もはや腹の底から沸き上がる空腹感に見境はない。
周りの個性的な面々も思いは同じようで、
長老は刮目し、幼女は目を輝かせ、
獣人は口の端から粘液を滴らせている。
互いの食欲が一触即発の様相を呈して、
誰もが我先にと食べたいのに動けずにいる。
どうする。。。。。
考えるより先に体が動いた。
「まあ、いってみっかー」
そうぼやきながら、
俺は目の前の皿に手を伸ばした。