Dilettante

サークル・Dilettanteはゲーム作りが目的のサークルです。
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THEE SILVER BULLET-であいへん-(土のみ販売です)
2017/11/8 19:25
ブログ

これは今回、当サークル二作目にして私としても初めての原作ありのゲームになった経緯をかいつまんだ話です。


・前置き・
前回のキンメダイ!はノンテーマ的に思われがちでした。
(深宇宙空間での遠未来、宇宙外来種との戦闘がテーマだったのですが。)
また、ゲムマ現場でもどういったゲームですか?
と同じ程度に、どういったテーマですか?という質問もいただきました。
なので、逆張りというか、今度は物語性を押し出して、かつ、「名刺サイズのゲームは基本的に買わないんだよね~」というお客様(この方はこの振りで買ってくれたのでかなり面白かったのですが)の声も何件もあったので、少し高くなっても、反響に答えてみようとちょっといい素材にしてその素材をちゃんと物語にも反映しようと思いました。

・考え・

ところでボードゲームに限らずですが、歴史に回帰しない作品はダメ。
僕はそう思います。
ブローデルの地中海を引き合いに出すまでもなく、世界とはそれそのものが幻想的であり、中世風ファンタジーやとってつけたフレイバーは解釈を拒むだけだなと結論付けました。

我々が表現したい物語とは何か。
一旦歴史に回帰すると決めた私は古今の史書に当たりましたが、採られていない題材を探すというのは難しいです。それこそ、とってつけたものになっては意味がありません。
しかしその中で一つ気になるものがありました。
「恋姫無双」と言いますが、この作品は中国は三国時代の最新の歴史解釈を採取しており、
その中では三国志演義の英雄である関羽・張飛・劉備の三人を始めとして武将たちは全て女性として描かれていました。
驚きと共に受け入れられたこの一説も現在では一般的になっており、
例えば最近では市井で人気だと私などにも聞こえ及ぶFateなんていう作品でも真名というこの恋姫無双での研究成果がやはり活かされています。
この歴史人物の存在の根本を真っ向から否定するような斬新なアプローチによる歴史の再解釈は私に大いに刺激を与えました。
歴史には、我々まで続くストーリーは同じでも全く違う真実があるのです。

・原作との出会い・

さて ここに、一冊の本があります。
The story of My SilverBullet
いわゆるペーパーバックの、褪せた表紙に、そう書いてあるようです。

"これ"を手に入れたのはもう八年は前。
海外留学の際の学友との旅行で訪れたニューオーリンズ、とおりに溢れるジャズの選手達(英語では「プレイヤー」、ですが奏者というより現地ではこういう意味合いに近いのです)は各々を常に競い合っており、原宿の服屋・雑貨屋が全て酒場に変わったような、熱気の雑踏は私を毎夜違う場所へ誘いました。
その夜もバーボンストリートを一本入った、小汚いバー(そこいらにきれいなバー、等ありませんが)で、曲名も知らないジャズを肴にテキーラから始めた時、丸机に置かれたままのその本を何気に手にとってしまいました。
「なんだ学士さんよ、ここでもお勉強かい」
マスターはグラスを磨きながらこちらも見ずに言いました。
「いやあ俺は勉強はもう諦めててね。それともカクテルで人生を変えてあげましょうってか」
「おまえの不勉強を俺のせいにするなよ」
それから暫くは私もマスターも接し方は違えどお互いの相手はグラスのみでしたが、忘れ物を取りに戻るような様子もなく私はまたその本を何気なく開いていました。
荒唐無稽な本です。
ちょうどマスターが何かの拍子で私に声をかけました。
「それ、もって帰っていいよ」
この街は酒、音楽、全てが一期一会で出来ており、返すあても取り戻すあてもないことは共通認識のようでした。


その思い出と共に私の頭の中でなにかがスパークすると、慌てて部屋を掘り返しました。
荒唐無稽な本です。
序文には、事実に「少々」脚色をしただけ、だというその本によると、ブッチ・キャシディがサンダンス・キッドと共に歴史上有名な方のワイルドバンチを結成する前にその前身となる組織があり、我々の知っているブッチキャシディを始め、それ以前にはひところ組んでいたこともあったという(それも初耳でしたが)アラン・ピンカートンも、実際は皆女性だったということ、そして彼女らが著者であるゾーイの両親を殺した仇のような存在だったということでした。
始め一読した際には「スラップスティックとしては面白いけど、いかにもペーパーバックだな。今じゃラノベっていうのかな」という感想しかなかったのですが、ここに来てこの作品の背景がもっと知りたくなったのです。
これまでの西部劇の根本が覆る可能性がここにあったのです。
裏表紙に書かれた出版社は既に潰れているのか、色々な形で検索を試みましたがサイトなどもなく、著者名や書名で必死に探した結果ようやく連絡が取れたのが著者の孫の方(Eric Prudhomme氏)でした。
ここからは、公開の許可を取ったのでインターネット上でのやりとりをそのまま掲載します。

・チャット・

>今回は突然の連絡にも関わらず…突然でしたよね?
Eric:あぁ、とても驚いたよ!作品の読者からの連絡というだけでも初めてなのにまさか日本からとはね。いつアニメになったんだい?タイトルは「しるばれ!(訳注:ここは原文ママ)」とかかな lol

>日本にはお詳しいようですが否定しなければいけないのが残念です(笑)奥付には1921発行とありますが私が手に入れたのは2010年くらいです。
Eric:そうだよ、僕は日本のカルチャーが好きでね、特にらきすたやAちゃんねるの(ここから脱線し日本では少し前の世代に当たる萌えアニメについて熱の入った言及は省略)、で、なんだっけ?そうだ、The story of My Silver Bulletは私の名づけ親に当たる母方の祖母の作品だね。祖母は特に文筆業というわけではなく、出版に至ったのは少なくともこれ一作だ。彼女はよく「私の伝記」と呼んでいた。当時はやはり西部劇のようなパルプ小説が流行っている時代だったのもあり、物珍しい設定はあるもののいくつかの点では非常にオーソドックスな筋書きで結構な人気があり、何度か増刷もかかっていると思う。

>伝記ということは祖母の名前はゾーイ?
Eric:そう、ゾーイばあちゃんだ。彼女は1972年に亡くなっている。私自身は一緒に暮らしていたことはないので記憶といってもそうないのだが、さすがにブッチ・キャシディと戦ったと言われてもピンと来るようなことはない。

>作中では一緒に戦うことになり、師でもあるヴァレッタについては?
Eric:すまない、本当に個人的に祖母と親しくしたことはあまりないんだ。交友関係もそこまで詳しくはない。だが、ああちょっと待って、そうだ、確か葬式の時に祖母の棺桶にリボルバーが入れられたのを覚えている、そこにVallettaという銘があったような気がする…違ったかな。

>ありがとうございます、私はこの作品をアナログ・ゲームにしたいのですがよろしいですか?アニメ化でなくてすみません:p
Eric:もちろん構わないよ!といっても著作権が私にあるわけではないのだが。かといって誰が持ってるかわからないものだし、ないようなものだし・・・・・・・勝手にしたらいいと思うよ。少なくとも、作品にとってはラッキーな事態だ。僕も楽しみにしている。

>本日はありがとうございました。
Eric:ところでこの君の送ってきたサイトのキンメダイと同じ人が絵を書くの!?本当に!?アメリカにも送れる!?


こうしてとんとん拍子に決まり、タイトルは小説のほとんどラストシーンに当たる部分でのヴァレッタの台詞から"Thee Silver Bullet"としました。

インスピレーションのほとんどはこのラストシーンに集約されています。
ワイルドバンチがアジトにしている渓谷で、とうとうブッチ・キャシディを追い詰めるヴァレッタ。
しかし、揉み合いになり谷底へ……追いつくゾーイは、気絶しているヴァレッタに今にも止めをささんというブッチに初めて名乗ります。

"Heyyy!!You bastard!! you SILVER WATCH!! I,I..."
Butch had stopped her arm, but still triggered. and said.
"huh, you?"
At that time zooey will be opened her mouse,Valletta slowly cried out
"th, thee , thee silver bullet..."
"So, I'm zooey, ZOOEY THE SILVER BULLET!!"
"sounds good."
Zooey tried to slip out, but Butch was much faster!
(略)


このeが二つ続くのは印刷の掠れのようにも見えるのですが、theeだとするととてもしっくり来ます。そのあたりの解説はまぁ追々として、とにかくこの場面から着想を得て、今回のゲームは「銀の弾丸を最後のボスに打ち込むまでの過酷な旅」が表現できればと思い、また特に原題にこだわることもないかなと(THEE MICHELLE GUN ELEPHANTだって日本にはあるし、カッコイイし)思いそうしました。

我々Dilettanteは、この冬、いや秋、
アメリカが生んだ最大の”妄想”、マッチョな西部劇の時代を真っ向から否定し再解釈を迫る奇書"The Story of The My Silver Bullet"を元に、カッコかわいい西部劇としてゲーム化し、お届けします。

ブログもゲームマーケットまでに更新できる十本のうち一本ということで
気合が入ってしまいました。実際には三回くらいに分けても良い内容だったのですが……。

それでは、
よろしくお願いいたします。