杓子兵器 @Amasaki_rail
「杓子兵器」です。2018年から主にゲーマー向けのボードゲーム制作をしています。
【杓子兵器のゲーム】業アウト、ペンギンの消えた足跡、テボリューション、テウスフィア、式神怪道、レガリアム、アリアドネー、食らうん
杓子兵器以外の活動
【ゲームデザイナー:雨崎レール】オーシェミン(ゲームデザイン)、ドール工房と気まぐれな魔女(バランス調整)、など
【アートワーク:さにあ】いただきさしあげパンケーキ(アートワーク)、魍魎蒐集(アートワーク)、など
- 『縮小再生産』について話すだけの記事
- 2019/11/9 14:10
こんばんは、RegaliaM(レガリアム)のゲームデザインをした雨崎です。
レガリアムとは杓子兵器の秋の新作で、ジャンルを『縮小再生産』としております。
この記事はゲームを作っていた時の僕の思考にかなり寄り添ったお話しする記事になります。
制作時の思考から見るレガリアム、これはこれでどんなゲームか分かるかもしれません。
一般向けのざっくりどんなゲームか分かる記事はすでにありますので、前の記事を読んだうえでさらに知りたい人以外はそちらを読んでいただければと思います。
http://gamemarket.jp/game/【縮小再生産】RegaliaM(レガリアム)【秋新作】
拙い文章になりますが、どうぞお付き合いください。
(ボードゲームの用語がチラホラ出てきますがご容赦ください)
目次 (割とテキトーなのであくまで目安としてください)
・縮小再生産の着想
・縮小再生産と呼んでいる理由
・なぜ縮小再生産のゲームを作ったのか
・作る際に一番気を付けたところ
・縮小再生産の魅力
・レガリアムのゲームデザイン
・終わりに
▶縮小再生産・レガリアムの着想
早速違うものの話ですが、拡大再生産というゲームジャンルがあります。
ゲームが進むたびに1回の行動が強くなったり、どんどんできることが増えていくゲーム、と僕は認識しております。
この拡大再生産という言葉は、ご存じの方もいるかもしれませんが経済学の用語です。
そして、経済学においてその拡大再生産に対をなす言葉があります。
それが「縮小再生産」です。まずは意味を調べてみました。
縮小再生産
拡大再生産に対する概念で,再生産が縮小された規模で行われることをさすマルクス経済学の用語。通常は資本主義的生産様式のもとでは再生産の過程は拡大再生産として現れるが,戦争,恐慌,極度のインフレーションといった異常な事態においてはしばしば縮小再生産が出現する。縮小再生産は本来投資に向けられるべき生産物が軍事的支出や個人的消費に食いつぶされたり,利潤縮小のために投資的動機を失って死蔵されることによって生じる。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
これを読んだ段階でシステムは
・生産に必要なコストは何らかのリソース
・生産するのはゲーム中使うことのない勝利点
・食いつぶすのもリソース
にすればいいかなと思いました。
この時点でリソースが大変なことになるゲームということはほぼ確定しました。
これまであまり学んだことの無い経済学の言葉を考えながら構想を練るのは不思議な感覚でしたが、構想は意外とすぐ出来ました。
面白くなかったらボツにしようと思ったのですが、意外と面白くなったので製品まで仕上げました。
……そしてしばらくしてから、縮小再生産型のゲームが少数ですが既にあることを知りました。
やはり世界は広いですね。
▶縮小再生産と呼んでいる理由
理由を述べるために、まずはレガリアムの縮小要素を列挙してみます。
大枠
・1ラウンドに使えるコストがある条件で減る。
・1ラウンドに使えるアクションの回数がボーナスを取ることで減る。
細部
・ラウンド中でコストを回復するためにはコストを退かすアクションをしなければならない
・ラウンド中でアクション権を回復するためのアクションを生かすために、他のアクションを潰さなければならない
細部は文字通り細かいのでいいとして、大枠は二つだけです。
これだけだと条件さえ回避すればほとんど縮小されません。
しかし、縮小を補佐する要素があります。
・使えるコストを減らす条件が得点を得ることに直結している。
・同じ得点行動を何度もするとボーナスを獲得してしまう。
・得点行動はそれぞれ回数制限がある。
・ゲームの終了条件は一人でボーナスを三回取得する必要があること。
勝つためには得点を稼がなければなりません。
つまり、平たく言うと勝つためには縮小しなければいけないのです。
拡大再生産では勝つために行動を拡大しますが、その逆ということですね。
縮小再生産と呼ぶ最大の理由は、この「拡大再生産と逆の行動」するため、というところが大きいです。
▶なぜ縮小再生産のゲームを作ったのか
僕は拡大再生産のゲームが好きです。
しかし、ものによっては序盤にうまく伸びた人がそのまま逃げ切って勝ってしまうことがあります。
そこを上手いこと追いつくことも出来る拡大再生産を考えていた時に縮小再生産のことを思いつきました。
まさに逆転の発想ですね。
先に大きい得点を取りに行くと、その後が動きづらくなって追いつかれやすくなる。
その動きづらさは終わるまで解消されず、しかしそれはゲーム中必ず起きてしまう。
勝負を焦ると動きづらくなっている間に、じわじわとまだ動ける人ににじり寄られ、そのまま抜かれてしまいます。
点数的に勝っている人の方が動きづらいのがほぼ常なゲームです。
ドミニオンでいうと属州を購入するたびに銅貨が10枚ついてくるような感覚です。
単純ですがこのシステムは僕の理想にピッタリでした。
だから作りました。僕の理想のゲームです。
▶作る際に一番気を付けたところ
レベルデザインです。
要はゲームバランスの調整です。
得点の配分だったりコストの値を上手いことしなければいけません。
これを上手くやらないと、
・序盤に勝負を仕掛けたら逃げ切れてしまうゲーム
・キャラクターごとに性能が違うため使えば勝てるキャラクターのいる端的なゲーム
・勝負を仕掛けない方が強い地味なゲーム
になってしまうからです。
ここは一番丁寧に、緻密に計算をしてゲームを組み立てました。
完成度については…ぜひ遊んで判断してください(笑)
▶縮小再生産の魅力
僕の中での一番の魅力は、勝負所を見極める必要があるところだと思っています。
残すか削ぐか選ぶものは何を残すか
タイミングを選べるものはいつ縮小するか
この話は次の項で詳しく話しますが、レガリアムではそれを顕著にするため、キャラクターごとに勝負をかけたいタイミングが変わるようにデザインしてあります。
まだまだ研究されていないジャンルなので、これを見ている方はぜひ縮小再生産を作ってみてください。
新しい発見があるかもしれません。
……本当は僕がやりたいからなんですけどね。
▶レガリアムのゲームデザイン
上の項でも言いましたが「勝負所」はレガリアムを作る際に一番気にかけた部分です。
それをできるだけプレイヤー個人が選択ができるように、あえて点数を取らずに対戦相手の背中を追うことも可能にしました。
点数が取れない代わりに縮小を遅らせるということです。
まぁ点数は後で取りに行けばいいのですが、それだけだと後手有利にもなってしまうため、点数を取れる場所はどんどん減っていくようにもしました。
そして、ゲームに正解を与えたくなかったので、ほとんどアブストラクトに寄りかけていたものを修正しました。
・非公開要素を少し与える
・ゲーム終了時までトラック上には入れない得点を作る
これだけでだいぶ改善されました。
元々は得点トラックに示される値が全てであり、ゲーム中そこを見るだけで自分の今の順位が確実にわかってしまっていたのです。
ゲーム中に勝ちの目が無いことを知るのはあまりにつまらないです。
ゲームが終わって、得点トラックを動かしてみるまでドキドキハラハラする。
僕はそちらの方が好きだったのでそうしました。
(まぁ非公開のもの以外は計算する気になれば計算できるんですけどね)
ゲームの難易度ですが、難しいゲームに思えるかもしれませんが、右も左もわからない初プレイでも最後までギリギリ到達できる難易度に調整しました。
やるたびに成長を感じられるゲームに仕上がっています。
ただ、簡単にしすぎると先ほど言った「勝負を早くに仕掛けて逃げ切れてしまう」になってしまうので、その間のバランスを上手く取ったつもりです。
デザインとしてはこんなものでしょうか。
今の僕の全力を出して作った作品を、ぜひ遊んでみてほしいです。
▶終わりに そしておまけ
文字に書き起こすのは不慣れだったため、読みづらい部分も多々あったかと思いますが、
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ここまで読んでいただいた御礼としましょうか、少し先の話をさせていただきます。
レガリアムは拡張を作ることを目論んでおります。
拡張を入れるとどうなるのか。
・1人からプレイが可能になる
・協力ゲームができるようになる
主な要素はこの二つです。
縮小再生産の協力ゲーム。僕としましてはとても胸躍るものがあります。
構想などは終わっていて、あとは少しの調整で完成しますが、レガリアムが一定数売れたらの話なので出来たらいいなぁ程度に考えております。
この記事はこれで以上となります。
ここまで僕の考えをだらだら連ねたものを読んでいただきありがとうございます。
買ってもいいな、と思った方はご予約くださると、嬉しいです。
https://forms.gle/4XPNiuZQ98QPohRG7
ゲムマ当日は
土曜日は N15 (試遊卓あります)
日曜日は E13-14 (カワサキファクトリーさんのブースです)
予約と試遊は土曜のみなので気を付けてください。
ゲームマーケットにはまだ見ぬ素敵なモノがたくさんあります。
みなさまにおかれましても、素敵なモノとの出会いがあることを願っております。
それでは。