あらたま農園企画開発部 @aratama_create
おいしいぶどうと楽しいゲームを作る会社です。
本業はぶどう農家ですが、代表社員二人でアナログゲームを制作しています。
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- 2人対戦用同時ターン制カードゲーム「Five for the Money」のご紹介【2026秋新作】
- こんにちは。あらたま農園企画開発部です。今回は、Icarian Digitsを紹介した前回の記事に引き続き、2026秋に頒布する「Five for the Money」について詳しく紹介していきたいと思います。我々あらたま農園企画開発部は10/18(日)の単日出展。ゲムマ2日目はぜひ我々のブースにお越しください!Five for the MoneyのゲームページはこちらルールについてFive for the Moneyは、2人対戦用の同時ターン制カードゲームです。それぞれのカードには「強さ」と「プレイ時の効果」という概念があるため、トレーディングカードゲームやローカルルール有の大富豪をイメージしていただくと概要が掴みやすいかもしれません。一方で、「2人のプレイヤーが同時にカードをプレイする」という特徴から、手の内の読み合いが勝利のためには非常に重要になります。お互いの手がバッティングすること自体には特に大きな意味はありませんが、相手が何をしてくるかによって自分の取るべき手が変わるという点はいわゆる「バッティングゲーム」にも近いプレイ感かもしれません。 ゲーム開始最初に内容物のカードを裏側の色に従って16枚ずつに分け、特殊カード1枚(「0」)以外の15枚をよく切って山札にします。山札になるカードは両プレイヤーとも1-5の数字が各3色1枚ずつの内容です。「0」のカードは「待札」と呼ばれるエリアに置いておきます。(場所的には山札の横ですが、詳細は後述します)この山札から3枚の初期手札を引き、コイントスを行って当てた方が先にコイン(ルール上使用するトークンです)を持つプレイヤーとなってゲームを開始します。ターンの流れ双方のプレイヤーは毎ターン、手札から待札に出すカード待札から場札に出すカードの2つを決定し、この決定を両プレイヤーが同時に公開します。(※どちらかを、あるいはどちらも出さないという選択をすることもできます。)このゲームにはターンごとの勝利という概念がありますが、その際「場札」にあるカードの数値を比べてより大きい方(特殊効果により例外あり)がそのターンの勝者となるため、より直接ゲームに影響を与えるのは「待札から場札に出すカード」の方です。ただし、手札のカードを直接場札に出すことはできず、場に出るためには一度待札を経由する必要があります。(こちらも例外あり)そのため、基本的にはお互いに相手がどんなカードで勝負してくるかが見えた状態で自分の行動を決めることになるわけです。ただし、手札から待札に出すカードも、単に一旦公開されるだけのカードではありません。それぞれのカードに書かれた「効果」を発揮するのはこちらのカードです。山札に入るカードの効果は全5種類(※同じ数字なら色が違ってもカード効果は同じ)。そのどれもが、大小はあれどそのターンの勝敗に影響を与えるカードになっています。場札に出すカードと待札に出すカードのコンビネーションにより相手の選択を上回り、ターンの勝者を目指すのがこのゲームの戦い方の基本となります。ターンの後処理手を決めて効果を解決し、お互いの場札の数値を比べて勝敗が決まったなら、勝者のプレイヤーは自分の場札を「勝札」という場所に移動させます。敗者は場札を裏返して「捨札」に送ります。ゲームの勝利条件は、この「勝札」に、同じ色のカード/連続する数字のカードを3枚揃えること。カードの色は3色あります。勝利条件に勝札の総枚数は関係ないので、5回ターンの勝者となったプレイヤーが3回しか勝者になっていないプレイヤーに負けることもよくあります。捨札は裏向きになりますが、お互いの勝札は常に公開されているので、「相手の勝利条件の進み具合」も相手の次の手を読む重要な材料になります。例えば相手の勝札に4と5が、相手の場札に3があるなら、相手はその3をなんとかして勝札に送り込みたがっているはず。その情報があれば、「自分の場札を考えると相手が3を勝札に送るためにやってきそうなことは……」と、より精度の高い予測ができるようになるでしょう。場札からカードを移動させた後は手札の交換。両プレイヤーはそれぞれ、手札を1枚だけ残して残りを裏向きで捨札に送り、その後山札から2枚のカードを引きます。1ターンに2枚カードを手札から出すことはできないので、この時必ず1枚は手札を捨てることになります。(1枚も出さないことはできるので、2枚捨てることもあります。)次のターン以降に使いたいカードが2枚あっても、どちらも残すことはできないというわけです。どちらがより役に立ちそうかを的確に見極めることが求められます。もちろん、新しく引いてくる2枚の中により役に立つカードが入っていることもあります。次に引いてくるカードの内容を残り山札から大まかに推測してこれからのプランを立てるのも有効なテクニックになるでしょう。コインの役割ここまで、こともなげに「手札から待札に出したカードの効果を解決する」と書いてきましたが、カードを出すのは同時であっても、効果の解決を同時に行うわけにはいきません。カードの中には相手のカードに対して干渉するものもあるので、解決の順番次第でそのターンの勝敗が変わってしまうケースがあります。その時用いるのが「コイン」です。効果の解決順序は常に、「コインを持っている方のプレイヤー」→「持っていない方のプレイヤー」と進めます。また、両プレイヤーが場に出したカードが同じ数字であった場合にもコインを参照します。この場合も引き分けにはならず、コインを持っているプレイヤーがそのターンの勝者となります。ゲーム中コインが移動するのは、相手からコインを得る効果を持つ「5」のカードが手札から出された時のみです。カードによってはコインが自分にあるときと相手にある時で強さが変わるものもあります。一番大きい数字であるために場札として強力な「5」のカードですが、効果を発動させるタイミングにも気を配るとよりうまく使えるかもしれません。プレイの勘所「0」のカード最初に特殊カードとして山札から除き、最初から待札に置いていた「0」のカード。このカードはいつでも場札にすることができますが、そこから勝札や捨札に移動することはなく、一度場札にするとゲーム中二度と使えません。代わりに場札としての効果は非常に強力で、全ての数字に無条件で勝てるというもの。(0同士がかち合った場合のみ例外で、この時はコインを持っている方が勝者になります。)ゲーム中一度だけ使える最強のジョーカーのようなカードというわけです。ただし、それでターンの勝者になっても勝札にならないのでゲームの勝利条件には貢献できません。そのためこのカードの役割は、相手が通したがっているカードに合わせて場に出し、問答無用でそのターンの戦略をカットしてしまうこと。相手がどうしても勝札に送りたかったカードを捨札に送らせ、相手の勝利を遠ざけるためのカードです。どこでこの「0」を切るかがプレイヤーとしての腕の見せ所になってきます。各カードについての詳細上画像の「カード図鑑」を見れば分かるように、このカードは基本的に、数字が小さいカードほど効果が直接的に強く、大きいカードほど効果が与える影響が軽微になるようにデザインされています。(0を除く。)基本的には数字が大きいほど場札として強いので、場における強さと手札から出した時の強さが反比例するようになっているわけです。「1」「2」は、「本来勝てない場札で勝利する」ためのカードです。「1」は全カードでも最も直接的にそのターンの勝敗に大きな影響を与える、1ターン限定で強さを逆転する効果。自分の弱いカードで相手の強いカードに勝ててしまうということで、うまく決まった時のリターンは最も大きくなるでしょう。「2」はこれに対してやや変則的な効果で、「相手の場札を勝札に送ることで場に自分のカードしかない状態を作り、相手不在での勝利を目指す」というもの。相手のカードも勝札に行くので、相手にも利益があります。ただし、このゲームの勝利条件において重要なのは、勝札の枚数ではなく内容。相手の場札が勝利にあまり関係なく、自分の場札が勝利に直結するような場面でこの「2」の効果を通せれば、得られる実質的な利得は両プレイヤー間で全く異なったものになるでしょう。「3」「4」は、相手との読み合いで有利に立てるカードです。「3」は相手の戦略を見てから場札を出し直せるという効果。「同時にカードをプレイするから読み合いが重要」とここまで何度も言っていることからも、この「一方的な後出し」が多くの場面で活躍できる効果であることは伝わるのではないかと思います。「4」は相手に見えないところからいきなり場札になる効果。これも「場札になるのは一度待札を経由してから」というゲームの前提を覆すタイプのカードです。より対応できる場面が広いのは「3」の方ですが、例えば相手が場にカードを用意できない1ターン目にいきなりプレイして高確率で勝札に送り込むなど、「4」にしかできないことも多くあります。「5」は効果が与える影響は限定的ながら、場札として「4」より強い点が重要な個性です。「4」は見えない場所からいつでも場に出てきうるカード。そのため、「1」から「3」のカードは場に出す時、仮に相手の場に脅威がなかったとしてもいきなり乗り越えられてしまうリスクを背負っていますが、「5」にはそれがありません。また、相手が「4」を場に出すターンには構造上それ以外の補助が飛んでこない(手札からプレイされるのは「4」なので)ため、「5」を場に出してしまえば相手の「4」には必ず勝利できます。そうした牽制能力と、単純に最も勝札に送り込みやすいカードであるという点から、多くの対戦で勝利条件を満たす際の軸となってくれるのが「5」のカードです。読み合いの具体例例えば、以下のようなケースを想定します。相手の待札に「3」と「1」こちらの待札に「5」と「2」両者とも「0」をまだ使っていない相手の勝札には「4」があるこのようなケースで迎えたターン、相手は勝利条件を進めるために「3」で勝ちたいはずです。なので、自分が警戒しなくてはいけないのは相手が手札から「1」のカードを使ってくることでしょう。考えられる中で最悪なのは相手の「3」と自分の「5」がかち合った上で相手が「1」を使ってくるケース。相手がゲームの勝利に一歩近づく上、自分は強力な「5」のカードを捨て札に送られてしまいます。これを防ぐためにどんなカードを使えば最も勝率が高いかを順番に考えてみましょう。まずは自分も「1」を使う場合。両プレイヤーが同時に「1」を出した時は強さの逆転が2回起こったものと処理し、結果的に通常通りの法則で勝敗が決まるため、相手の「1」に対するカウンターとしては機能します。ただし、それはあくまで相手が本当に「1」を出してきた場合です。相手が思うようにカードを引けていなかったり、一旦様子を見てきたら、自分だけが「1」を出すことに。こうなると、せっかく自分が勝てたはずの盤面をひっくり返してしまうことになります。こういう場面では「2」もあまり役に立ちません。「2」は自分相手両方の場札を勝札に送るような動きのカードになるので、自分が勝ちにいくときには非常に強力なオプションですが、相手の思惑を妨害する用途には向きません。その点、このケースで最も有効なのは「3」でしょう。「せーの」のタイミングでは場札に出すカードを選ばず、「3」を手札から使えば、相手がどんなカードを出してきたかを見てから場札を選択できます。相手が手札から「1」を使ってきていたのであれば自分は「2」を場に出し、それ以外のケースであれば「5」を出せばいいというわけです。もし相手が場にも「1」を出した上で手札からも「1」を出してきた場合には場札「2」では負けてしまいますが、その時は「0」を使うことで相手の勝利を阻止することも可能です。もちろん、勝ちを譲っても趨勢に大きな影響がないのであれば、もっと重要な場面で切るべく「0」を温存しておくのも理のある判断でしょう。そのほか、ひとまず様子見的に「4」を出すことで少なくとも「5」を失ってしまうことを避けたり、2枚目の「5」を待札に出してしまうというのもけして悪い手ではありません。もちろん、実際の対戦では手札に全てのカードがあるわけではありません。毎ターン3枚の手札の中からどのカードが一番有効なのかを考えてプレイすることが大切です。余談 偉大なるリスペクト元このゲームについて話す場合、必ず触れなくてはならないいにしえのFLASHゲーム作品が1つあります。それはかつてhozoさんという方によって公開されていた、「カードコマンダー」という対戦型トレーディングカードゲームです。確か、僕が中学生くらいの頃には既に存在していたはずなので、恐らく公開されたのは2008年くらいだったのではないでしょうか。そこから、2020年1月18日(この日付は忘れもしません)に至るまで10年以上多くのプレイヤーを楽しませてきた素晴らしいゲームでした。今でこそデジタルカードゲームというジャンルはすっかり一般的になりましたが、このゲームはそんな言葉が生まれるずっと前からブラウザ上でネット対戦が出来るカードゲームとして存在していました。そしてこのゲームの最大の魅力はそうした革新性以上に、非常に洗練されたゲームシステムでした。両プレイヤーが手札から待機所に出すカードを(自分の戦場にカードがない場合はさらに待機所から戦場に出すカードを)選択し、両者が決定したらその選択が同時に公開される「同時ターン制」というゲームシステムは、僕の知る限り当時存在したどのカードゲームにも似ていない、真に独創的なものでした。そしてこのシステムが「相手の手を読む」ということの重要性を非常に高めており、そうした読みの精度や、その読みを活かせるような構築を組む能力が勝敗に直結することで、「ルールは簡単なのに、プレイスキルの差がちゃんと出る」というこのゲームの美点が形作られていました。この「同時ターン制カードゲーム」というアイデアはカードコマンダー以降いくつかのフォロワーを生んでおり、かつて存在した「突破Xinobi」というタイトルや、「メソロギア」、そして現在もサービス継続中の「神託のメソロギア」というスマートフォンでプレイできるデジタルカードゲームに系譜が続いています。また、有志がカードコマンダークローンとして開発してSteamに公開中の『Color Summoners』というタイトルも存在しています。(※「メソロギア」「神託のメソロギア」に関しては作者によりカードコマンダーの影響が明言されていますが、突破Xinobiに関してはかつて両ゲームのプレイヤーであった自分の勝手な感想に過ぎませんのでご注意ください。)そして言うまでもなく、この「Five for the Money」も、この「同時ターン制カードゲーム」というジャンルのフォロワーとしてデザインしています。このゲームの原作との差異としては、戦場で勝利したカードの扱い(カードコマンダーでは場に残ります)、ゲームの勝利条件(4点の初期ライフが戦場で敗北するたびに1ずつ減っていき、相手のライフを0にした方の勝利)、手札の扱い(多くのカードゲームと同じく、ターン開始時に1ドロー)、そしてそれぞれのカードの効果などがあります。その他、「イニシアチブ(このゲームにおけるコイン)がターンごとの勝敗に応じて入れ替わる」「カードを使用するためにコストが必要」「決着をつけられなかった戦闘は引き分けになる」といった細かな違いはありますが、これらはどれも副次的なものといえるでしょう。「同時ターン制カードゲーム」という優れたアイデアを、最もミニマルに、それでいてこのシステムがもたらす読み合いの緊張感といった美点をできるだけ損なわずに机上で表現したい、と思って作ったのがこのゲームです。先程挙げた差異は、そうした目標の実現のために試行錯誤した結果自ずと生まれたものでした。今回このゲームを頒布できる形にまで仕上げよう、となったのは外部的なきっかけ(Icarian Digitsの記事でも紹介した、スカウトジャンボリーです)でしたが、それよりも以前から「こういうものが作れないかなあ」という思いはずっとあり、プロトタイプのようなものは4-5年に渡って考え続けていました。「ボードゲームを作って頒布しよう」という気持ちが特になかった頃からそんなことをしていたのは、ひとえにこのシステムに惚れ込んでいたからです。このゲームは、「カードコマンダー」へのラブレターを書き綴るような気持ちで少しずつ作ってきました。……ゲームマーケットの公式サイトのブログに書く内容としては少し脱線が激しくなってしまったでしょうか。とにもかくにも、そんなわけで、少なくとも熱い思いが乗っていることだけは確かなこの「Five for the Money」。10/18(日)の単日参加にて頒布予定ですので、この記事を読んで気に入って頂けた方はぜひ我々「あらたま農園企画開発部」のブースへお越しください。イベント限定価格、1200円にて頒布いたします。それから、万が一、この記事を読んだ方の中にかつてカードコマンダーのプレイヤーだった方がいらっしゃったら。そんな幸運に恵まれれば。どうかぜひブースにお越しいただき、「あの頃の思い出話」をしに来てはくれませんか。ニコ生で強いプレイヤーさんの配信があればこぞって集まったあの頃。色んな人がデッキを公開するブログと、そのブログをまとめるアンテナがあったあの頃。それまで青緑が主流だった青龍を、青赤で使ってあっという間に1850を超えるレートを叩き出した伝説のプレイヤーが現れたあの頃。僕はファントムに擬態をかけて原住民を連打するデッキとか、煙竜とゾンビとドラゴンゾンビのシナジーを利用するデッキとかを使って1600-1700帯をうろついていたプレイヤーです。どなたか。どなたか、いらっしゃいましたら……。
- 2026/9/11 23:56
- あらたま農園企画開発部
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- 【2026秋新作】2人用アブストラクトゲーム「Icarian Digits」のご紹介
- こんにちは。あらたま農園企画開発部です。ゲムマ2026秋に初参加。10/18(日)の単日出展を予定しております。この記事では、今回頒布する3つのゲームのうち、ダイスで行う対局ゲーム「Icarian Digits」について詳しく紹介していきたいと思います。ご予約はこちらから ルールについて 全てのルールをここに書くわけではなく、根幹の部分を紹介して、「あとはお買い求めの上お楽しみください」というスタイルで書いていこうと思います。Icarian Digitsは、ダイスをコマにしてチェスのような対局ゲームを行うといったスタイルのゲームになっています。大きな特徴としては、コマの初期配置が存在しないことと、盤面が3×3しかないこと。その3×3の盤面のうち最も自分側の一列を「自陣」と呼びます。ゲームは、交互に手番を消費して「自陣」の好きな位置にコマを投入するところから始まります。一度盤面に投入されたコマは同様に手番を使って移動させることが可能です。最初に自陣に置く時にはダイスの目は1ですが、移動するたびに1つずつ目が大きくなっていきます。(一部例外アリ。)このゲームの勝利条件は、相手よりも先に自分のコマを3つ「あがり」にすること。あるコマを「あがり」にするためには、目を6まで進めた上でさらに一手番使って宣言を行う必要があります。なので基本的にはたくさん移動させてどんどん目を進めていくのが大切なのですが、そこで問題になるのがお互いのコマの「とる/とられる」のルール。このゲームでは、より小さい目のコマが、より大きい目の相手のコマを一方的にとることができます。なので、コマをあがらせるために目を進めるほど、相手から狙われやすくなってしまうというわけです。勝利を目指すためには、うまく逃げ回ったり、より小さい目のコマで相手を牽制したりしながら手を進めていく必要があります。とはいっても3×3の狭い盤面、お互いに3つまでコマを出せるので最大6個。逃げ回り続けるのにも限界があります。別の方向から数手かけてじっくり追い込まれてしまうと、あがるよりも先に簡単に詰まされてしまうのでは……?とお思いの方も多いのではないでしょうか。そうした状況への対策のため、このゲームでは、自分から見て盤上の一番手前側の一列を「自陣」と定義し、自陣にあるコマを使って行える特殊な手を2種類用意しました。それが「撤退」「入替」です。撤退は、自陣にあるコマを手持ちに戻す行動です。それだけでは単に勝利から遠ざかるだけの選択にしかなりませんが、撤退を選んだ手番、自分は2回分の移動権を得ます。いわば、そのコマを出すために使った分の一手が帰ってくるような仕組みです。出してから進めた分の手番は戻りませんが、時には2や3の目のコマを戻して他のコマを2手動かすのが最善になることもあります。一方、入替は自分の陣地に2つ以上のコマがある時にのみ使える手です。それらの中から2つを選び、それらの位置を入れ替えます。自分の大きな目のコマが相手に取られそうなときに特に有効な手で、守りたいコマを安全な場所に逃がしたり、逆にいきなり相手のコマを取れる状態にしたりすることも可能です。いわゆる「攻防手」として機能しやすい行動なので、常に選択肢として頭に入れておく必要があるでしょう。投入、移動(攻撃も含む)、撤退、入替。これら4種の行動から最も有効な手を選び、進行度で相手に差をつけて勝ち切る。Icarian Digitsはそういうゲームです。 プレイの勘所上にも書いているように、このIcarian Digitsはチェスのようにコマを少しずつ進めていくゲームなのですが、勝利条件にコマの取り合いが直接関係しないという特徴があるため、安定して勝つためにはチェスや将棋とは少し異なった視点が必要になります。それは、「目の進行効率」という概念です。このゲームで勝つためには、相手よりも早く3つのコマを6(+1)まで進める必要があります。そして、1手番につき盤面全体で1つしか目を進めることができません。(撤退後には2つ目を進める権利を得ますが、撤退したコマは再度投入するために1手使うことになるのでプラスマイナスゼロです。)また、中には1手使って目を1つも進めない「+0」の手も存在します。自陣方向への後退(移動)、相手への攻撃、入替がそれにあたります。極端な話、自分が+0の手を1度打ち、相手が+1の手のみを打ち続けてお互いに干渉しなければ必ず負けてしまいます。つまり、これらの手を打つ場合には「この手によって相手は1手以上損をするのか?」ということに気を配る必要があるということです。例えば、相手の2のコマを自分の1でとれば相手は分かりやすく2手損します。それを避けるために相手が1マス後退すれば1手損、そのあとの展開次第で+αが発生するでしょう。また、相手の進行に邪魔になる場所にコマを置くことで損をさせることもできます。分かりやすいところでは、盤のど真ん中のマスに自分の1のコマを置ければ、相手はかなり動きづらくなるでしょう。つまり、自分と相手の手番の損得を常に意識するのが重要になるということです。入れ替え+攻撃で相手のコマを取ったからといって、必ずしも自分が有利になっているとは限らないわけですね。そのあとの盤面が相手にとって嫌な形になるかをしっかりと考えながら最善手を検討しましょう。 余談制作経緯このIcarian Digits、ゲームマーケットでの頒布は2026秋が初めてなのですが、実は一度だけそれよりも前にある場所で販売を行っていました。その場所とは、2026年8月4日から10日にかけて広島県の神石高原町で開催された、第19回日本スカウトジャンボリー。全国からボーイスカウトの子供たちが集まり、キャンプなどを行いながら一週間を過ごすこのイベントで先行販売(?)の機会に恵まれました。我々あらたま農園は神石高原町で主にぶどうを栽培している農園なんですが、農閑期などにお手伝いしているNPO法人がこの「ジャンボリー」に物販ブースを出展することになり。主に町にちなんだおみやげなんかを販売する予定だったところ、「中高生ぐらいがそんなに(なんとボーイスカウト年代が6500人参加)集まるのなら、その場で遊べるものを売るといいのでは?」と提案してみたら「面白そうだから、やってみてくれ」とGoが出ました。そんなわけで、前職でほんの少しだけボードゲーム制作に関わった経験のある私がその販売用のボードゲームを考案するという流れになったというわけです。そうした経緯から、ルール策定の段階から、以下の3つの要件を意識する必要がありました。値段を安く抑えるため、コンポーネントが少ないこと子供たちがカバンに入れて持ち帰るために、箱のサイズが小さいことあまりデザインがポップすぎず、「昔からあったゲーム」のように見えること……3つ目に関しては「家に持ち帰ってから親御さんに嫌な顔をされないように」と勝手に設定したものですが、メインターゲットが中高生で販売場所がキャンプ場である以上、どれも外せない条件だと考えていました。その結果、「ダイスのみを使う対局型アブストラクト」「盤面サイズは3×3」「盤面にコマを並べるところから手番を使う」という基本設計が自ずと定まっていき、こうしたルールのゲームが生まれることになったのです。ちなみにジャンボリー期間中には40個ほど販売できました。前日に買っていき、翌日にわざわざ「面白かったです!」と声をかけに来てくれる子もいて、製作者としての至上の喜びを感じることができました。 モチーフこのゲームのタイトルは「Icarian Digits」。直訳すると「イカロスの数字」ですが、このタイトル自体は、ルールがすべて確定した後に「なにかいい言葉がないかなあ」と検討してひねり出したものです。「Digits」の部分はもちろんサイコロの目を表しています。では一体何がイカロスなのかというと、「6の目からさらに一つ進むとコマがあがる」「コマの目が大きくなるほど相手から攻撃されやすくなる」という要素を、「天を目指してロウの翼で飛び立つ」「高度を上げすぎ、ロウが融けて墜落する」というイカロスの神話に読み替えた、という名付けになっています。フレーバー的なモチーフとしてはそれ以上のものはないのですが、実は、このゲームにはルール側に別のモチーフが存在します。そのモチーフとは、中世のヨーロッパで盛んにプレイされていたとされる、「Darebase」「Prisoner's Base」あるいは単に「Base」「Barres」などと呼ばれていた、「団体戦型鬼ごっこ」とでも言うようなルールの遊びです。この遊びは最小5人ずつくらいのチームに分かれてお互いに相手チームのメンバーを捕まえようとするのですが、捕まえる/捕まえられるの部分に重要な取り決めがあって、それは「より後で自分の陣地を出たほうのメンバーが先に陣地を出た相手を捕まえられる」ということ。お互いのチームがそれぞれ向かい合うような形で陣地を持っているので、相手から追われることになったプレイヤーは必死に自分の陣地を目指して走ります。うまく逃げおおせて自陣に帰ることができれば、今度はこちらが相手を追いかける番です。自分の追手よりも今陣地を出たばかりの自分のほうが後に出ているため、追うものと追われるものが入れ替わるというわけです。もちろん、追ううちに相手が帰陣に成功すれば、みたび立場が逆転します。こうした攻防が同時多発的に起こる鬼ごっこのような遊びがこの「Darebase」だそうです。ここまで見ればわかる通り、Icarian Digitsはこの遊びから「陣地を出てからの時間が長くなるほど立場が弱くなる」という部分を借用しています。撤退によって2回の移動権を得られるという仕様も、陣地に帰る(手持ちに戻す)という選択を意味あるものにしようとして考えたものです。このDarebase、シンプルな構造ながら、なかなか面白いジレンマとドラマチックな展開を実装している素晴らしいゲームだとは思いませんか。私はそう思ったので、今回一部ルールを翻案しつつお借りすることにしました。……と、ここまで書いたところではじめて知ったのですが、Darebaseは現代では往時ほど盛んには遊ばれていないものの、アメリカではサマーキャンプなどで定番の遊びとして親しまれているそうです。そして、このゲームを先行販売したスカウトジャンボリーは、まさにサマーキャンプそのもの。どうやら私は、知らず知らずのうちにぴったりのモチーフを選んでいたようです。すごい偶然。 以上、2人用アブストラクトゲーム「Icarian Digits」は1200円で頒布予定!2日目(10月18日)はあらたま農園企画開発部のブースへお越しください!
- 2026/9/5 21:02
- あらたま農園企画開発部
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- はじめまして!おいしいぶどうと楽しいゲームを作る会社です!!
- はじめまして。「あらたま農園企画開発部」と申します。これがサークル名ですが、別に今回は農業のゲームを頒布するわけではありません。実は、我々は広島県の神石高原町に位置する実在のぶどう農園「あらたま農園」を営んでおり、その代表社員(経営者)が趣味の一環としてボードゲームを制作している、といった建付けのサークルになっています。初参加となる今回、私たちは10/18(日)単日での参加です。ちなみに、この日程はぶどう農家にとって、収穫期の真っ只中でもあります。どうにかこうにか時間をやりくりして参加する予定ですので、ぜひブースに立ち寄って頂ければと思っております!さて、そんな我々「あらたま農園企画開発部」ですが、今回、以下の新規ボードゲーム3種類を頒布予定です! Icarian Digits : ダイスをコマとして用いる対局ゲーム(2人用/30-40分/1200円)Five for the Money : 同時にカードを出し合う読み合いのカードゲーム(2人用/15-20分/1200円)Winning Combination : ダイスの目のランダム性を制御しつつレースする競馬ゲーム(2-6人用/40-80分/2000円)3種類それぞれについて簡単に紹介しておきます。(後日個別の記事でさらに詳しく紹介予定です!) Icarian Digits(2人用/30-40分/1200円)お互いに手持ちのコマとしてダイスを複数個持ち、まっさらな盤面から「ダイスを盤面に置く」「既に盤上に置かれているダイスを移動させる」「盤上のダイスを手持ちに引っ込める」などの手を交互に行っていくゲームです。最大の特徴はその盤のサイズで、3×3の盤面上でチェスのような対局ゲームを行います。こう聞くと、それだと狭すぎて交互にコマを取り合うだけのゲームになるのでは、とお思いかもしれませんが、そこで活きてくるのが、ダイスをコマとして用いているところです。最初に盤にダイスを置く時は1の目で置き、そこから移動させるごとに1つずつ大きな目に変えていくのですが、相手のコマを「とる」動きは、小さい目のコマからより大きい目のコマにしか実行できません。相手の2のコマと自分の3のコマが並んでいる場合、相手から自分は攻撃可能ですが、自分からはできないということです。この作用により、状況次第で追う側と逃げる側が分かれることになります。そんなわけで目の小さいコマのほうが制圧力が高いのですが、ゲームに勝つためには目を進ませる必要があります。このゲームの勝利条件は相手より先に自分の3つのダイスを「あがり」にすること。ダイスを「あがらせる」ためには、盤上に6の目のダイスを用意したうえで1手使う必要があります。勝つためには大きな目を目指さなくてはいけないが、大きな目のコマほど盤面では弱くなる。そんなジレンマをうまく御したプレイヤーが勝者となれるゲームです。ゲームの基本構造はほぼ上記のとおりでコンポーネントもかなりシンプルなこのゲームですが、その他細かいルールでより深い戦略を取れるようになっていたり、強力すぎる手を封じていたりと工夫も凝らしています。この先はぜひお買い求めの上確かめてみてください。 Five for the Money(2人用/15-20分/1200円)5種類の数字が書かれた15枚の山札(+各プレイヤー1枚ずつの「0」カード)をお互いに使い、毎ターン「手札から効果を使用するカード」と「場に出すカード」を選択するカードゲームです。少し変わっているのは、この「ターン」を両プレイヤー同時に行うこと。毎ターン自分の行動を選択し、「せーの」で相手に示します。ターンごとの勝者を決めるのは場に出たカードの数字の大きさですが、手札から使用されたカードの効果によって数字ごとの強さや場のカード自体が大きく入れ替わります。相手がこのターンにやろうとしていることを予測し、その動きに対して有効な手を選択することが勝利の鍵となるゲームです。ちなみに、このターンに効果を使用するカードは手札から公開しますが、場に出すカードは前のターンまでに使用されたカード。なので、どのカードが場に出てきうるかはお互いにとって公開情報です。(それを覆す効果を持つカードも存在します。)この「待機中」のカードの並びや勝利条件の達成具合といった公開情報を材料に相手の次の手を読んでいく事が大切です。もちろん、自分の公開情報を逆手に取ったブラフを仕掛けていくのも非常に有効な選択でしょう。トレーディングカードゲームのような仕組みのルールですが、構造は比較的シンプルで、カードの種類はたった6種類。ルールや効果を覚えるのが苦手でカードゲームを敬遠していた方にもおすすめです。ミニマルながら深みのある心理戦を楽しめるゲームになったと自負しております。 Winning Combination(2-6人用/40-80分/2000円)ジョッキー(騎手)であるプレイヤーが進みたいペースを宣言し、ダイスが示す馬の実際のペースとすり合わせていくレースゲームです。馬の体力をうまく分配しながら、誰よりも速くゴールを駆け抜けることを目指します。馬の残り体力とターンごとの馬が走るペースを表現するために、1プレイヤーあたり3-7個のダイスを毎ターン振ります。説明が少しまどろっこしい書き方になっているのは、「ダイスを使う競馬ゲーム」と一言で表してしまった場合、実際のゲームよりもずっと運の影響が大きそうに見えてしまうのではないか、という心配があるためです。もちろんこのゲームもダイスを振る以上、勝つためにはある程度の運が必要です。しかし、実際に出目として採用するのが3-7個のダイスの出目の中央値であったり、どんなに出目が大きくても先に宣言した数以上には進めなかったり、6を出したダイスは次のターン以降使えなくなったりと、様々な機構で運の絡む度合いを調整しています。もちろん、運の要素が小さいことそれ自体は別に美点とは限りませんが、自分たちが「これが一番おもしろい」と思えるようなバランスにするべく頭を捻りました。各プレイヤーが振るダイスには色の違いがあり、その色の構成によって「役」を成立させて出目に効果を適用することができます。そして、構成に多くのダイスが必要な役ほど強力な効果を持ちます。なので、基本的にはその時点でたくさんダイスを持っているプレイヤーほど多く進めます。手持ちのダイスが減少するのは、上にも書いたように6の目を出したとき。逆にターンのはじめの進行数の宣言時、最も小さい数を宣言することでダイスを獲得することも可能です。序盤は小さく宣言してダイスを獲得し、来たるべき勝負の時には大きく宣言して出目が応えてくれるのを待つ。そんなわけで、手持ちのダイスの数は実際の競馬で言う「脚」の残り具合に当たるところでしょうか。レースの展開次第では、先行して他のプレイヤーとタイミングをずらしたり、ギリギリまでダイスを溜め込んでから一気に追い込みをかけたりもできます。ダイスの目というものが思い通りになってくれないというのは皆さんよくご存知かと思いますが、そんなじゃじゃ馬をうまく乗りこなせる自信のある方は、ぜひ挑戦してみてください。 今回は以上の3作をご用意しております。どれも自分たちなりにこだわった自信作となっておりますので、当日10/18はぜひお立ち寄りください!
- 2026/9/1 13:18
- あらたま農園企画開発部
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