按理具庵

「あんりぐあん」 と読みます。駆け出しの発明家が勢いで一人起業してしまった会社です。
陰陽五行プレイングカードFESCA(フェスカ)をトランプの再発明として創作し、Amazonやイエローサブマリン等にて販売中です。
しなり折りカード立てが第一発明品で、これを応用した紙製ミープルやチェス・将棋駒に展開中です。

ミクセル・ポーカー/FESCA60ポーカーをもっと真剣に考えた
2019/2/6 17:34
ブログ

「計算できないなら、試してみればいいじゃない。」とマリー嬢が申されたので、PCシミュレーションでMix wellの複合役の確率を求めてみました。
って、唐突に何を言っているなか分からないという人は、
まずはこちらをお読みください。→FESCA60ポーカーを考える

Mix wellはそのままカタカナ表記するとミックスウェルですが、Maxwellがマクスウェルでマクセルとも短縮発音表記されるのに倣って、ミクセルと表記することにします。また役名を固有名詞化し2単語を連結したMixwellと表記することもあります。
そしてトランプのポーカーと比べたとき、この役の存在が大きな特徴となるのでFESCA60ポーカーの別名としてミクセルポーカーと呼ぶことにします。

前回のブログでは厳密に確率計算をしてトランプのポーカーとFESCA60ポーカーの役を比べる検討をしたのですが、ミクセルとの複合役を無視して計算したため正しい役の発生確率にはなっていなかったということです。というかミクセル役の定義自体が曖昧であったので、正確な確率を求めることも諦めていました。
トランプのポーカー役の確率計算式はググったら色々と見つかって、それを基に12ランク5スートのFESCA60に当てはめて計算しました。しかしミクセル役はまったくの独自役であり、単体なら計算式も思いつく事ができたのですが、数々の複雑なミクセル複合役の計算式を正しく求められる自信がなくて、また数学が得意な知人も居なくて、ひとり悩んでいたのです。
と、その解決方法として冒頭の言葉が出てきたということなのです。ああ、もちろんあの有名な王妃の言葉をもじったものですよ。
確率計算は中高生レベルの能力しかありませんが、幸いにしてプログラミングは一応プロでしたから自信があります。なんやかんやで半日ぐらいかかりましたが結果はこちらになります。Core i5のMac Miniで10億回が5分です。一晩かけて一億回ぐらいかと覚悟していたのですが、やはり技術の進歩は凄いです。

前回求めた確率計算の結果と比べてみると、最も発生確率の低い役でも誤差は1%未満で有効桁2桁は保証できてます。結果は見事に一致しているので、確率計算もプログラムも正しい事が確認できました。

さてここからが本題です。
ミクセルはスート系の役なので、同じスート系のフラッシュとは複合しません。もちろんストレートとフラッシュの複合役のストレート・フラッシュとも複合しません。その他の同ランク揃え系とランク順並べ系の役との組み合わせを考えると、
ファイブカード・ミクセル
フォーカード・ミクセル
フルハウス・ミクセル
ストレート・ミクセル
スリーカード・ミクセル
ツーペア・ミクセル
ワンペア・ミクセル
があります。

この中でファイブカード・ミクセルは、そもそもファイブカードが5つの同ランクを揃える役であり、必然的に5つのスートが集まることになるので、これは複合役とはみなしません。残り6つの役と単独ミクセル役と合わせて7つを追加すると、これは複雑極まりなく、とても覚えきれなくなります。そこで、完全複合という概念を基に、この中から幾つかを選ぶことを考えます。ここでの「完全」とは手札の5枚の全てのカードが役に関わっているという意味になります。5枚役はフルハウスとストレートの2つなので、完全複合役は、
フルハウス・ミクセル
ストレート・ミクセル

の2つだけとなります。

その他の複合役は、単独のミクセル役とするか、より強い役の特殊形とみなして、独立した複合役としない事にします。例えば、スリーカード・ミクセルは、発生確率ではスリーカードの方が小さくて役としては強いので、これをスリーカード役に含まれる特殊形とします。その一方でツーペア・ミクセルではミクセルの方が強いので、これはミクセル役の特殊形とします。
2つの役の組み合わせ複合役において、強い方の役を主役(main hand)、そうでない方は副役または補役(sub hand)と呼ぶことにします。副役(補役)は前述したとおり正式な役ではないのですが、同じ主役どうしで比べたら副役(補役)のある方をより強い役と判定します。すなわち同じ役どうしで、どちらが強いかを比べる場合、トランプのポーカーでは単に役のランクの高い方を勝ちとしますが、ミクセルポーカーでは副役(補役)がある場合は、その役がある方を勝ちとします。副役(補役)がない場合は同じくランク比較となりますが、同ランクの場合であってもFESCAはスートの強弱関係があるのでスート比較を優先して決めることになります。

正式採用とする複合役も決まったことなので、この定義に従って確率を求めてみます。合わせて自信のなかった複合役の確率計算式も真剣に考えてみました。10億回の試行確率とも一致しているので、これで正しいはずです。



前回の複合役を考慮していなかったミクセル役の確率からは0.3ポイントほど減少(4.56%→4.26%)しています。これは複合補正式に示すように上位複合役の合計分が減ったためです。ツーペアやワンペアの確率もミクセル役に昇格した分だけそれぞれ減っています。複合役で重複している計算が無くなったので、役無しの確率も求めることができます。これでミクセルポーカー役の確率が求められ、役の強さの順が確定しました。


では元のトランプのポーカー役と比べてみましょう。
前回のブログで比較検討したのと大枠で同じです。全般的にランク揃え系の役の確率が大きくなり、スート揃え系の役の確率が小さくなっていますが、これはスート数4→5の影響です。これによりフラッシュとフルハウスの順位が逆転していることが重要な変化点です。ミクセル役はスリーカードとツーペアの間にあって、いい感じに確率もバラけて強さ順が明確になっています。また新たに正式役としたストレート・ミクセルとフルハウス・ミクセルですが、ストレート・フラッシュの次にきれいに並んで追加され複合役の強さをよく表しています。ただし通常のフルハウスとストレートの順位関係とは逆転しているところは注意しなければなりません。

次に個別の役の比較ではなく全般的なポーカーゲームとしての比較をしてみます。役の数が合わないので、確率の常用対数の符号反転値を元に(最強、強、中、弱、最弱)の5段階にレンジ分けしてみました。-log(p)はざっくり言ってしまえば発生頻度の桁数を示しています。例えば整数部が2なら2~3の範囲ですから100~1000回に1回の発生確率ということになります。当然ながらドローポーカーのように数枚を交換したり、セブンカード系ポーカーのように7枚から5枚を選ぶ場合は、役の発生頻度はさらに高まります。
こうしてレンジ別の比較をしてみると、勝負の大半を決めるであろう「無、最弱、弱」の範囲にあって、「弱」の比率が約2倍ほどに高まっって、「無」も0.86と下がっています。これは「最弱」のワンペアどうしのランク比較や「無」の役無しハイカード比較などの同順役の判定が少なくなることを意味しています。判定にメリハリが効いて楽しくなると思います。さらに「強」の役の確率も7倍と大きく高まっています。一日中プレイを続けていて1回あるかないかの大役が、1時間に1回程度の発生頻度になったら、これも大いに楽しくなることでしょう。

最後にFESCA60ポーカーの一種として、ミクセル・ポーカーの役一覧表を示しておきます。




2019.02.22 表中のFlashの略号がFLとFSで混在していたのをFLに統一しました。