Siroup games

しろうさんのプロデュースする(sirou produce)ゲームだから、sirou”p” games ですね。

デザイナーズノート 魔龍、屠るべし・序
2024/4/18 0:42
ブログ

今回はディベロップ中心の話

結局トリテになった。
ポンプ消防隊(以下ポンプ)の次に出すゲームはトリックテイキングゲーム(以下トリテ)を避けたかった、比べられちゃうからね。コロナ禍で中量級以上のゲームのテストが難しく、簡単なカードゲームやトリテをオンラインでテストすることしかできなくなってしまったという理由もありました。手札を分けるアイデアはシュティッヒルンが発端で、どうしても大きなマイナスを受ける時「このカードを手札から無くせたらいいのに」と思ったのです。

トリテの利点
トリテはある程度の面白さが担保されています。ただのマストフォローなら正統派とかオーソドックス・古い、という表現がされて、マストフォロー部分を変化させると斬新な、新しい、変態トリテなどの表現をされます。フォロー以外の部分に変化を加えることも可能で、得点計算やトリックの勝者の処理、プレイされたカードの処理、ビットなど多岐にわたります。特に大きな利点は、多くのプレイヤーに共通認識がある点でした。手札を分けることと、マストフォローのトリテにはシナジーがあるのです。

手札別けでできること
配られた手札を前後半に分ける。後半の手札は伏せて置き、マストフォローにひっかからない。前半の手札を全てプレイしたら伏せてあったカードを手札にする。このギミックでプレイヤーができること。
・意図的なボイドでトリックに負けやすくする
・前半を切り札のみにして序盤のトリックに勝つ
・後半に切り札を入れて後半手札になったタイミングでトリックに勝つ
・最後のトリックに勝つ
などが挙げられます。これにマッチするのはポンプのようなミッション(課題)達成系ではないだろうか
・最初に3トリックとる
・ちょうど2トリックとる
・最後のトリックをとる
この3つを軸にして他の課題に特定の色を沢山とる、少なくとる、全色とる、誰にもフォローされない、等色々できそうだ。

テーマは魔法学校だった
手札を分けるアイデアには欠点がありました、全員が手札を分けると意味がないのです。効果が薄まる、と言った方がいいかもしれません。そしてカオスでした。一人だけ(多くて2人)程度が手札分けをするのが最も効果が見込めました。では他のプレイヤーはどうするのかを考え、他のプレイヤーにも能力を持たせたのです。手札別け、ウィドー(配られていないカードとカード交換する)、両隣と1枚ずつ交換する、手札が2枚多い、などです。
①カードが配られ
②特殊能力を決める
③課題を達成しリソースを獲得
④リソースのセットコレクション
という構造です。③④はポンプとの差を作る為の処置ですね。ポンプは大目標と小目標に課題のタイミングを分ける演出でしたが、今回は2種類の課題のうちどちらかを達成すれは1種類のリソースを生むようにして、課題を6ジャンル×2種→リソース3種にして、なくべくリソースをバラバラに集めることを目的になるようにしました。
テーマは魔法学校、プレイヤーは生徒となり魔法使いの先生から魔法の助力を得て、課題をこなす。得られるリソースは宝石や水晶玉や杖、という よくあるテーマですがシステムとはマッチした内容になりました。タイトルは「魔法使いの弟子」とか「魔法学校の生徒」でしょうか。

ゲームとしては完成
特殊能力あり+課題達成というトリテ経験者に向けた調整で、なかなか骨太なゲームができました、テストしてくれた人の評価は、おおむね良。でしたが難しい、重い、長いという意見も多かったのです。このように面白いけど遊びにくいというゲームは、ゲーム(システム)は完成しているが商品としては未完成と言えます。これはテスト環境でのあるあるで、デザイナーもテスターも当然ゲームを面白くすることを目指します。しかし「遊ばれやすさ」はあまり指摘をうけないのです。
ここまでのシステム構築は、アイデアの掛け算や要素の足し算ですが、遊ばれやすさ(商品化)への調整は引き算です。

ゲームを売る為に
ちょっと脱線します。私のゲーム制作は「商品」か「作品」か?→言い換えると「仕事」か「趣味」という話ですが、自分のは趣味に当たります、これで生活できるわけじゃないですからね。しかし「赤字にしない・なるべくなら売れた方が嬉しい」という意志も内包した趣味ということです。以下、完全に持論です。
①ゲームを知ってもらう
 宣伝、箱絵、プレイ風景、特徴的なコンポーネント
②ゲームを買ってもらう(一次消費)
 金額、所有欲、話題性
③ゲームを遊んでもらう
 面白さ、ルールの説明しやすさ、リプレイ性
④ゲームを拡散してもらう
 同卓プレイヤーへの認知、SNSへの拡散、クチコミ、レビュー
⑤ゲームを買ってもらう(二次消費)
⑥ゲームを遊んでもらう
・・・
というサイクルができると、そのゲームは売れている。と言えると思います。①や②は当然意識すると思います。③もそりゃそうだろと思うでしょうが、「くりかえし」遊んでもらうことが肝心です。これはその場で連続で遊んでもらう という意味ではなく、ゲームの所有者が繰り返し遊びの場に登場させてくれるか?ということです。私にとっての成功とは、数年後…十数年後でもたまにSNSなどで遊ばれた記事(話題)が出てくることです、こうなったら勝ちだと思ってます。
あなたは持っているゲームを誰かと遊ぶとき、どうやってゲームを選択しますか?
1つの方法として、一緒に遊ぶ人に応じてゲームを選ぶのではないでしょうか。このゲームを遊ばせたい、このゲームならインストが楽、このゲームなら楽しんでもらえそう、こういった思考ではないでしょうか。この方法の時どんなゲームでも選べる人は恵まれた環境と言えます。
つまり、ルールが複雑でインストが困難 だとか、初心者には難しすぎる だとか、時間が長くて逆転の要素が少ない、といったゲーマーズゲームは選ばれにくい傾向にある、と思います。(ゲーマーズゲームが売れないということでは無い)
ゲームの説明が楽、は所持ゲームを選ぶ時にとっても重要な要素だ、ということです。

巻き戻せるのは本人だけ
ボードゲームを作った人なら分かると思います。ゲームを作る時、様々な検証を試します。Aパターン、Bパターン、Cパターン、C-1、C-2、C-3…と、どんどん枝別けしてテストを繰り返し、システムを面白くしていくのですが、ダメだったらどうするか?一般的にはDパターンの枝別けをはじめるわけですが、AかBまで戻る方法もあります。そしてこの巻き戻りを提案してくるテスターはまず居ません。これまでの経過を知っているならなおさらでしょう。元の方が良くない?って言いにくいですよね。
今回のゲームに当てはめると、Dパターンまで作ってみたが、これはこれで一旦脇に置いておいてAパターンに巻き戻した、ということです。これは勇気のいることのように思われるかもしれませんが、このゲームが無くなるわけではありません、塩漬けしてもいいですし、他のゲームのアイデアにしてしまうこともできます。
このゲームは上記①②まではいくが、トリテにしては説明が大変(特殊能力と課題の説明が必要)で毎ラウンドの前置きが長い(特殊能力の選択と処理)ので③のハードルが高いのです。ディベロップ方法としては、トリテと思わせない(ブライアンボルのような)演出にしたり、特殊能力について能力の簡略化と選択処理の自動化で要素を削っていく方法があります。

見せたいものだけにする
今回の主題は「手札分け」でした。これを注目させるにはもはや全員に特殊能力~とか様々な課題~などと言ってられません。手札分けの発想が生まれた当初、かたっぱしに色んなトリテに手札分けを入れて試していてそれが機能していることはわかっていました。取りたくない(ハーツ)系のトリテにすることで、手札分けによるカードを隠す要素が活きるし、トリックを取るとわずかにプラス点があることも意図的なボイド要素を活かせます。課題達成のように手札分けを惜しみも無く活かせるわけではありませんが、特徴的な部分を強調することができました。
テストプレイ会の時、Dパターン(魔法使いの課題達成トリテ)をテストしてもらった後「実はちょっとオマケみたいなゲームがあるんですがやってもらっていいですか?」といってAパターン2種をテストしてもらい好評を得て採用となったのです。

足し・引き
・Dパターンの名残りで、ウィドー(配られてないカードと手札を2枚交換する)能力を足してます。
・手札を配った後で、切り札の最高ランク所持者が手札を分けるのですが、この条件はプレイヤーの納得感・分かりやすさ・説明しやすさを重視した結果です。
訳あってベータ版(序)になったしまいましたが、製品版(多分 破)ではもしかすると上記は変更されるかもしれません。手札分けをプレイヤーにやらせたいのに、持ち回りでは無く条件にしています、これは4、5人戦でプレイ人数と同じ回数のラウンドでゲーム終了では”長い”と判断したからなのです。
●切り札の最高ランク → 一番強いカードだから手札分けできる
●前回ラウンドの最後のトリックを取った → マイナスを多く被っているからウィドーできる
プレイヤーが納得できるように上記の理由にしているが、2種の能力をぐるりと持ち回りにすれば、4人プレイで2ラウンド行えば少なくてもどちらかの能力は使えるので、こういう方法で不満を解消する方がいいのかもしれない。