彩彩工房 @sai2koubou
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- 【土-T04】『Virus Money(ウィルス・マネー)』創作裏話
- 2019/5/11 22:00
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今回は、仮想通貨をモチーフとしたゲーム、『Virus Money(ウィルス・マネー)』を創り上げた時の話をしたいと思います。
読んでいただければ当ゲームのコンセプトをご理解いただけるかと思いますが、ちょっとした短編小説くらいの量があります。
お時間がある時に、ごゆっくりどうぞw
1. きっかけ
2018年、仮想通貨(「暗号通貨」が世界では一般的のようです)取引所から、大量の流失事件が起きました。
結果的に、取引所のセキュリティーが甘かったために悪意ある人たちにハッキングをしかけられた、という結論でしたが、ここでにわかに仮想通貨の仕組みが注目されるようになります。
というのも、ホワイトハッカーと呼ばれる人たちにより盗まれた仮想通貨の追跡が行われ、そのことがメディアで報道されたのです。
そもそも仮想通貨というものにそれほど興味を持っていなかった作者ですが、この追跡劇には魅せられ、と同時に、仮想通貨の仕組みというものに俄然興味を惹かれることになりました。
その時、期せずして、とあるツイートを見かけることになります。
それは、ゲムマで知り合ったH氏のツイートでした。
恐らく作者と同じテレビ番組を見ていたのでしょう、それにはこう書かれていました。
「これ、ゲームにならないかな」。
その時一瞬にして、思ってしまったのです。
イケる、と。
2. ゲームならではのテーマで
H氏のツイートでは、ハッカーとホワイトハッカーの追跡・攻防劇を念頭に置いているようでした。
たしかにそちらも面白そうです。
ですが、作者がより惹かれたのは、ハッキングをしかけた犯人と資産を盗まれた人たちの心理、そして、仮想通貨の仕組みの方でした。
もちろん、デジタルデータであっても盗難は犯罪行為であり、それなりのリスクを伴う行為は、犯人にとって多大な利があってのことでしょう。
しかしハッカーの中には、自分の技術を見せつけたいという自己顕示型や、秘密の暴露に一番の愉悦を感じるタイプもいるとの事。
それらは悪や欲望への憧憬とも言え、作者も含め、誰しも持っているものなのかもしれません。
また、被害者たちの、仮想通貨への過剰な期待感と喪失感も強烈な印象を残しました。
それなら、罪や実害のないゲームの世界でならどうだろうか…?
誰も傷つくことなく、いわゆる「悪」を体験できるのではないだろうか、と。
テーマは完全に決まりました。
3. アイディアを形に
ここからゲームとしての形を模索し始めます。
まず、仮想通貨の仕組みを知らなければなりません。
話題になっていた時期だったので、それほど苦も無く、頭に入れることはできました。
簡単に説明すると(あくまで作者自身の理解の範囲内ですが)、
・仮想通貨自体はほとんど意味のないデータに過ぎず、仮想通貨の動きを相互監視・相互保証することによって価値が生じている
・仮想通貨の動きを確認する作業をマイニングといい、処理量によって報酬が出る
・本来は個人間の取引が目的で開発されたものだが、なぜか取引所なるものが出現している
というものです。
なるほど、一つめと二つめはデジタル&グローバル情報ネットワーク前提の仕組みで、アナログゲームとして再現するのは作者には難しそうです。
となると三つめですが…作者はこれにいい感じに「闇」を感じました。
調べたところ、仮想通貨の技術には、P2Pという個人間でデータを共有する仕組みを基礎として使用されているそうです。
しかし、著作物の不正利用の温床とされ、はたまた、データ流失の原因ともなり、影を潜めていたとの事。
その上、個人間でデータをやり取りする仕組みであるのに、大量に集めた者が自身に都合のいいように取り仕切るようになるのは、「ギャンブルでは胴元が一番儲かる」の体現そのまま。
まさに資本主義の根幹を見せつけられているかのようです。
…思わず、悪い顔になってしまいましたw
得た知識と発想を元に、
・通常プレイヤーと悪徳プレイヤーの二つの役職を用意し、プレイヤー間での駆け引きがメイン
・通常のプレイヤーは取引所で投資を行い、資産を増やすことが目的
・悪徳プレイヤーは、その取引の中に潜り込み、他のプレイヤーの資産を奪うことが目的
という形にすることを決めました。
4. より具体的に
一つ目の、役職を二つ用意することは容易です。
ゲームの主題からして、悪徳プレイヤーが誰か知られていないほうがいいのは明確なので、お互いにわからないように何らかの形でプレイヤーに決めてもらえばいいのですから。
「正体隠匿」の要素がピッタリです。
問題は二つ目と三つ目。
元手なしに資産を増やすことはできないのであらかじめ初期資産を配布しておくことが必要になります。
「拡大生産」の要素では必須です。
これはコンポーネントで再現すればいいでしょう。
次に、取引所で投資を行う形について考えました。
仮想通貨の所持者の多くが利殖目的、という情報も目にしていたので、資産を増やすことが目的になることはすんなり受け入れてもらえると考えていました。
しかし投資には損をするかもしれないリスクがあり、プレイヤーにうまく行動してもらえるかわかりません。
なので、思い切って「損はしない投資」をしてもらうことにしました!
その代わり「資産の増やし方」に差異をつけて、バリエーションを増やすことにします。
ただ、それだけでは単調なものになってしまうので、「資産の増やし方」自体をプレイヤー間で競ってもらうことを思いつきます。
そう、「競り」です。
競りの導入によって、「損はしない投資」だけれども、必ずしも都合のいい「資産の増やし方」ができるわけではない緊張感を維持できます。
そしてそれは、三つ目の悪徳プレイヤーによる資産の奪取にも都合が良かったのでした。
5. ウィルスプレイヤーの発明
悪徳プレイヤーの役職は他のプレイヤーから資産を奪う形で勝利を目指すことは決めていたので、その具体的な形を探ります。
「正体隠匿」の要素から、通常のプレイヤーと一目で区別がつくわけにはいきません。
それでいて、通常のプレイヤーから不満が出ないよう、強引ではない何らかの形で資産を奪う、合理的な仕組みが必要でした。
そこで思い出したのが、仮想通貨流失事件と同時期に話題になっていた、ウィルスメールによる情報流失事件でした。
ウィルスが添付されたメールが送りつけられ、それを開いたことによるPCの乗っ取り事件だったわけですが、この「ウィルス」が使える!と閃きました。
悪徳プレイヤーはウィルスのついた資産を扱い、他のプレイヤーに送り付けることで得点するのです。
つまり、通常のプレイヤーは気付かないでウィルスの付いた資産を持ってしまうと、後でごっそり奪われる、というわけです。
そのために、資産のコンポーネントの色をプレイヤーごとに変える必要がありましたが…それは、まぁ、些細な問題です。
そのままでは悪徳プレイヤーが黙っていればいいだけの有利な立場になってしまうので、悪徳プレイヤーは自分の集めた資産では得点できないようにし、さらに、得点を伸ばすためには違うリスクを取ってもらう仕組みも追加しました。
特殊な「競り」の導入です。
世に出回る「競り」のシステムを使ったアナログゲームでは、現実の競りに沿ったものが大半かと思われます。
参加者が競って値をつり上げ、落札者のみが支払いをする、というものです。
しかし、それでは足りないと感じたため、リアルタイムに支払いをしつつ、落札者が他のプレイヤーの参加費を総取りする形に大きくアレンジ。
悪徳プレイヤーには直接他のプレイヤーにウィルス付き資産を送り付ける機会を設けつつ、やり過ぎると疑われるリスクのある、面白い競りになりました。
ついに、ウィルスプレイヤーの誕生です!
同時に、ウィルス付きの仮想通貨資産をウィルスマネーと造語し、作品名ともなりました!
さて、ここまで来て、あれ?と思った方もいるかもしれません。
そう、仮想通貨の仕組みからして、ウィルスプログラムなんて入る余地などないのです!!
ウィルスマネーは現実には存在しないし、存在出来るわけがないのです!!!!
…いいのです、この作品はフィクションなので。
6. そして生産へ…
ゲームの内容ははっきり決まったので、総合的に考えて、メインのコンポーネントはカードとすることに。
役職を決めるのにもカードは都合がいいですし、競り合う「資産の増やし方」も、その内容を記せてパッと見わかりやすく、扱いやすいカードが最適と判断。
それぞれキャストカード、トレードカードとなりました。
資産コンポーネントはデジタル感をイメージしてもらえるような透明感のあるキューブを探しましたが、諸々の理由で、ガラス製の現在のものに落ち着きました。
その後は、カードのデザインをしたり、印刷や部材の発注をしたり、切ったり貼ったり、他のサークルさんも日常的にやられていることなので割愛しますw
あ、カードは印刷を頼んだものをラミネートして自前で切っていたり、地味に手間をかけてコストを下げていたりします。
そのため、すべて印刷所に依頼したものとは一線を画していますが、ご理解いただけると幸いです。
最後に
ここまで長々とお読みいただき、ありがとうございました。
前回のゲームマーケット2018秋の時には時間がなくご紹介出来ていませんでしたが、当ゲームのコンセプトをご説明するにあたり、この創作過程はかなり重要なポジションにあると考えています。
それだけでなく、読み物としてもそれなりに読んでいただけるように工夫してみたつもりですが、いかがだったでしょうか?
これを機に、『Virus Money(ウィルス・マネー)』に興味をもっていただけたらと思います。
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