サザンクロスゲームズ

チキンダイスゲームズ解散後、代表のN2が中心となって作品の版権管理、ならびに新作の製作・販売を行なうサークルです。

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エイジオブタイラント、デザイナーズノート
2019/11/13 14:45
ブログ

サザンクロスゲームズです!


今回はゲームの紹介からややはずれ、新作制作の動機についてお話ししてみようかな、と思います。お時間のある人はご笑覧ください。


自分のブログでテーマ選びについて述べたことはありましたが、いままであまりゲーム作りの発端部分に関しては書いてこなかったと記憶しています。新作「エイジオブタイラント」が特段不思議な成立過程をしている訳ではないのですが、ちょうどよい機会なのでお付き合いください。



「動機」と呼べるものは、もちろんデザイナーごとに千差万別だろうと思います。「べつに動機はなく、天から案が降ってくるのを待ってるだけ」という方も沢山いらっしゃるでしょう。


私個人の流儀としては、「既存のゲームに対する不満、ないし希望」があります。


不満といっても、もちろん怒りや憤りがあるわけではないのです。むしろとても面白く、充実した時間を与えてくれた作品を遊んだあとに、「とても楽しかった、素晴らしいゲームだ。…ただ、ここをこういう風にすることは出来なかったもんかな」と振り返り、それが制作の動機に直結しています。


そろそろ具体的な話しをしましょう。


まず私は、以前から「既存のワーカープレイスメントは、あるひとつの問題を抱えており、なおかつ有効な打開策をあまり与えられていない」と感じていました。


それは、「ゲーム中のボルテージ(盛り上がり)が、ラウンド序盤/前半に偏っている」というものです。



例が必要でしょう。たとえばワカプレの王道アグリコラ(※)。このゲームではラウンドが進むにしたがって、次々に新しいアクションスペースが生まれていきます。おおむね新しいスペースは強力で、そのタイミングでのプレイヤーの要請にかなったものです。


ラウンドが開始するやいな、スタートプレイヤーから順番に各ワーカーは嬉々として強いスペースを占有してゆきます。当然ですね、いきなり「日雇い労働(注:よわいスペース)」に行くひとはいません。しかし、ラウンドも後半になってめぼしいところが埋まってしまうと、途端にみなしょぼくれたアクションで妥協しはじめるのです。


誰もが他人よりも早く強いアクションを打ちたいと願う以上、ラウンド全体がこのような流れになってしまうのは避けがたいことだと言えます。しかし成果の大きいアクションほど場を動かす結果に繋がりやすいため、どうしてもラウンド前半に各プレイヤーの「見せ場」が集中することになるでしょう。畢竟、後半はやや消化試合的になりがちです。


むろん、これはまったく「問題」ではない、と考えることも出来ます。「見せ場」はどこにあったって良いじゃないか、と。


私の答えは、「その通りだけど、個人的には努力したい」です。



多くのゲームは、「ラウンド」あるいは「エポック」などと称する小さな挑戦のくり返しから成っています。この単位のなかで、後半になるにしたがってより面白く、よりダイナミックに勝負が遷移するように形作られているものも珍しくありません。その方が最後まで気が抜けず、スリリングな展開を楽しむことが出来るためでしょう。


ワーカープレイスメントという世界を探訪するなかで、私はその意識が浸透したものをなかなか見出すことが出来ませんでした。


「ワーカーだけ先置きして、解決を後回しにする」タイプのワーカープレイスも、残念ながら盛り上がりが後半部分にあるとは言い切れません。スペースと効果が紐づいている以上、置いた時点で何をしたいのか大体分かってしまうため、後半は答え合わせになりやすいのです。


プレイヤーの感情の力点が前ではなく、後ろにあるゲームが欲しいと感じていたのです。


エイジオブタイラントは、本課題に対する私なりの回答としてはじまりました。



このゲームでは、ワーカーの主たる仕事は資源の獲得です。蓄積した資源によって、やがて自動的に建築物が完成する仕組みになっています。


しかし建築物は、どれもみな減点対象です。つまり、ゲーム終了時には「より建築が進んでいない者」が勝利者になるのです。


このようにゆがんだ時空で、プレイヤーはどのように振舞うでしょうか。おそらく出来うるかぎり資源の大量獲得をしぶり、建築を回避しようとするはずです。


ラウンドの前半はそれで何とかなるかも知れません。しかし後半には増加した資源と残り少ない選択肢によって、どのプレイヤーの建築事業も、あわや建つか建たざるかの瀬戸際へと追い込まれているに違いありません。


仮にその危難をうまく乗り切れたにせよ(カード効果やアクション効果によっては、運命を少しばかり変えることが可能です)、失敗して大量失点を食らったにせよ、この瞬間がゲーム中もっとも知恵をしぼり、なおかつ楽しいものであると私は信じています。


とすれば、プレイヤーの感情の起伏をラウンドの後ろにもっていくことができ、ひいては最後まで緊張と集中を持続させることに一定程度成功したと言えるのではないでしょうか。


もちろんこの課題をクリアしたからといって、たちどころに抜群の面白さに資するということはないでしょう。得られたのはあくまで局所的改良であり、ゲームの美点とは一箇所ではなくあらゆる部分に偏在するものだからです。


実際どれだけ良いゲームに仕上がったかは、ぜひ遊ばれたうえで、皆さんの目で確かめていただけたら幸いです。



今回も事前ご予約を承っております。よろしくお願いいたします。


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※アグリコラはそれこそ鼻血が出るくらい面白いゲームです。その痛快さの前には、先述の課題など取るに足らぬものに過ぎません。それは重々承知のうえで語らせていただきました。