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2017年04月16日(日) 22:17

【初参加2017春 C04】DILEMMA HOLDEM【ゲームデザイン】

ジレンマホールデムの紹介記事のview数の伸びがだいぶ穏やかになってきたのでちょいとテコ入れしにきました。(ゲムマ出展者たちのブログ管理画面では実は記事の表示数が見られてしまうのですw)
今回は遊ぶ側ではなくゲームを作る側向けの記事なので需要ないかもしれません。あしからず。
あとここに書くことはあくまでも私個人の意見なので絶対の正解とは思わないでください。参考程度にどうぞ。
それと私の文章の特徴ですが、今回も長いです。私が書きたいことを書いただけなので読みたい箇所を斜め読みすることをオススメします。
基本的に私の作品であるジレンマホールデムについて書いたのでプレイしてから読んだ方が良いかもしれません。ということで当日C04ブースに買いに来てください(ダイマ)

  • 既存ルールを軸に要素を足し引きするというデザイン
  • メカニクスにテーマを乗せる際に気をつけたいこと
  • プレイヤーをイラつかせない方法
  • バランス調整のコツ

の内容で記事を書いていきます。


既存ルールを軸に要素を足し引きするというデザイン

まずゲームを作る際に一番大事なことをお伝えします。
ズバリ「無名作者にとって過剰なオリジナリティは毒にしかならない」ということです。
私は元々RPGツクールシリーズでゲーム制作をしていました。(実はふりーむ様に作品公開もしていますw)
最近のツクールは優秀でプログラミングをすることで既存のゲームとほぼ同等のゲームシステムを構築できてしまいます。
そして、それはもちろんオリジナルのゲームシステムの構築も可能にします。
しかし、これが大きな罠。ゲームを作る際は誰しも「今までにないゲームシステム」を作りたくなると思います。
ただ、現実は残酷なものでどこの馬の骨とも知れない作者の面白いかどうかもわからないゲームシステムに付き合ってくれるプレイヤーはほぼいません。
たとえそのシステムが本当に面白いとしてもその面白さに気づいてくれるほど気の長い方はいないと考えましょう。
アナログゲームの場合は需要に対する供給がまだ足りていない状況なのでこの限りではないかもしれませんが一応知っておいて損は無いと思います。
なので、これからデビューを考えている方は「既存のゲームをアレンジしたゲーム」を作ることを強くオススメします。
以上をふまえてジレンマホールデムをデザインする際どんな考えのもと既存ルールを改変したかをご紹介します。

まず私は「テキサスホールデム」という海外カジノで熱狂的に遊ばれているポーカーが大好きです。
なので、布教のためいつも遊ぶボードゲーム仲間達にテキサスホールデムのルールを教えて一緒に遊びました。
しかし、いまいちウケが悪くその後も継続してプレイしてくれる人はほとんどいませんでした。
ウケが悪かった理由としては

  • 手札交換が無いせいで役が成立しにくく基本的に「降りる」ゲームなのでつまらない
  • 勝負に勝っても他のプレイヤーが降りてしまうと儲けが小さくてつまらない
  • そもそもいつ終わるゲームなのかよくわからない
  • Aがやたら強い

などが挙げられていました。
私はこれが悔しくて自分でルールを改変して面白くしてやろうと思いました。
そこでまず思いついたのが『勝ったらボーナスをもらえる』というルールを追加して勝った際の儲けを大きくすることでした。
しかし、ここで問題が発生しました。

  • そもそもボーナスはどこから湧いてくるのか
  • 勝てばボーナスなら全員オールインで駆け引きもクソもなくなる

という問題です。
上の問題は比較的簡単に解決策を思いつくことができました。それが『勝ったら全員が奪い合う共通チップからボーナス』というルールです。
しかし、下の駆け引きがなくなる問題についてはしばらく解決せずに悶々としていました。
色々と考えたり、ゲームデザインに関する本を読んだ結果「引き算」のデザインにたどり着きました。
つまり、『勝てばボーナス、負ければペナルティ』というルールです。まぁ、ルール的には追加なんですがペナルティでチップが減るという部分が「引き算」の拡大解釈と思ってください……。
ただ、このままだとやはり「降りない」ことが最強の選択肢なのは変わりません。
そこで本家テキサスホールデムの「迷ったときはフォールドが正解」という考え方をもとに『勝てばボーナス、負ければペナルティ。しかし、早くに負けを認めればペナルティ免除』というルールに変化しました。
この段階で『勝てば共通チップからボーナス、負ければ共通チップへペナルティ支払い。しかし、早くに負けを認めればペナルティ免除』というルールが作られ、以下の問題が解消されました。

  • 勝負に勝っても他のプレイヤーが降りてしまうと儲けが小さくてつまらない→勝つとボーナスがもらえる
  • そもそもいつ終わるゲームなのかよくわからない→共通チップが無くなったら終了
  • Aがやたら強い→Aは勝ちやすいが負けた場合のペナルティが大きい

しかし、「降りる」ことが基本でつまらないという問題は依然として残り続けました。
そこで、もう一度「引き算」を行い使用できるカードを1~13ではなく1~10に絞りました。
これによって役が成立しやすくなり、より活性化したゲーム展開になりました。

また、既存ルールに足し引きするちょっとしたコツがあってそれは「より少ない変更で多くの課題を解決する」という方針です。
今回で言うと『勝てば共通チップからボーナス、負ければ共通チップへペナルティ支払い。しかし、早くに負けを認めればペナルティ免除』というルールを追加したことで問題を3つ解決できました。
あと、「引き算」には「ルール追加によって複雑化したゲームをコンパクトに構築しなおす」という効果もあるので是非色々引き算できないか考えてみてください。

本来であればルール自体を削ることで「引き算」を実現したかったのですが、テキサスホールデムのルールが完璧すぎたので獲得チップや使用カードを引き算する結果となりました。

~ま と め~

  • 既存ルールに何か足すときはどんな問題を解決したいのか明確に
  • 追加は最小限、問題解決は最大効果を得ることを念頭に置く
  • 足すだけだと肥大化するので適度に引き算を

メカニクスにテーマを乗せる際に気をつけたいこと

ゲームを作る際、メカニクスばかりにこだわって乗せるテーマをおろそかにする作者様をたまに見かけますが個人的には勿体ないなぁと思っています。
アブストラクトゲームの場合は特定のテーマを持たないということ自体が一種のテーマなのでそれはそれでありだと思いますが、それ以外でテーマとメカニクスが噛み合っていないというのは何とも残念な気持ちになります。
例えばジレンマホールデムのテーマが「投資」ではなく「小動物」だと何ともチグハグな印象になると思います。なぜ、小動物の場札や手札を見ながらチップを賭け合っているのかと……。
では乗せるテーマを決める際は何を気をつければ良いのか? 私はジレンマホールデムのテーマを決める際に、

  • ゲームを通してプレイヤーにどんな体験をさせたいのか
  • メカニクスに似た要素を持っているテーマを乗せる

という2点に気をつけていました。
私はジレンマホールデムを通して『勝てばチップがジャラジャラと増えていく物理的快感』を体験させたいと思ってゲームをデザインしました。
(余談ですが、その関係で本作は単価4円の直径25mmチップではなく単価6円の30mmチップを使っています。製品原価が2円×100枚分高くつきました……)
そして、テキサスホールデムの「勝つとチップが増える。降りるのが早ければ早いほど傷は浅く済む」というゲームシステムは投資に似ているとよく言われているのはホールデムプレイヤーの間では割と有名な話。
なので、ジレンマホールデムは『テキサスホールデムに「投資」というテーマを乗せたゲーム』にしようと考えました。
なのでカードの絵柄は投資品目となる穀物・金融・生化学・燃料にしました。実際場札として並んだ投資品目と手札を判断材料として伸るか反るかを判断する様は投資によく似ているのではないかと思います。そして、チップがジャラジャラ増える快感も「投資」というテーマに抜群にマッチしていました。
まぁ、何が言いたいかというと思考停止で流行りものをテーマとして乗せるのはいったん考え直してほしいというのが私の説です。

~ま と め~

  • テーマを選ぶ際に「どんな体験をさせたいのか」はとても重要
  • 乗せるテーマを考える際はメカニクスにマッチするものを選ぶ

プレイヤーをイラつかせない方法

これはジレンマホールデム以外のゲームをデザインをする際も気をつけようと思っていることですが、「理不尽な負け方をさせない」というのは非常に大切にしています。

  • デジタルのアクションゲームで「牢屋に捕まって装備が無い状態で脱出する」というシチュエーション
  • とあるお船のゲームで特定海域に出撃した船は他の海域に出撃できなくなる(しかも、実際に出撃できなくなるかは出撃した後でないとわからない)

などを見かけますが、個人的にはアレら本当に大嫌いです。あれを最初に考えた人間こそ牢屋に入るべきだと考えています。
なぜプレイヤーがゲーム作者の都合でプレイの方法を強制的に縛られないといけないのかと。ストレス解消のためにゲームを遊ぶのに強制縛りプレイでストレスを溜めさせてはいけません。
縛りプレイが楽しいと思う層は勝手に自分を縛ります。一般層を巻き添えにしないでください。
「本来使えるはずなのに後付けルールによって使えなくなる」こと「予測不能の状況から一方的に負けを言い渡される」ことはプレイヤーにとても理不尽な印象を与えます。
という愚痴はこの辺にして、ジレンマホールデムで「理不尽な負け方」はどんなことが考えられるかと言うと「相手は一方的に知っているのに自分は全く予測できない要因によってチップを失うこと」だと思っています。
具体的に言うと、ジレンマホールデムではペナルティを計算する際、場札として出ているマイナス札のみをカウントします。しかし、もしプレイヤーの手札のマイナスもカウントするとしたらどうでしょう? 負けると大きなマイナスが生まれるという情報を一人のプレイヤーのみが一方的に知ることとなります。負けた側は手札が開かれた瞬間カードを床に叩きつけたくなること請け合いです。
こう書くと「相手に見えていない手札によって勝敗がつくのもストレスになるのでは?」という意見が出てくるかもしれませんが、手札は見えていなくともチップの賭け方や場札からかなりの精度で予測が可能です。(この予測可能という点を突いてあえてセオリー外のプレイをすることによってブラフが成立します)
ゲーム内の情報の一部を隠す不完全情報ゲームにおいてはゲームが面白くなる場合を除いて情報は全てプレイヤーに開示して判断材料にしてもらうくらいの潔さが必要だと思っています。

~ま と め~

  • プレイヤーの選択を縛るようなデザインをしてはいけない
  • 不完全情報ゲームではプレイヤーが判断を下すための「ヒント」をできるだけたくさん提供する

バランス調整のコツ

ぶっちゃけバランス調整に関しては場数です。私も数多の自作デジタルゲームをお蔵入りさせて身につけました。
と言っては元も子もないので黒蜘蛛流のバランス調整方法をご紹介したいと思います。キーワードは

  • 法則性
  • 期待値
  • 大胆さ

です。
まずは法則性から。下の画像を見て下さい。

これはジレンマホールデムのカード一覧です。カードを全て並べるとわかるようにこれはある法則性に基づいてそれぞれの要素が配置されています。

  • 同じ数字同士内でペナルティ札(四隅がマイナスの札)、赤札、青札、緑札を2枚以上持たせてはいけない。(例:穀物の5と燃料の5が赤札になるとかはNG)
  • 同じマーク内ではペナルティ札同士は間にカードを4枚挟む
  • 赤札、青札、緑札はできる限り数字が偏らないように配置する
  • 赤札、青札、緑札はできる限り隣り合わないように配置する
  • 同じ数字同士内でペナルティ札、赤札、緑札、緑札はできる限り2~3枚にする

という法則のもとカードを配置してあります。ランダム要素を持ったゲームと言えども出てくる要素から意図的に偏りを取り除くとある程度の範囲内でゲームが展開されるようになり全体のコントロールがしやすくなりオススメです。

次に期待値について。
これも上の画像を見るとわかるのですが、ボーナス(四隅のプラス)とペナルティ(四隅のマイナス)は同じマーク内でA~10を合計すると全て+180になるように設定されています。
これが意味するところは「場札は1枚出るごとに$18を共通チップから奪っていくことが期待される」ということです。
場札は3~5枚出るので平均すると1ゲーム当たり$70~$80程度共通チップが減ることになります。
共通チップは$1,500が初期値なので概ね20回程度ゲームを行うと勝敗が決することになります。
ただし、効果カードや引き分け処理によりペナルティの支払いが発生しない場合があるので真の平均ゲーム回数は20回よりも少なくなるはずです。
期待値を求めることでゲーム展開やゲーム時間を予想することが容易になるので一つの観点として覚えておくと良いかもしれません。

最後に大胆さについて。
当たり前のことですがゲームバランスにおいていきなりドンピシャを狙いにいくことは諦めた方が良いです。
上でさんざん法則性期待値といったことを語っておきながら元も子もないようなことを言いますが、結局のところゲームは遊んでみないと予想通りの面白さになるかわかりません。
法則性や期待値はある程度のところまで質を確保してくれますが、やっぱり最後は遊んでみるしかないのです。
なので、新しい要素を入れる際、最初は「ちょっとやりすぎかな?」くらいに弄ってその状態で遊んで感じた感想をもとに調整した方が試行回数が少なく済みます。
少しずつマイルドに要素を入れようとするとほぼ確実に「ない方が面白いorあっても変わらない」という感想になる上に調整回数ばかりが増えるので無駄です。
ジレンマホールデムでは最初はボーナス&ペナルティが$50刻みでしたがこれは強烈すぎました。ゲーム開始時の所持チップが$1,000しかないのにボーナスが+$700、ペナルティが-$500とかいう展開がザラにありました。2回程度ペナルティを払うとすぐにぶっ飛びます。
現在赤札になっている効果カードも開発初期の頃は青札と同じくいつでも発動していたのですが、その効果の強さゆえに暴力的で予測できない展開になりすぎると判断したため4~5枚目の場札で出た場合のみ有効という措置を取りました。
ジレンマホールデムにおけるボーナス・ペナルティや赤、青、緑のイベントカードのようなランダム要素は実際に遊んで、ゲームの開始から終了まで全ての展開を見通してみないと許容できるレベルか判断できません。
なので「最初は大胆に要素をぶち込んで、やりすぎだと思ったらコントロール」これがバランス調整の良い方法かと思います。

こんな感じで調整を重ねた結果、ジレンマホールデムは「基本的には大きな上振れ下振れはないけれど希に暴力的な振れ幅の展開がある」という面白いバランスに落ち着くことになりました。実際の投資みたい。

~ま と め~

  • 法則性と期待値でゲームの展開をある程度予想・コントロールすることは可能
  • ただし、本当に面白くなるかは遊んでみないと分からない
  • ゲームに新しい要素を追加する場合、最初は大胆に投入しその感想をもとに削った方が面白いゲームを短時間で作れる

今回はゲーム制作者向けに私の持論を展開する形の記事でした。色々な制作者の哲学やゲーム作りのコツを知りたいです。

あ、作品紹介記事詳細ルール記事の方もよろしくお願いします。

次回あるとしたらジレンマホールデムの戦略に関する内容を書けたらいいな……。



ブース名
ブース番号
2019春 土-Q19 

ブース詳細
デジタルゲーム制作勢がアナログゲーム制作に流れてきました。 技術7割、運3割くらいのゲームデザインを心がけたいと思っております。
Twitter
@B_SPI
その他
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